マッサージにいくら通っても肉体の疲れは解決しない…カチカチの肩や背中をフニャフニャにする格安の方法
※本稿は、大橋しん(著)、芦田京子(監修)『筋緊張がとれ、自律神経が整う イラスト見るだけ整体』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■「筋トレ」より手軽で根本的なアプローチ
私たちの日常は、もはやハードワークといっても過言ではありません。仕事だけでなく、家庭のこと、子育て、介護、人付き合い……ぐったりと疲れてしまうのも当然でしょう。
そんなとき、手っ取り早いのがマッサージや整体に行くこと。その瞬間、疲れがとれた気がします。しかし、また日常に戻り、ストレスにさらされれば、また疲れがどっと押し寄せてきます。またマッサージに行かなければなりませんし、出費もかさんでしまいます。この繰り返しから抜け出せない人も、多いのではないでしょうか。
一番の問題は、この繰り返しが起こっている根本原因から、目を背けていること。筋トレやエクササイズも悪くないですが、もっと手軽で、より根本的なアプローチがあります。
それは、体のイメージを変えること。間違ったイメージを手放していけば、体を押しつぶしていくことがなくなり、姿勢も自然とよくなっていきます。ガチガチにかたまっていた筋肉もやわらかくなり、マッサージいらずにもなれるんです。
■鏡の中にいる自分の姿勢が、老人のようだった
Dさんは、正社員で働きながら二人の子育てに奮闘し、毎日くたくたになる日々が続いていました。やがて体中がこりで痛くなり、吐き気や頭痛まで出るようになってきました。マッサージや整体などの施術を受けても、またすぐに不調がぶり返す……その繰り返しでした。

そんなDさんにとって、転機になったのは、ほんの日常のひとコマでした。ふと目に止まった鏡の中の自分が、老人のような姿勢をしていたのです。思い返してみると、Dさんは子どもの頃から、親に「姿勢が悪い」と叱られていたのですが、うまく姿勢をよくできず、あきらめていました。いままで目を背けていた「姿勢」こそが、この不調と疲労感の原因なのでは、と直感したのです。
Dさんにとって姿勢は、シャキッとしてつくった短時間だけの「よい姿勢」か、それをやめたときのグニャッとした姿勢の、どちらかでした。シャキッとすると、胴体の前側は広く立派にみえるのですが、背中側は緊張で縮んでしまいます。まるで自分で自分を磔(はりつけ)にしているようで、これだと動きにくいし疲れやすいのです。反対に、気を抜いてグニャッとした猫背になるときは、腕をだらんとしていて、腕の重みが体全体を押しつぶしていることでした。
腕は片方約3キロ、牛乳パック3本ずつの重さです。それが両方から背骨を押しつぶすので、背中はカチカチになってしまいます。
■背骨の最重要パーツは背中ではなく体の中心にある
「背骨がどこにあるか?」と聞かれたとき、あなたはきっと背中の骨の隆起を思い浮かべるのではないでしょうか?

確かに、それは背骨の一部です。
ところが、背骨の中でも肝心の支えを担っている中心部「椎体」は、図表1のように、びっくりするくらい中心近くにあるのです!
多くの方は、背骨が支えてくれている場所を背中側だと思い込んでいます。
そのため、「姿勢を真っ直ぐにしよう!」と思うと、背中側の筋肉をカチカチにかためてしまう傾向があります。つられて肩も腰も首もこりかたまっていく……という、あまりよくない習慣を持つようになってしまいます。
残念ながら、背中には背骨の支えはないのです。
あなたの重さを支えてくれる大黒柱は、体の中心にあって、お腹からも背中からも深い位置にある「椎体」です。
本当の支えの位置を知れば、むやみに背中をかためることもありません。
背中がゆるんでも姿勢は崩れることがないとわかり、安心してゆったりとした体になることができるのです。
■「背筋をピンと伸ばす」のは良い姿勢からは程遠い
子どもの頃、「背筋をピンと伸ばしなさい!」なんて言われたらどうしていたか覚えていますか?
きっと頭の中の「ハイ!」なんて掛け声とともに、背骨を真っ直ぐにするつもりで、頭が後ろにそっくり返るほど体を突き上げていたんじゃないでしょうか。
でも、突き上げられ、そっくり返った頭は重いですから、支える首はカチカチにかたまってしまいます。それでは美しさともリラックスともほど遠い体になってしまっていますね。
背骨が頭の下に降りながら、ゆらいでいるとイメージしてみてください。
こわばりがあってゆらぎが感じられませんか? それなら、背骨は鎖のように一つ一つが独立した動きをする連続体だと思い、ちょっとだけ時間をかけてその動きに身を委ねてみましょう。
背骨にゆらぎがあれば、リラックスしたまま背筋を立てていられるようになります。それは子どもの頃に「背筋をピンと伸ばしなさい!」と言われたときのカチコチの体とずいぶん違うはずです。そんな「以前とは違う」ことに気づくことが、今までの習慣を変えていく有効な手立てになるのです。

