「Twitterを読むだけで、年収1000万をもらっていた」それでも心はどんどんと病んでいき…Uber配達員→アナウンサーに成り上がった女性(33)が抱えていた“葛藤”
ビジネス動画メディア「NewsPicks」の初代アナウンサーで、現在も人気YouTubeチャンネル「ReHacQ」の番組を筆頭にビジネス番組やイベントのMCを務める一方、自身の会社「WellNaviAI」の社長でもある奥井奈々さん。
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大卒でユニクロに勤めるも体調を崩し、退職。その後はUber Eatsの配達員などをしていたという彼女だが、知人の紹介をきっかけに年俸1000万円というNewsPicksのアナウンサーに就任。一気に高給取りになった一方で精神的に追い詰められたという暗黒時代について聞いた。

Uber配達員から、年収1000万円という高給取りに転身した経歴がある奥井さんの半生を聞いた ©細田忠/文藝春秋
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Uber配達員→年収1000万円のアナに転身したきっかけとは?
――ユニクロに新卒で入社した後、退社してUber Eatsの配達をしていた奥井さんですが、そこからどうやってアナウンサーになったのでしょうか。
奥井奈々さん(以下、奥井) ある飲み会で出会った会社経営者に「NewsPicksって知ってる?」と言われたんです。その時はNewsPicksの存在を知らなくて。そこから調べて見てみたら、すごく面白かったんです。
NewsPicksはたとえば出演している落合陽一さんが急にトイレに立っていなくなったり、ファッションの歴史であったり多様性の問題であったりアカデミックなことも取り上げていて、テレビと比べていろんな面で自由にやっていて、どんどんハマって見るようになったんです。
そうやって一視聴者として見ていた2018年に、落合さんがホストを務める『WEEKLY OCHIAI』で、女子アナのアップデートというテーマでアナウンサーの募集をしているのが目に留まりました。せっかくの機会だし、とりあえず受けてみようと思って、Uber Eatsで配達した帰りに自転車で受けに行きました。
なので、当時の映像を見てもらうとわかるんですが、他の人は小綺麗な格好をしているのに、私だけブルゾンにジーパンで、ヘルメットを持っています(笑)。
――そのラフさも逆に良かったのかもしれませんね。
奥井 どうなんですかね。当時NewsPicks編集長だった佐々木紀彦さんや落合陽一さんは変わった人が好きだったでしょうし、あと面接官をしていた元テレビ東京の大橋未歩さんも私を推してくれたんです。ほかの人は落合さんのファンが多い中、私はフラットに落合さんと話していたことを評価していただきました。大橋さんとは今でも連絡を取り合っています。
「Twitterのコメントを読むだけ」で年収1000万円
――そのオーディションで見事合格し、奥井さんは初代NewsPicksキャスターとなりました。キャスターには年俸1000万円が約束されていましたが、Uber Eatsのバイトから年収1000万円は夢がありますね。一方で、奥井さんはアナウンサー経験もないわけで、相当なプレッシャーではなかったですか。
奥井 めちゃくちゃプレッシャーでした。当時NewsPicksの社員の中でも、私だけ飛び抜けて給料が高いんですよ。それなのに何のスキルもないし、何もできない。ただオーディションにラッキーで受かっただけだったので。
しかも『WEEKLY OCHIAI』自体もたった4回で終わっちゃったんです。それで私の存在は宙ぶらりんになってしまって。ただNewsPicksも大々的に募集をかけて決まったアナウンサーをいきなり解雇はできない。なので別の番組をやることになったんですが、Twitter(現X)に流れるライブコメントを読むだけの係になってしまって。超お荷物状態でした。だからNewsPicksに入って3年ぐらいは闇でした。
――それでもお仕事自体はあったわけですよね。
奥井 やってはいました。見た目は活躍している風だったんですけど、心はずっと自信がなく、劣等感ばかりで。「Twitterを読むだけの仕事なのに、なんで1000万円ももらっているの」って。オリンピックやパラリンピックを取材しても「なんで私がこんな取材をしているんだろう」「アナウンサーは絶対向いてない」とかずっと思っていました。
