90億円超で購入した万博EVバス、不具合832件…大阪メトロ報告書「安全リスク認識が不十分だった」
大阪メトロは17日、昨年の大阪・関西万博などに向けて購入したEV(電気自動車)バス190台の使用を断念した問題で、購入の経緯に関する調査報告書を公表した。
万博輸送のためにEVバスを調達するという方針が過度に重視され、「安全リスクに対する認識が不十分だった」と結論づけた。万博期間中、バスの不具合が832件起きていたことも明らかにされた。
車両選定「政治的圧力なかった」
大阪メトロはEVバス開発・販売会社「EVモーターズ・ジャパン」(EVMJ、北九州市)からバス190台を購入し、うち150台を万博で使用した。閉幕後も路線バスなどとして使う予定だったが、万博期間中に事故が発生するなどし、今年3月、全車両の継続使用を断念した。
2019年創業でEVバスの販売実績が少なかったEVMJを購入先に決めた経緯について、大阪メトロは顧問弁護士に委託し、社内調査をしていた。
調査報告書によると、大阪メトロは21年頃から国の基金を活用したEVバスの導入を検討。当初は複数の国内大手メーカーの車両を検討したがEVバスを量産しておらず、大阪メトロが希望する技術や製造スケジュールなどを満たすのはEVMJだけだった。22年3月の経営会議と取締役会で、EVバス150台を導入することが承認された。
問題の背景について、「万博輸送のために全台EVバスを調達するという特定の方針・結論の実現が過度に重視されていた」と指摘。「実現を妨げたり、覆したりするような検討は躊躇(ちゅうちょ)される雰囲気が全社的にあった」とした。
万博期間中、車内ライトの点灯不良など832件の不具合が起きていた。このうち運行に支障が出たケースは、ブレーキホースの損傷など243件だった。
報告書によると、22年当時、大阪メトロが国内の路線バスでEVMJのバス導入を確認していたのは2台のみだったという。
導入決定までには、当時社長だった河井英明氏に対し、EVMJの実績の少なさがリスクとして報告されたこともあったが、「経営会議や取締役会でリスク検討は行われず、課題が十分に共有されることはなかった」という。子会社の大阪シティバスなどからも懸念が示されたが、経営判断に生かされなかった。
150台のうち50台については、大阪府・大阪市から22年2月頃に補助金活用の案内を受けて導入が検討されたとし、「追加調達の必要性は低かったが、大阪市が(大阪メトロの)100%株主である関係性から、特段の議論なく判断されたと思われる」とした。
一方、車両選定について政治的圧力はなかったとした。
河井氏の後任の角元敬治社長は17日、大阪市内で記者会見を開き、「多大なるご心配をおかけしたことについておわびを申し上げる」と陳謝した。再発防止策として、「組織風土や情報共有の仕組みの見直し」「意思決定プロセスの厳格化」など5項目を発表した。
河井氏は購入当時の社長で、経営責任を明確にするとして16日付で会長を辞任し、相談役に退いた。
190台購入に補助金40億円超か
報告書では、これまで非公表としてきた190台の購入費用が計90億円以上だったことも明らかにされた。購入には国や府・市からの補助金40億円超が充てられたとみられ、大阪メトロは返還手続きを進める一方、EVMJに購入代金の返還を求めている。EVMJは4月、57億円の負債を抱えて東京地裁に民事再生法の適用を申請した。
太田肇・同志社大名誉教授(組織論)の話「万博で使うとの方向性が決まったことで、異論を挟めず軌道修正が難しかったのだろう。日本的組織にみられる典型的な事例だ。問題が生じた組織環境を掘り下げるべきで、外部の視点を入れた第三者委員会での検証が必要だ」