■人間の胴体は思っている以上に「広くて長い」
また、胸を張って姿勢をよくすると、堂々としているように見えます。キレイな姿勢だという印象を与えることも、できるかもしれません。
でも後ろ姿を見てみると……背中がギュッと詰まっています! これもキレイな姿勢だと言う人もいるかもしれません。しかし、体がラクで快適か、という点ではどうでしょうか。
背中の筋肉は、他の筋肉と比べて大きくて強力です。それが緊張していると、常によけいな労力を割いていることになります。背中に偏った張りは、姿勢バランスに必要な「背骨のゆらぎ」を押さえつけて、閉じ込めてしまいます。
姿勢バランスを微調整しているのは、内側の細かい筋肉(インナーマッスル)です。これがきちんと仕事をするには、背中をギュッとしている大きな筋肉(アウターマッスル)の活動は、かえって邪魔になるのです。
図表3のように、胴体の前も後ろも「広くて長い」とイメージしてみましょう。背骨が自由に動けるスペースが生まれ、押しつぶしもよけいな労力もないまま、背筋もスッとキレイにしていられるようになります。

■「肩の力を抜く」とは、腕をだらんと下げることではない
近年、リラックスが大事との風潮から「肩の力を抜きなさい」と言うスポーツや楽器の指導者が増えています。もちろん、その指摘自体は間違っていません。
しかし、たいていの人は「腕をだらんとする」と解釈してしまいます。人体の構造として、腕は肩甲骨(けんこうこつ)と鎖骨によって、胸郭(きょうかく)に覆いかぶさっています。成人で3〜4キロもある腕が、両側でたれ下がっていたらどうなるか?
胸郭を押しつぶしてしまうのです。すると2つの困ったことが起こります。ひとつは呼吸の動きが制限され、呼吸が浅くなること。もうひとつは、背骨が上から抑え込まれるので、地面からのショックを吸収する柔軟性がなくなり、伸び上がるようにスッと立つのが困難になることです。もしくは、腕の重みに打ち勝とうとして胸を突き上げたり、背中の筋肉をかたくしてしまったりします。
では腕をだらんとさせずに脱力するには、どうすればいいのでしょうか? 肩甲骨から羽が生えているかのように、腕をふわっとさせる……そんなイメージを持ってみてください。腕の重みは背骨や体幹に均等に分散し、背中の筋肉がゆるんで解放されていくはずです。呼吸も背骨も、押しつぶされなくなります。

Dさんはこうしたことを聞いてキョトンとしていましたが、頭でその言葉をなぞってみたのでしょう。姿勢がスーッと立ち上がり、胸と肩が呼吸で躍動してきたのです。その体の軽さに驚いているようでした。しだいに吐き気や頭痛もなくなって、マッサージはすっかり必要なくなってしまったそうです。
あなたの体は、一生付き合わなければいけないものです。ケアを人任せにせず、自分でケアできたらいいと思いませんか? その第一歩こそ、体のイメージを変えていくことなのです。
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大橋 しん(おおはし・しん)
理学療法士
岐阜県生まれ、神戸在住。フローエシックス代表取締役。ドイツでチェロの修業中にアレクサンダー・テクニークを知り、帰国後に理学療法士とアレクサンダー国際認定教師の資格を取得。救急病院勤務を経て、整形外科クリニックにて「特命理学療法士」として勤務。2020年に独立し、リハビリと太極拳を中心としたスタジオを開設。姿勢改善の研究成果を積極的に学会で発表しており、医療だけに頼らない健康とケアのあり方を提案している。テレビ・ラジオ出演多数。
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(理学療法士 大橋 しん)