実際、民放のアナウンサーの方には「なんであんな人がアナウンサーを名乗っているの」と陰口をけっこう叩かれていたらしいです。一方で、番組のプロデューサーやスタッフはいい人たちで、アドバイスであったり応援もしてもらっていたんですが、それでも自信がない。実績が積み上がっていないんですよ。
――それで心がどんどん病んでいくわけですよね。
奥井 まずメンタルが病んだ時に頼ったのは友達で、飲み歩いてました。その次が神頼み。スピリチュアルな友達がいて、その子に姓名判断をしてもらったら「名前がよくない。変えた方がいいよ」と言われて、その言葉を鵜呑みにして「奥井奈南」に変えました。今は「奥井奈々」に戻しているんですけど。当時のメンタルだったら、「この壺を買って」と言われていても、買っていたと思います(苦笑)。
「下手くそ」「役に立たない」と言われたこともあった
――その闇を抜けるきっかけはなんだったんですか。
奥井 ブレイクスルーはコロナ禍です。2022年、『The UPDATE』という番組でMCを一緒にやっていた古坂大魔王さんがコロナにかかって、代役の金泉俊輔さんというNewsPicks Studiosの社長も濃厚接触者になり、誰もいなくなって「じゃあ奥井さん1人で番組をやって」と言われたんです。
それでいざ1人で番組を回したら、何とかなったんです。その時は「プロが教える『FIRE』を目指す上で大切なこと」という硬い話で、出演者も金融アナリストの方が多かったんですが、アナリストの方がちょっと面白いことを言った際には突っ込んだり、持ち前の関西人の精神が急に出てきて(笑)。1人だからこそ、自分の素をむしろ出しやすかったのかもしれないです。
――その1人でMCをした番組は周囲からも評価されたんですか。
奥井 褒めてもらいましたし、番組の視聴率もよかったんです。番組に寄せられるコメントもそれまでは「下手くそ」「役に立たない」とか散々だったんですが、その回は褒めるコメントが多くて。
スタッフも視聴者の方も、私がどれだけできないか知っているから、推しのアイドルじゃないですけれど、できたことに温かいコメントが寄せられていました。そうしたコメントを見て、私のことを周囲の人はちゃんと見てくれているんだなと知ることができましたし、完璧でなくてもいいのかなと知ることもできました。
TBSの『サンデージャポン』に、NewsPicksの番組で共演していた堀江貴文さんが出演された際、AI時代に一番早くなくなる仕事はアナウンサーだと言っていたんです。文字を読むだけ、進行するだけだったら、そのうちAIにもできる。でも完璧なAIでは出せない人間ならではのバッファ、余白をだせるのが大事なのかなと思います。
出産もきっかけになって、NewsPicksを退社
――アナウンサーでいえば、もともと民放のアナウンサーだった方がYouTubeのビジネス動画に出演する機会も増えていますよね。そこに危機感はありますか。
奥井 ないですね。私とはもう違うものだと思っています。一方ですごくありがたいなと感じています。私がNewsPicksを始めた頃は動画系の経済メディアが黎明期で、本当にパイが小さかったんです。それがコロナ禍で一気に動画が広がって、タクシー広告で認知されるようになって、今ではすごい芸能人が出たり、政治家が出たり、アナウンサーが目指すべきところになっている。なので嬉しい気持ちのほうが大きいですね。
――奥井さん自身は2023年にNewsPicksのアナウンサーを辞めます。
奥井 その頃に子供が生まれたんですが、番組自体が夜の時間帯だったので厳しいかなということもありますし、私をアナウンサーに選んでくれた佐々木さんも辞めたタイミングだったので「同じ場所にいるよりもちょっと冒険をしてみよう」と辞めて、WellNaviAIという会社を設立しました。
――現在はその会社でのお仕事に加えて、「ReHacQ」など様々な番組やイベントで活躍されています。「ReHacQ」もビジネス動画ですが、NewsPicksとは違いますか?
奥井 特殊案件ですね、ReHacQは(笑)。プロデューサーの高橋(弘樹)さんから「あと3時間後に番組の収録があるんですが、これますか?」って電話がかかってきますから(笑)。本当にギリギリなので、ゲストが誰だかわからないまま、何を喋るか知らないまま収録現場に行って「きょうはこの人です」と言われることもザラにあります。
突発的になんでも対応できないといけないので、普段から幅広くいろんな情報を取り入れるようにしてますね。ReHacQは教養レベルがバレるので、学びにはなってますね。
〈「田原総一朗さんのようになりたい」人気番組MCを務める女性アナ(33)のブレない人生観と野望〉へ続く
(徳重 龍徳)
