サードパーティCookie亡きあと、その役割(つまりターゲティングや測定だ)を代替する存在としてGoogleが世に送り出そうとしているのがプライバシーサンドボックスだ。複数のAPIで構成され、広告主は各APIを使って、コンバージョンやアトリビューションに関する集計データを受け取ることになる。

プライバシーに配慮しながら、Cookieでできていたことを実現できる「夢の代替技術」であるはずのプライバシーサンドボックスだが、現状は喜びの声よりも懸念や不安の声がよく聞かれる。現在進行形でプライバシー擁護団体や各国の規制当局、広告主、ユーザーからのフィードバックに基づいて策定がおこなわれており(開発は2年以上遅れている)、はっきりとした全貌が見えにくいことや、サードパーティCookie廃止そのものも意見が割れるトピックであることを差し引いてもだ。

不安の種はどこにあるのか、これまでDIGIDAYで取り上げてきたプライバシーサンドボックスにまつわる懸念や疑問を紐解いてみよう。

不安その1:データを握り、市場を支配しているのはGoogle



Googleはプライバシーサンドボックスのテストを開始した際、広告主やChromeユーザーと協力して、プライバシーサンドボックスが自社の収益だけでなく、業界のすべてのステークホルダーの利益につながるようにすることを歓迎するとコメントしていた。だが、広告の配信からその効果測定に至るまで、すべてのデータを握っているのはGoogleということになる。デジタルの世界において、データを持つ側が圧倒的に強いことは、プラットフォーマー各社の強固な立場を見れば明らかだろう。

プライバシーサンドボックスが本当に機会の均等、業界での公平な競争をもたらすのかという懸念は、英国におけるプライバシー関連規制当局でサンドボックス開発の監督を担う競争・市場庁(CMA)などが、以前から示してきた。2023年6月に、欧州委員会がGoogleの広告事業がEUの反トラスト法に違反しているとして同社に対し新たな訴訟を起こし、Googleのアドテク事業解体を求めたが、そこにはプライバシーサンドボックスへの懸念も含まれている。

不安その2:結局これまで以上に透明性が失われる?



寡占や独占が透明性を失わせることは、改めていうまでもない。AIを用いてさまざまな広告フォーマットや環境で広告キャンペーンを最適化しパフォーマンスを最大化すると喧伝されているGoogleのプロダクト、P-MAXは、その売り文句とは裏腹にバイヤーからはしばしば、広告がどこに掲載されたのか、キャンペーン後のレポートでほとんど知ることができないと指摘されている。支配的な立場にあり、競争が欠如した市場では、プラットフォーマーは「ちょっとした問題」を無視することができる。

これまで通り広告が機能するなら多少の透明性の欠如は問題ないという考え方もできるが、最悪のパターンもある。たとえば、プライバシーサンドボックスの一部で、広告主が興味や行動など幅広い基準に基づいて、ターゲットにしたいオーディエンスのタイプを指定すると、Googleが広告を関連性の高いユーザーとマッチングするプロテクティッド・オーディエンスAPIという仕組みが存在する。具体的なユーザーデータを広告主やアドテクベンダーに公開することはないとされているが、Googleの広告事業チームはどうなのだろうか。自社には例外を認め、詳細なレベルのユーザーデータへのアクセスを許可することは、「絶対にない」のだろうか。

不安その3:そもそも本当にプライバシーは保護されるのか



とあるエージェンシーの幹部が「消費者のプライバシーを高めるために、データを利用できないようにする巨大IT企業などいない」と語っていたが、核心を突く指摘だ。プライバシーサンドボックスの本質的な目的は、Cookieの代替ではなく、ユーザーのプライバシーをよりよく保護することにあるはずだ。単なる代替技術なら、今と何も変わらないことになる。しかし、プライバシーサンドボックスは本当に「プライバシーセーフなデジタル広告」を実現できるのだろうか。

プライバシーサンドボックスで広告主がプライバシーを損なうことなく広告をターゲティングできるツールとして提供される「トピックス」は、ユーザーの閲覧履歴を追跡するのではなく、ユーザーが訪問したサイトの一般的なカテゴリー(スポーツ、ファッション、料理など)を特定し、特定の活動に基づいて分類されたグループに表示する。だが、ユーザーからすれば結局トラッキングはされることになり、間接的に個人を識別できる可能性もなくなるわけではない。ユーザーはプライバシーが守られていると思うかもしれないが、本当にそうなのだろうか。

広告ブロッカーのGhosteryでCEOを務めるジャン=ポール・シュメッツ氏は、「プライバシーセーフなデジタル広告の実現は、何年もかかる社会の変革だ」と指摘している。「ユーザーには自分の損害が見えないため、何がどうなっているのかそれほどよくわからない。(中略)トラッキングされていないと思えば、損害は見えない。見えないものは、どうしても忘れやすくなる」。

主な数字



500万ドル:特定の条件を満たしてプライバシーサンドボックスAPIの試験運用に参加する外部のDSPやSSPに対し、Googleが提供する「支援金」。申請は昨年に締め切られた。

4000万ユーロ:アドテク大手のCriteoに対し、広告のパーソナライズを行うためのデータ処理に誤りがあったとして2023年6月にフランスで課せられた罰金。当局が提示した罰金は6000万ユーロだったが、Criteoが減額を強く求め、最終的には2000万ユーロ分、減額された

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