「KADOKAWA・夏野剛社長解任騒動の全内幕」その戦いは2年前からすでに始まっていた

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創業81年の出版社が外資ファンドに狙われた。利ザヤを狙う筆頭株主とプロ経営者の水面下の攻防戦。熟達のジャーナリストが真相に迫る。

「元モサド」が社長再任に反対

夏野剛(61歳)は辛くも逃げきった。

6月24日、大手出版社KADOKAWAの株主総会のことである。この日、会場の角川大映スタジオ(調布市)には226人の株主がつめかけた。

筆頭株主の香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントは3月末時点で13・76%を保有する(現在は15・25%)。経営陣に攻撃的なアクティビスト・ファンドとして知られ、夏野の社長再任に反対する株主提案をし、他の株主にも同調するよう呼びかけていた。

オアシスは、夏野が社長就任後の5年間で営業利益が40%も減少したことや、大ヒットゲーム『エルデン リング』を生み出した子会社の価値を十分に取り込めていない、などと主張し、133ページにも及ぶ夏野批判の文書を「より強いKADOKAWA」と題してインターネット上で公開していた。

オアシスを率いるのは、セス・フィッシャーというイスラエル国防軍にいた男である。諜報機関のモサドに属していたといわれる。

フィッシャーが頼った一人が角川歴彦(82歳)だった。創業者の源義の次男で、兄の春樹がコカイン密輸事件で辞任後、跡を継いだ。

しかしその歴彦も五輪汚職で有罪判決を受け、実権を失った。それでもまだ自身と角川文化振興財団で計2%ほど株を持っている。歴彦は「オアシスから『株主提案に同調してほしい、反対票を投じてほしい』と言われて会いました」と打ち明けた。

歴彦は6月16日、五輪汚職事件を機にKADOKAWAが設けたガバナンス検証委員会の調査報告書によって名誉を棄損されたとして、夏野らに2億円の損害賠償請求訴訟を起こした。オアシスと共同歩調をとって、夏野を揺さぶっているのは明らかだった。

歴彦は提訴公表から8日後、弁護士や秘書と株主総会に出席し、夏野をこう批判した。

「上場会社で5年間社長をやるのは、もう限界なんです。それが、まだやりたいと言っている」

KADOKAWAを巡る攻防戦を制するのは…

午後2時から始まった株主総会は3時間を超えた。採決の結果、夏野は59%余りの賛成率で再任されたものの、ほか11人の取締役の賛成率が75〜97%ほどだったのと比べ、際立って低い信任だった。

かといって、オアシスに同調し反対票を投じたのは30%ほどに過ぎなかった。ISSやグラス・ルイスという議決権行使助言会社がオアシス側に立ち、夏野解任を推奨したにもかかわらず、である。機関投資家は意外にも中立を維持するところが多く、11%という大量の棄権票が出たのである。オアシスが歴彦と組んで行う夏野攻撃は筋が悪い―そう考えたとみられる。

攻防戦の発端は'24年12月、KADOKAWAとソニーグループが戦略的な資本業務提携で合意したことに遡る。アニメやゲームを強化したいソニーは、豊富なコンテンツを有するKADOKAWAに食指を動かした。このとき第三者割当増資を引き受けて、ソニーは現在11%の大株主になっている。

ソニーは当初、丸ごとKADOKAWAを呑み込むつもりでいた。100%買収である。その意向を察知したロイターはニューヨーク発で「買収へ協議」と特報している。

それに反応したのがオアシスだった。'20年ごろからKADOKAWAの株を買い始めていた彼らは、ソニーの買収報道を好機ととらえ、'26年3月には9%弱まで取得。いずれソニーがプレミアムをつけて全株取得するだろうから、それまでに仕込んで利ザヤを稼ごうという腹である。

【後編を読む】アクティビストはKADOKAWAのことをナメていた…?夏野剛社長解任騒動の知られざる深層

「週刊現代」2026年8月3日号より

【つづきを読む】アクティビストはKADOKAWAのことをナメていた…?夏野剛社長解任騒動の知られざる深層