上写真は淡水フグの成魚をコンピューター断層撮影装置(CT)によって撮影したもの。下絵はフグ類のトゲの進化仮説。(c) Takanori Shono, Gareth Fraser

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 ハリセンボンが代表的な例だが、フグの仲間にはトゲを持つものが多い。このトゲがどのように進化したのかについて、ウロコが変化したものだということは知られていたが、さらにそこから踏み込んでその進化の過程を追求したのが今回の研究である。研究に参加しているのは、東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所、東京慈恵会医科大学、英国シェフィールド大学、ロンドン自然史博物館などの国際共同研究グループだ。

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 フグ類は400種以上の魚からなる比較的大きな分類である。代表的なものとして、マンボウ、ハコフグ、カワハギ、ハリセンボンなどがいる。魚の中でも特異な形態を持つものが多いのだが、特に、ハリセンボンに代表されるトゲを持つ種が多いことに注目したのが今回の研究である。なお、ハリセンボンのものほど鋭利ではないが、膨らむ性質を持つフグの多くは小さなトゲを持っていて、身を守るのに使っているとされる。

 ちなみにハリセンボンというのは単一の種の名前ではない。ハリセンボン科というのがあり、その中に6属20種ほどが存在する。よく知られていることだが、フグの仲間ではあるが毒はない。

 実験ではまず、フグの仲間の稚魚について形態の比較観察を行ったところ、ベニカワムキなどの古い種のフグが持つ、丸いウロコの後端にできるトゲ状の構造物がフグのトゲの原型ではないかと考えられた。そこで、トゲの発生中の遺伝子発現について調べたところ、トゲを作るために必要な遺伝子は、ウロコのものと同じであることが明らかになったという。

 今後の研究展望としては、鋭いトゲと丸いウロコというまったく異なる形態が、いかにして同じ遺伝子から作られるのかを明らかにしていきたいという。

 なお研究の詳細は、iScienceにオンライン掲載されている。