7月23日に東京都内(青梅市)で、8月3日は愛知県名古屋市で観測史上初めて40℃超えその後各地で41℃を記録するなど、“命にかかわる”とまで言われる熱波が続く。気象庁は今年の記録的な暑さを「災害と認識している」としているほど。この事態がもう一つの自然災害である“巨大地震”へとつながるかもしれない。

「例えば、関東大震災(1923年9月11日)の前月は、全国的に猛暑日(35℃以上)が続いた。また、'95年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の前年の7月から8月にかけても、大分県日田市で猛暑日が連続22日間続くなど、記録に残る暑さでした。東日本大震災(2011年3月11日)の前年の8月は『観測史上最も暑い1カ月』と呼ばれ、平均気温が史上最高を記録。気象庁はこの猛暑を、“30年に一度の異常気象”としている。地震研究者の間では、こうした猛暑と巨大地震の関連性を指摘する声があるのです」(サイエンスライター)

 ちなみに、気象庁は今年7月の高温状態について“30年に一度もない異常気象”と、'10年時を上回る表現をしている。果たしてこれが、今回も巨大地震の前触れとなるのか。いずれにせよ気になるのは、関東大震災のような猛暑直後の地震の発生だ。

 ここに不気味な過去のデータがある。すでにいつ起きてもおかしくないとされる南海トラフ巨大地震は、安政地震(1854年)や昭和東南海地震(1944年)、昭和南海地震('46年)など12月に発生するパターンが多いが、一方で887年の仁和地震、1185年の文治地震、1331年の元弘地震など、震源地に諸説あるものを含めると8月にも数多く起きている。さらに推定M8.6とされ、日本の地震史の中でも最大級とされる明応地震が起きたのが1498年の9月11日。また、前出の昭和南海地震の時は、数日前から12月にしては暑い日が続いていたという。

 地震学が専門で武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏は、猛暑と地震の関連性についてこう話す。

「確かに、巨大地震は盛夏か、夏が峠を越えた後の残暑厳しい頃に起こっている。偏りもあり統計学的にはあり得ないこととされ、今の地震学では、なぜそうなのかもまったく分かっていません。例えば、地上で温められた水が、札幌で7℃、東京で15℃の地下水に触れれば何らかの現象が起こるかもしれないが、地下20㍍の地点まで水が浸み込むことは考えにくい。とすると、気温の上昇が直接影響するのかということになるが、皆目見当がつかないのです。ただし、ここまで前例が多いことから、気温と地震の関係を指摘する人がいても不思議ではありません」

 一方、これまで数多くの巨大地震や火山噴火を予知、的中させてきた、琉球大名誉教授の木村政昭氏は、「気象条件と大地震の関係は、あるとも言えるし、ないとも言える」としながら、以下のように語る。

 「気温の上昇が、地殻変動を引き起こすことは否定できません。まず、気温が上がると地中の水面が上昇し、これが活火山のマグマ溜まりを押し上げて活動が活発化する。これがプレートどうしのプレッシャーを呼び、巨大地震の引き金となる可能性も考えられるからです」