スズメ(佐藤良平さん提供)

写真拡大

 国内各地の里地や里山で野生生物の生息状況を定点観測した結果、スズメやセグロセキレイといった、身近にたくさんいると考えられてきた鳥の15%が、「絶滅危惧種」相当のペースで急速に減少しているとする報告書を、環境省と日本自然保護協会が1日、発表した。

 報告書は里地里山で生物多様性が失われ続けていると警鐘を鳴らしている。

 環境省が2003年度から、里地里山のほか、高山や森林・草原、砂浜など約1000か所で継続的に行っている生態系調査で、「モニタリングサイト1000」と呼ばれる。このうち里地里山の調査は約200か所を対象に、同協会が市民参加型で実施しており、今回は22年度までの記録を分析した。

 その結果、環境省の絶滅危惧種の基準となる「年間減少率3・5%以上」となったのは、鳥類ではオナガ(減少率14・1%)を筆頭に、セグロセキレイ(同8・6%)やスズメ(同3・6%)など16種で、集計対象とした身近な種106種の約15%に上った。

 チョウ類ではクロセセリ(同22・0%)が最も減少率が高かった。「減少率3・5%以上」となったのは国蝶(ちょう)として知られるオオムラサキ(同10・4%)やイチモンジセセリ(同6・9%)など計34種で、103種のうち約33%を占めた。

 同協会職員の藤田卓さんは「農地や草地など開けた環境を好む鳥類に顕著な減少がみられた。世界的な傾向とも一致している。里地里山の管理放棄が影響している可能性がある」と指摘する。

 報告書では、地球温暖化による気温上昇が大きな地域のほうが、鳥類やチョウ類、植物の種の減少幅が大きいと分析している。チョウ類では南方に分布の起源を持つグループは、個体数の増加傾向がみられた。

 また、ノウサギやヘイケボタルなども減少が確認された。一方、外来種のアライグマやハクビシン、食害が懸念されるニホンジカやイノシシは増加傾向がみられた。

 石井実・大阪府立大名誉教授(保全生物学)の話「全国的に里地里山の自然環境が大きく変わり、生物多様性が減少しつつある。他の生物にも連鎖的に影響を及ぼしかねない」