社会課題の原体験が企業を、個人を目覚めさせる「留職」とは?
ニーズ、若手だけじゃない
―主に20代から30代を対象とする留職プログラムはこれまで32社から142人をアジア11カ国に派遣してきたそうですね。経験者は帰国後、企業をどう活性化してきたのですか。
「活躍の形はそれぞれ異なりますが、周囲を巻き込んでチームを引っ張るリーダーになるといった内面的な成長に加え、留職が発端となり、アイディアが紆余曲折を経て新商品や新規事業として花開くといったケースもあります」
「ここ数年、若手のビジネスパーソンの社外での活躍の場は広がっています。副業・兼業やプロボノ(自身の専門知識やスキルを生かした新たな社会貢献活動)など、取り組み方はさまざまです。一方で、企業側には多様な社外経験を積んできた人材を、組織として十分生かせていないという問題意識がある。経営トップは、これからは共有価値の創造(CSV)とSDGs(持続的な開発目標)の時代だと旗を振り始めたものの、事業の現場を任されている中間管理職層が何をしたらいいのか戸惑っている。理想と現実のギャップを前に、実は幹部社員こそ、社外体験をする必要があるのではないかという声が高まっているのです」
同じ目線で語りたい
―若手はどんどん外に飛び出していく。一方で管理職層は、企業の内に閉じこもったまま。同じ目線で語り合えなければ事業の将来展望も描けないと。
「そういうことです。いくら若手が社会課題の現場を経験してきて夢やビジョンを熱く語っても、上司があまりに近視眼的では想いが冷めて白けてしまう。せっかくの人材投資を活かし切れません」
―幹部社員向けプログラムではどんなことを体験するのですか。
「2018年1月に実施したインドでのプログラムにはホンダやNTTドコモなど6社から13人が参加しました。最先端のIoT技術で生産管理を行う農村部の酪農現場やアジア最大といわれるスラムの内部などを訪問しました。印象的だったのは、『自分が本当にやりたかったことは何なのか』と他のメンバーと熱く語り合う参加者の姿です。40代の部課長級の方々が、目の前の光景に心を打たれて目頭を熱くしているシーンを何度も目にしました。企業と社会課題を結びつける事業には底堅いニーズがあることを僕自身、あらためて実感しました」
「フィールドスタディはインドなどの海外に限らず、東日本大震災の被災地など地方の現場でも実施しています。いずれも企業側の関心は非常に高く、引き合いが増えて新規の提案活動を一旦、止めているほどです」
―幹部社員向けのフィールドスタディは数日間とか。それでも、内面的な変化をもたらすのでしょうか。
「企業の皆さんは、『会社人』としての帽子を目深に被るあまり、社会の姿が見えにくくなっているように思います。企業人や組織の一員としてではなく、『帽子』を脱いで、ありのままの自分で社会と向き合えば、広がる景色は全く異なってくる。そもそも自分は何をしたかったのか、事業を通じて社会に何ができるかを問い直すきっかけになるのです」
―会社の『帽子』ははるばるインドまで出かけて行かなくても、身近な日常においても脱げるように感じるのですが。
