脳科学者の茂木健一郎氏が自身のYouTubeチャンネルで「KPIに振り回されるな」を公開した。動画内で茂木氏は、近年ビジネスシーンで頻繁に用いられる「KPI(重要業績評価指標)」について、日本における独自の解釈や誤用に対する強い懸念を示し、手段の目的化に警鐘を鳴らした。

茂木氏は動画の冒頭、KPIについて「本来は自分たちのパフォーマンスを数値化し、改善・学習するためのメタ認知のツール」だと定義した。アスリートが自身の記録を計測して動きを修正するように、学習のために活用する分には「大いに結構なこと」と評価している。

しかし、日本の多くの組織ではKPIが「管理のためのツール」に劣化していると指摘。「上からKPIが降りてきて、この数値を達成しなさいと言われ、やらされている感が非常に強い」と現状を分析し、数値化されない仕事のやりがいが奪われていると語る。さらに、ある指標が目標となった途端に本来の価値を失う「グッドハートの法則」を引き合いに出し、指標の最大化そのものが自己目的化する現象を危惧した。

企業の本来の目的は、世の中のニーズに応える創造的なプロセスにあると語る。スティーブ・ジョブズ氏が復帰直後のAppleで行ったスピーチを例に挙げ、「Appleは箱を作っている会社ではない。違う考え方をする人々をサポートする会社だ」と再定義したエピソードを紹介。「本来の目的である精神性が人々を引きつけ、結果として売上などのKPIが満たされるのが正しい」と、順番の重要性を強調した。

教育現場における偏差値至上主義にも言及し、好奇心を持った能動的な学びの結果として数値が上がるべきだと主張。「KPIはパフォーマンスのある側面を見るだけで、行動の動機となる精神性は別のところから来なければならない」と総括し、「KPIに振り回されるな」と視聴者に力強いメッセージを送った。

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