《フェイク記事が1570万回表示されていた》「被害を訴えた女性に同人動画への出演歴」と“偽スクショ”投稿で成人向けサイトへ誘導…弁護士が語る「手口の悪質性」 投稿者の回答は 経済的損害も
〈確かに性目的の撮影はマジでキモいけど、過去に同人出演してる人がこんなこと言っても説得力全くないですね。今のご時世でバレないわけないだろ〉──7月下旬、あるXユーザーによる投稿が注目を集めた。
【写真を見る】1570万回表示された当サイトのフェイク記事、有料の成人向けサイトへ誘導していた実際のSNS投稿
この文言とともに掲載されていたのは、ある女性が出演したとする成人向け動画の切り抜き画像。そして、その女性が過去に性被害を告発したとする"NEWSポストセブンの記事"のスクリーンショットだった。
画像内の記事は〈女性アスリートの性的搾取問題〉と題され、過去に性的な撮影被害を受けたという女性選手が、その実態を告発する内容になっていた。〈競技中に胸元や下半身などを撮影され、ネットに投稿された〉〈自身の姿が勝手に性的な文脈でネット上に掲載された〉などと被害を訴え、女性アスリートが安心して競技に集中できる環境づくりを求める記事のように見える。
しかし、NEWSポストセブンでこのような記事を配信した事実はない。記事も、そこに記された女性の証言も、すべて捏造された"フェイク記事"だった。
有料サイトへの誘導が目的か
いったい何の目的で、この「偽記事」は作られ、拡散されたのか。ITジャーナリストが解説する。
「記事のスクリーンショットとともに、そこに登場する女性と同一人物であるかのように見せた成人向け動画の画像が投稿されています。偽記事によって情報に信憑性を持たせ、有料サイトへの誘導につなげる手法だと考えられます。
最近のSNSでは、話題性のある画像や投稿で注目を集め、その先に有料サイトへのリンクを置くケースが見られます。実際、今回もリプライ欄には有料サイトのURLが掲載されていました。つまり、『被害を訴えた女性に、実は成人向け動画への出演歴があった』という架空のストーリーを作り、閲覧者の驚きや好奇心をあおったうえで、コンテンツの閲覧や購入につなげようとしたのでしょう」(ITジャーナリスト)
「迷惑撮影」は現実に起きている社会問題
当該ポストは、投稿から1週間で1800件を超えるリポストと50件近いコメントが寄せられ、表示回数(インプレッション)は1577万回を超えた。返信欄などでは、偽記事の内容を事実と受け止めて女性の言動を批判したり、その尊厳をめぐる議論に発展したりするやり取りも見受けられた。前出・ITジャーナリストが続ける。
「女性アスリートを性的な目的で撮影し、その画像や動画をインターネット上で拡散する行為は、現実に起きている深刻な社会問題です。
実際、日本陸上競技連盟が2025年7月、アスリートを対象にした迷惑撮影や、写真・動画が性的な目的でSNSやウェブサイトに掲載される事例が頻発しているとして、繰り返し対策を呼びかけています。一部の競技会では、選手を守るため、観客による写真や動画の撮影を全面的に禁止せざるを得ない状況も生じています。
今回の投稿は、こうした現実の被害を題材に架空の告発を作り、報道機関のロゴを利用することで信用を借り、成人向けコンテンツへの誘導に利用したものです。実際に被害を受けている選手や、問題の解決に取り組んできた関係者の訴えまで、閲覧数や売り上げを得るための材料として消費している。今回の件は単なる記事の捏造だけで済まされるものではないでしょう」
弁護士の見解は
実在するニュースサイトの記事を装い、有料アダルトサイトへの誘導に利用する行為に、法的な問題はないのか。ネット上のトラブルに詳しい大阪グラディアトル法律事務所の黒木佐紀弁護士によると、「まず著作権や商標権をめぐる権利侵害が考えられる」という。
"偽記事"のスクリーンショットは精巧に作られている。文字のフォントには違いが見られるものの、記事内に設けられたXへの投稿ボタンやコメント欄、写真ページへ移動するバナー、アイキャッチ画像などの配置は、NEWSポストセブンの公式サイトとほぼ一致。画面左上には、本サイトで実際に使用している「スポーツ」のカテゴリー名があり、右上には「NEWSポストセブン」の文字がはっきりと記されている。
一見しただけでは、本サイトが実際に配信した記事だと誤認する人も少なくないだろう。実際には存在しない記事を、あたかもNEWSポストセブンが配信したかのように見せる行為は、媒体の社会的評価や信用を低下させる可能性があると黒木弁護士は指摘する。
「一般の方から『編集部のチェックがずさんだ』『倫理観に問題がある』といった印象を持たれかねません。
また、成人向けサイトへ誘導している点も問題です。投稿者の具体的な意図は分かりませんが、実在する媒体の記事に見せかけているという意味で、信用毀損につながりうると思われます」(黒木弁護士)
損害賠償額が「数百万円規模」に及ぶケースも
さらに、当該ポストに対してコメント欄では存在しない記事だと指摘する声も上がっている。今回の投稿は、偽造を疑うコメントが寄せられた後も削除されず、広く拡散された。こうした拡散規模は、経済的損害や法的責任を判断するうえで、どのように評価されるのか。
「『何回表示されたら重大な案件になる』という明確な基準があるわけではありません。ただ、誰でも閲覧できる公開アカウントから投稿され、広く拡散されていることは、信用毀損の程度や損害賠償額を判断するうえで、勘案される事情になると思います。
損害賠償額については、拡散の規模や実際に生じた影響などを総合的に考慮するため、一概には算定できません。ただ、悪質な事例では、200万円を超え、数百万円規模に及ぶケースもあります。
『AIで作られた画像ではないか』『偽造ではないか』と指摘するコメントがあるにもかかわらず、それを無視して投稿を残し続けていたのであれば、悪質性が高いと評価される可能性もあるでしょう」(同前)
本サイト編集部は当該アカウントに対し、偽記事を作成・投稿した人物や目的、本サイトの記事であるかのような誤解を招く可能性への認識、成人向けサイトの閲覧や購入を促す意図があったかなどについて質問を送付したが、期日までに回答はなかった。問題の投稿は現在も削除されず、閲覧できる状態となっている。
誰もが本物らしい「情報」を容易に発信できる時代。偽情報に、どう歯止めをかけていくのかが問われている──。
