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あまりに悲しい気持ちになる裁判だ。あえて詳細に記事化することで、一石を投じたい。

【写真を見る】【裁判詳細】「悪魔だと信じていた…産んだら人間の赤ちゃんだった」出産後、手を合わせた母親は赤ちゃんの遺体を崖から投げ棄てた ”魔術師協会の牛尾ひでき”に追い込まれた女の行動とは(山形)

9月30日、山形地方裁判所別館の301号法廷。

中央に置かれた証言台の前にいた、38歳の女。

上下黒のスーツに白のスニーカー、メガネをかけ黒髪を1本結んだこの女が問われているのは死体遺棄の罪。

出産した赤ちゃんを崖から投げ棄てたとされている。

■38歳の母が問われた赤ちゃんの死体遺棄

起訴状などによると、女は今年3月1日の午後10時ごろから2日午後9時ごろまでの間に、産んだばかりの赤ちゃんの遺体を東京都内から千葉県銚子市の駐車場に運び、海岸付近の崖から投げ捨て遺棄した罪に問われている。

初公判で女は「間違っていません」と起訴内容を認めた。



実は、この事件をめぐってはもう一人、別の日程で裁判が行われている人物がいる。

33歳の男だ。この2人には、いびつな、そして通常ならば信じがたい、身の毛もよだつ関係があった。

■魔術師協会の「牛尾 ひでき」を名乗る男


女の知人の33歳の男。この男が問われているのは死体遺棄教唆と傷害の罪だ。

死体遺棄教唆は今回、女が問われている死体遺棄について教唆したというもの。

そしてもう一つは、この女に対する傷害の罪だ。



遺棄された赤ちゃんは女の子だったが、知人の男とは親子の関係にはなかった。

男は魔術師協会の「牛尾 ひでき」を名乗り、同じ住宅でこの女と生活していた。

■「牛尾」の元を訪ねた女

女は大学院卒業後、派遣として働いていたが、犯行当時は無職だった。独身で前科前歴はない。

弁護側によると女は19歳の時、心療内科へ通うようになった。32歳の時に自閉症スペクトラム、統合失調症などと診断され入院したが、入院生活が辛く1か月半で退院した。



その時女は絶望感から強く思ったことがある―過去に帰りたい―その方法をインターネットで探していた時、魔術師協会の「牛尾 ひでき」を名乗る今回の男と出会った。

■恋愛感情から始まった関係


女は男に恋をした。

そして男は女と結婚の約束もしていたという。

裁判の中で女は「はじめは『俺も好きだ』と言われた」と当時を振り返った。



こうした中で、女は男を魔術師と信じるようになった。

しかし、その同棲生活は過酷なものだった。

■「俺は神様だ」電気ショックに暴行

女は男との同棲中、通院も薬も禁止されていた。服を着ることも許されなかった。

電気ショックや暴行を受け、イヤホンをつけられて「俺は神様だ」と吹き込まれた音声を聞かされ続けた。



女の弁護士は当時について、「『逃げたら、霊視・透視でわかる』と言われていた」と話した。

女は男にその能力がある信じていて、逃げ出せなかったという。

■パパ活で1日4万円のノルマ


男から女は指示を受けていたという。

それは所謂パパ活で1日4万円のノルマだった。



指示に従わなかったり、売春をして4万以上稼げなかったりすると、「修行」といわれる暴行などを受けていた。

弁護士は「女は身も心もボロボロで何も考えられなくなっていた」とした。

■妊娠に気が付いた女…男は「お腹の中に悪魔がいる」

今年1月、女は自分が妊娠していることに気が付いた。男にそのことを話すといわれたこと。それは…

「お腹の中に悪魔がいる」



男は悪魔を殺すためとして、腹を殴ったり蹴ったりしたほか、ウイスキーを飲ませるなどしたという。

■「悪魔だと信じていた…産んだら人間の赤ちゃんだった」


今年3月1日午後7時8分頃、東京都内のホテルの客室に1人でいた際、女は腹痛に耐えられなくなり男に相談した。

使っていたのは秘匿性の高いチャットツール「テレグラム」。

男からの返信は「救急車はやめましょう」「トイレで踏ん張ってみたら」というものだった。

そして、女は1人で出産することになる。



当時について女は、取り調べの中でこう話したという。

「悪魔だと信じていた。産んだら人間の赤ちゃんだった。それだったらなんとかしてあげたかった」

出産後、赤ちゃんがが動かなかったことから死産したと考えた女は赤ちゃんに手を合わせたという。

裁判で検察は、産婦人科医の所見として、赤ちゃんは24週から28週で死産と推定されるとした。

■「赤ちゃんを捨てることに専念しなさい」


出産後再び女は男に相談した。すると男からは

「赤ちゃんを捨てることに専念しなさい」

「赤ちゃんを外から見えないように袋に入れて」

と言われた。



女は赤ちゃんの遺体を自身のバッグに入れホテルを出た。向かったのは千葉県銚子市犬吠埼。電車などで移動し、崖から遺体を投げ棄てた。

裁判で「遺棄が悪いことだとは知っていたか」と聞かれた女は

「いいえ、自分の体が死にそうなぐらいだったので、やらなければならないと思っていた」と話した。

■その後も続く暴行 女は逃げ出した


女は遺体を遺棄したあと1週間ほど、男の家で暮らしていた。

しかし、女はその後もパパ活などを強要されたという。

そして女は男のもとを逃げ、山形県新庄市に来て、新庄警察署を訪れた際に「遺体を遺棄した」などと話し、その後、逮捕された。



■弁護側「責任能力を争う」

裁判で弁護側は、事件当日も心神耗弱だったとして、「事実は争わないが、責任能力を争う」とした。

別の日程で行われている裁判死体遺棄教唆の罪と傷害の罪に問われている男は「身に覚えがない」と起訴内容を否認し無罪を主張している。

女は初公判の中で男に伝えたいことはあるか問われると、「正直に話して罪を償ってほしい」と述べた。

男と女それぞれの裁判は今後も続く予定で、被告人質問なども予定されている。

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