どの車種にも当たり前にハイブリッドが用意されるいま……プリウスのような「ハイブリッド専用車」の存在意義はどこにあるのか?

この記事をまとめると
■ハイブリッド車が普及した現在でもプリウスやアクアは専用車として存続している
■現行プリウスは走行性能やデザインなど「ハイブリッドの付加価値」を重視して進化した
■アクアはコンパクトなハイブリッド専用車として需要を支えている
トヨタはいまやラインアップの大半にハイブリッドを設定
2023年に発売された5代目の現行プリウスは、全幅を20mm広げて1780mmとする一方、全高は40mm低い1430mmとなった。前後のウインドウを寝かせて、5ドアクーペ風のボディに仕上げている。この大幅なデザイン変更の背景にあるのは、プリウスを取り巻く市場の変化だ。3代目プリウスが発売された2009年ごろまでは、トヨタでもハイブリッドの車種数はあまり多くなかった。プリウスは3ナンバー車でありながら、突出して燃費性能が優れていた。

ところが2011年にコンパクトハイブリッドの初代アクアが発売されると、プリウスはトヨタのなかでも燃費ナンバーワンではなくなった。さらにこの後、カローラシリーズ、シエンタ、ノア&ヴォクシー、アルファード&ヴェルファイアなど、トヨタの大半の売れ筋車種にハイブリッドが設定された。
こうなるとハイブリッドは、もはや特別なパワーユニットではなく、当たり前の存在だ。「ハイブリッド専用車」という位置付けは形骸化して、2015年に発売された4代目を最後に、プリウスを廃止する方法もあっただろう。しかし、それでもプリウスは認知度が高く、トヨタの環境技術を象徴する存在でもある。廃止するのは惜しい。

そこで存続を決めたが、特別な低燃費車ではなくなった4代目プリウスは、売れ行きを大幅に低迷させた。3代目プリウスは、2010年に1カ月平均2万6000台を登録したが、4代目の2021年は4000台だ。2010年の15%に留まる。そこで5代目プリウスは、以前の低燃費というハイブリッドのメリットにこだわらず「ハイブリッドの付加価値」を重視した。
ハイブリッドならではの魅力に特化して生き残る
ハイブリッドの付加価値は、まずモーター駆動を生かした機敏な加速感覚だ。5代目の現行プリウスは、主力ユニットのエンジンを2リッターに拡大して動力性能を向上させた。エンジンとモーターの相乗効果によるシステム最高出力は、1.8リッターの4代目は122馬力だったが現行型の2リッターは193馬力に達する。現行型は先代型の1.6倍だ。

そして、現行プリウスが動力性能を高めたなら、走行安定性も向上させたい。そこで5代目は前述のとおり全高を下げて全幅は広げ、楽しくて安心できる運転感覚を実現させた。後席の狭い5ドアクーペ風のボディも、走りのプリウスを重視したデザインだ。
進化したソーラー充電システムの採用も同様だ。ルーフ上にソーラーパネルを設置して、1年間に約1200kmを走行できる。自給自足による走行を可能にしたことも、5代目プリウスの電動車としての付加価値だ。以上のように、プリウスの4代目と現行型の5代目では、価値観が大きく異なる。モーター駆動の付加価値を追求することで、トヨタの電動車の象徴的な商品になった。燃費は機能のひとつに過ぎない。

それならアクアはどうか。プリウスのような知名度はなく、機能的にはヤリスのロング版だ。ヤリスやヤリスクロスを含めて、コンパクトなハイブリッドが増えたいま、アクアは廃止する方法もあっただろう。
それでも環境技術を重視する企業では、社用車として使えるコンパクトなハイブリッド専用車も必要だ。以前はプリウスがその役目を果たしたが、いまはボディが大きすぎる。コンパクトなハイブリッド専用車というアクアのニーズは残っている。また、コンパクトカーは需要が多い。ヤリスハイブリッドだけでは、コンパクトハイブリッドの品ぞろえが足りないという見方もできる。

とくにヤリスはハイブリッドを含めて後席が狭く、乗り心地も硬めだ。ヤリスハイブリッドの上級版として、ホイールベースの長いアクアが求められている事情もある。日産ノートの上級に位置するノートオーラのような存在だ。以上のように、プリウス、ヤリスともに、それぞれ異なる事情があり、ハイブリッド搭載車が増えたいまでも専用車としてラインアップが残されている。
