【臨床発達心理士が解説】すぐ手を差し伸べるのはNG!? 正解を教えるより「自分でわかった」を育む見守り方のコツ

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\認知発達と「遊び」の関係/

教えるより能動的に遊び、体験する

 認知発達を育む遊びは、「教える」よりも「体験させる」ことを重視します。たとえば、パズルがうまくはまらないときには、おとながすぐに手を出して助けるのではなく、見守ることが大切です。タイミングを見て「もう一回やってみよう」「どっち向きかな?」と声をかけて、背中を押してあげるアプローチも必要です。

 こうした試行錯誤の経験は、失敗を恐れず挑戦する姿勢を育て、できたときの達成感を大きくします。おとなが正解を教えるよりも、「自分でわかった」という実感が、脳の学びの回路を強化していくのです。

 認知発達を育む遊びは、単なる学習準備ではありません。それは、「生活を理解しやすくする力」を育てる活動です。物事の因果関係や順序、他者の意図が少しずつ理解できるようになると、子どもは日常のなかで「なぜ怒られたのか」「どうすればうまくいくのか」を考えられるようになります。

 こうした理解の積み重ねが、「困った行動」を減らすもっとも根本的な支援になります。叱ってやめさせるのではなく、「考える力」を育てることで、子ども自身がよりよい選択をできるようになるのです。

〈認知発達の流れ ― 環境のやりとりのなかで育つ力―〉

【図解のポイント】

 上図が示しているのは、「できる・できない」を判断するための段階ではありません。子どもは、環境と関わるたびに情報を受け取り → 処理し → 行動し → 経験として蓄積するという循環をくり返しています。
 認知発達が育ち途中の子どもでは、この流れのどこかで負荷が高くなりやすく、困っている行動として表れることがあります。大切なのは、行動だけを切り取るのではなく、この流れのどこに支えが必要かを見立てることです。

社会性の発達にも役立つ

 さらに、認知発達が進むと「他者理解」や「社会性」の発達にもつながります。ごっこ遊びや協同的な遊びなどでは、相手の気持ちや考えを想像し、ルールを守りながら一緒に楽しむ経験が得られます。

 このような経験は、対人関係のトラブルを減らし、集団生活を過ごしやすくする力を育てます。つまり、認知発達は情緒の安定や社会的適応にまで影響する総合的な発達領域なのです。

 発達が気になる子にとっての遊びは、「トレーニング」ではなく「発達の場」。その子の発達の状況に合わせた遊びを選択し、おとなが見守りながら適度に手を貸し、子どもの「わかった」「できた」を増やしていくこと。それが、認知発達を支え、子どもの困りごとを少なくする最良の支援となるのです。

認知発達を育む 本書の遊びのメリット

見る・聞く・触るといった情報を整理し、考えをまとめる力が育つ
「わかった」「できた」という成功体験が、自己肯定感と安心感につながる
自分で選び、試し、修正する経験を重ねることで考える力が育つ
先を見通し、次に何をすればよいかを予測する力が育つ
物事の因果関係や順序を、体験を通して理解できる
自分の行動が、周囲にどんな影響を与えるかを知ることができる
他者の行動や表情から、相手の意図や気持ちを想像する力が育つ
行動の背景にある認知の力が育つことで、子ども自身の困りごとが少なくなっていく

成功体験が自己肯定につながる/

イラスト:おおたきょうこ

【出典】『発達が気になる子の認知遊び』著:藤原里美

【著者情報】
藤原里美(ふじわら・さとみ)
一般社団法人チャイルドフッド・ラボ 代表理事/臨床発達心理士/保育士
公立保育園東京都立梅ヶ丘病院・東京都立小児総合医療センター・明星大学非常勤講師を経て現職。
発達障害のある子どもの療育、家族支援を行うとともに、園の巡回や発達支援の研修など、支援者育成にも力を注ぐ。「子どもを変えずに、子どもの周りの世界を変える」支援方法により、現場や家庭で実現可能な実践方法を発信している。