打撃好調!(ボストン・レッドソックスの公式Instagramより)

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「Masaをもっと使うべきだ」

 7月の月間打率は2割9分1厘、出塁率は3割6分1厘、長打率は4割5分――ボストン・レッドソックスの吉田正尚(33)の打撃が上向いてきた。辛口で知られるボストンの野球メディアも「Masa(吉田)をもっと使うべきだ」と訴えており、チームメイトたちも彼の努力と野球に向き合う姿勢を高く評価していた。

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 8月に入っても3日(日本時間)、ドジャース戦に5番・DHで出場。15試合ぶりとなる5号ソロを含む4打数2安打2打点と、チームの勝利にも貢献している。

「今季のMasaは、トレード要員として報じられてきました。移籍の可能性はまだ消えていませんが、その意味合いも変わって来ました。試合に出れば活躍できる選手であり、トレードに出すのであれば、それは彼のためになる、と。またア・リーグ最下位からワイルドカード争いまでチームが浮上できた一因として、Masaがスタメン起用される試合が増えたからだとも伝えられています」(現地記者)

 長打率4割5分5厘は、ホワイトソックス・村上宗隆(26)の4割8分3厘、ブルージェイズ岡本和真(30)の4割2分4厘と遜色ない数字だ。この長打率が辛口なボストンメディアとファンの評価を好転させたのだが、吉田の復調を語るうえで、まずあげなければならないのが、シーズン前半のチームの低迷だ。

打撃好調!(ボストン・レッドソックスの公式Instagramより)

 レッドソックスの筆頭オーナーであるジョン・ヘンリー氏(76)がアレックス・コーラ監督(50)の解任を発表したのは開幕から27試合目を終えた直後の4月26日(日本時間)だった。

「4月26日はボルティモア・オリオールズでの3連戦の2試合目でした。この3連戦はオリオールズの本拠地『オリオールパーク・アット・カムデンヤーズ』で行われたビジターゲームで、このあと、チームはトロントに遠征するスケジュールでした」(前出・同)

 チームは10勝17敗で、ア・リーグ東地区の下から2番目の5位。故障者続出などの明確な理由があればまだ良かったのだが、ここまで8カードをこなして勝ち越したのはわずか2カードだけ。筆頭オーナーのヘンリー氏は、

「コーラは2018年に、球団史に残る最高のシーズンの一つへと導いてくれた(注・ワールドシリーズ制覇)。その後の数年間の指揮においても、私たちは常に深い感謝の意を抱き続けてきた。コーラはチームとこの街に永続的な影響を与えた」

 と、その手腕を讃えつつも、ベンチコーチのラモン・バスケス氏(49)を始め、ピーター・ファッツェ打撃コーチ(39)、カイル・ハドソン三塁コーチャー(39)、ディロン・ローソン打撃コーチ補佐(41)、ジョー・クロニン打撃戦略コーチ(35)らも同時解任しており、ゲームプランニング・失点防止担当コーチのジェイソン・バリテック氏(54)の配置換えも発表した。バリテックコーチの異動先について聞かれると、ヘンリーオーナーは「まだ決めていない」と言い放っており、その口ぶりから取材陣は「本当に怒っている」と察したそうだ。

「成績不振で監督が途中解任されるのは、メジャーリーグではよくあること。でも、監督と計5コーチを同時解任し、1人を配置換えするなんて異例中の異例です」(前出・同)

打撃練習に変化が

 その後、傘下3Aのウスター・レッドソックスを指揮していたチャド・トレーシー氏(46)が暫定監督としてチームをまとめることになった。

「トレーシー暫定監督は22年から3Aウスターを指揮していたので、若手選手や故障による調整でマイナー降格した選手たちを知っています。若手中心の采配や控え選手の抜てきも予想されましたが、そうではありませんでした」(前出・同)

