米中摩擦の“避難先”、タイの経済成長が日本に微笑みかける
ASEANの中でも成長著しいタイは、政府主導で経済社会全体のデジタル化を進める「タイランド4・0」に取り組む。NTTデータタイの大野有生最高執行責任者(COO)は「タイのデジタル化は日本より進んでいる」と明かす。
そのため同社はデジタルマーケティングやデータサイエンティストなど高度IT人材の育成を加速する。2019年でゼロから新たに20人の高度人材を育成した。20年には50人、21年には100人を育成する。
背景には、同社が主要なターゲットとしている現地の金融・製造業のデジタル化は「あらかた済んでいる。受託型のIT企業は必要とされない」(大野COO)ことがある。
例えばタイ現地企業のセメント工場などであっても既にセンサー類は設置済みだ。今後必要になるのは最先端のデータ分析やデータを活用した顧客や市場への新サービス創造であり、これに寄与する企業を目指す。
同社は、NTTデータが中国や日本などグローバルで進める最新のデジタルマーケティングやビジネス創出案件に担当者を参画させ、ノウハウをタイに持ち帰らせる。「カエル跳びで一気にデジタル化を狙う企業に貢献できなければ我々は生き残っていけない」と、大野COOは成長市場だからこその危機感を示す。
国家の枠を超えたASEAN経済圏は、欧州や北米、中国などに肩を並べる約6億5000万人の巨大市場になる。インドの離脱が懸念されるが、日本、中国、韓国とASEAN加盟国など計16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)も交渉が進む。RCEPが実現すれば、世界の人口の約半数、貿易額と国内総生産(GDP)で約3割を占めるさらに巨大な経済圏が誕生する。
自動車も続々
国内商用車メーカーにとってもタイは重要な拠点だ。いすゞ自動車はタイでは、ピックアップトラックのイメージが強い。10月に全面改良したピックアップトラック「D―MAX」を投入した。現地でのレセプションパーティーには関係者ら3000人以上が訪れるほどの人気が根付いている。
いすゞのピックアップトラックは1974年にタイで現地生産を始めた。累計販売台数は400万台を超える。タイでの販売シェアもトヨタ自動車と首位を争い、ピックアップトラックの販売台数はいすゞの世界販売台数の約4分の1を占める。今回の新型投入を機に、いすゞのタイ工場では溶接工程の自動化なども強化した。
日野自動車もタイを主要市場として挙げる。アジア地域を統括する開発拠点として「スワンナプームものづくりセンター」を新設し、21年に稼働する予定だ。タイだけでなく、アジアの商用車ニーズに迅速に対応できる体制を整える。
経済成長の先を見据える企業もある。豊田通商は、タイで使用済み自動車(ELV)のリサイクル実証事業を今夏から本格的に始めた。
現地では10年以降に自動車の販売台数が急増する一方、ELVを適正に処理するインフラが整備されていないという課題がある。25年頃にはELVの増加が見込まることから、将来に向け適正なリサイクル処理するインフラの構築が求められていることに前もって対応する。