 不振に喘ぐ選手たちを辛抱強く使い、本来の調子を取り戻させたという。

 つまり、シーズン序盤での監督交代後も、吉田はチャンスを貰えなかった。しかし、吉田は腐らなかった。むしろ、WBC大会明けから取り組んできた新打撃フォームの習得に没頭した。

「スプリングキャンプ中から『Masaの打撃練習のやり方が変わった』との情報が出ていました」(米国人ライター)

 通常、メジャーリーグの打撃練習ではスイング量を多くしようとする。ペナントレースが始まってからがとくにそうで、打者たちはスイングをしたら、「早く次のボールを投げてくれ」と言わんばかりにすぐに構える。吉田は違った。スイングをしたら、その打球の行方を追い、バットを構える位置を少し変えるなどし、実戦のようにしっかりと構えてから次のボールを要求していた。

 この練習の意図は、強く、飛距離のある打球を打つこと。のちにチャンスを掴んだときに地元メディアに語っていたのだが、「メジャーリーグでは強い打球を打てなければ生き残れない」と思ったそうだ。

「そもそも、レッドソックスが『5年総額9000万ドル(約123億円)』もの大型契約でMasaを迎えたのは、出塁率の高い1番打者を探していたからです。22年、オリックスで過ごした彼の出塁率は4割4分7厘と高く、Masaを獲得すれば、19年シーズンのような打線が組めるとも考えていました」(前出・同)

 レッドソックスは打撃のチームでもある。1番バッターに出塁率の高いバッターを置き、2番から5番までを長打力のある打者で固め、得点を積み上げていくスタイルで、19年までその重要な1番を務めていたのが、現ドジャースのムーキー・ベッツ(33)だった。そのベッツの退団後、レッドソックスには4割強の出塁率を誇る打者が見当たらず、吉田に期待した。しかし、吉田と言えば豪快なフルスイングが魅力で、日本のファンもそのイメージが強くあったはずだ。移籍後の吉田はチームの期待に応えるため、広角に打つことも試みたのだが、

「ボール球に手を出してしまい、凡打になるケースも増えました」(前出・同)

 吉田は広角に打つのを止め、強く、飛距離のある打球が打てるスイングを取り戻そうと試行錯誤を続けていた。それが、打撃投手役が放る投球の間を置く練習だった。すぐに結果は出なかったが、トレイシー暫定監督やチームメイトが評価を改めたのは、試合中での姿勢だった。

 ベンチスタートとなる日が続いた。吉田は試合後半に入ると、無言でバッティンググローブをはめる。試合展開を見て素振りも始める。誰に指示されたわけでもなかった。そのまま出番ナシで終わる日もあった。それでも、出場準備は続けた。その姿勢がトレイシー暫定監督の気持ちも動かしたのだという。

「レッドソックスが破竹の12連勝でワイルドカード争いに復活した際、Masaがスタメン起用されました。スタメンで出られなかった試合もありましたが、同僚たちも彼の代打準備の話をしていました。彼の姿勢と努力は低迷するチームに響くものがあったのでしょう」(前出・現地記者)

それも野球の一部

 オールスターゲーム・ブレイク中、チームはタイガースから外野手兼DHのジャーマイ・ジョーンズ(28)を獲得したことを発表した。吉田と役どころが完全に被る。吉田は左投手との対戦成績が良くないため、相手投手に応じて、右打ちのジョーンズと併用して使っていくようだ。トレイシー暫定監督も冷静にチームを分析しての補強である。しかし、吉田にとってはまた試練の始まりともなった。

 ある米メディアが吉田に「自身もトレード要員になっているようだが?」とマイクを向けたことがあった。吉田は淡々と、こう答えた。

「それも野球の一部ですね」

 交換トレードがまとまらないのは、やはり高額年俸がネックとなっているようだが、這い上がってきた吉田を支持するボストンのファンは多い。後半戦のレッドソックスのDH争いが熱くなりそうだ。

デイリー新潮編集部