学生時代は無名の選手、“性加害疑惑”で日本代表から7か月離脱、不起訴後の復帰戦で大活躍…伊東純也33歳が“W杯で不可欠な存在”になるまで
日本の十八番とも言える高速カウンター。
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これは、伊東純也が右のアウトサイドのポジションを獲得してから日本の武器に磨き上げられた感がある。

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スピードを武器に無名の選手からフランス1部リーグへ
伊東のスピードは、持って生まれた才能だ。逗葉高校時代は、目立った活躍ができず、強豪大学からのオファーがなかったが、神奈川大学での実技入試で見せたスピードに監督が「これはモノになる」と確信し、合格させた。
技術は高くはなかったが、スピードという武器で大学サッカー界を席巻した。当時、他の選手のスカウトに来ていた強化担当が伊東のスピードに圧倒され、すぐに獲得を強化部に打診。2015年にヴァンフォーレ甲府に入団し、翌年には柏レイソルに完全移籍を果たした。
その後、2019年にはベルギーリーグのヘンクFCに移籍し、欧州でのプレーを実現させた。2021-2022シーズンには16アシストでアシスト王になり、年間最優秀ゴール賞も獲得。フランス1部のスタッド・ランスへの移籍を勝ち取った。
高校から大学まで無名の選手で技術も足りていなかったが、自分の最大の武器をどう活かしていくのかを考えて、伊東は着実にステップアップしていったのだ。
「これから攻撃面をどう構築していくか」
このシーズン、伊東はカタールW杯を経験した。
ドイツ戦、スペイン戦、決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦はスタメンで出場し、コスタリカ戦は途中出場ながら全試合に出場。スペイン戦では堂安(律)のゴールをアシストして、クロスの精度の高さを見せた。だが、クロアチアに敗れた後は、「本当に悔しい」と顔を歪ませた。
「W杯でやれない部分はなかったと思います。ただ、ゴールを取りたかったです。最後の1対1の勝負で勝ったところで、どう行くのか、そのフィニッシュのイメージがもっとあればと思うので、そこはこれからの課題だと思います。
チームとしてはドイツ、スペインに勝ちましたけど、わずかな差ではなく、大きな差がありました。自分たちは、ああいうサッカー(引いて守って速攻)をずっとやりたいわけではないので、これから攻撃面をどう構築していくか、でしょうね」
伊東だけではなく、堂安も久保(建英)も攻撃陣の多くは、堅守速攻だけのサッカーではベスト16よりも先にはいけない難しさを感じていた。伊東は、それを構築するためにさらに個の能力を磨いて行った。スピードを維持しつつ、クロスの精度、シュートレンジの幅を広げるなどの能力を高めていった。
性加害疑惑による代表離脱、そして復帰
だが、2024年1月、伊東に大きな事件が起きた。
伊東と伊東の専属トレーナーによる性加害疑惑が報じられたのだ。その結果、日本代表としてアジアカップを戦っていた伊東はチームから途中離脱となり、代表活動から離れることになった。伊東個人、そして代表チームに与える影響などが考慮され、7カ月間、代表チームに呼ばれることはなかった。
女性の訴えが不起訴になり、同年9月、W杯最終予選の中国戦で代表復帰。後半18分に三笘(薫)と交代し、ピッチに出た伊東にサポーターから大声援が送られた。その声に押されるように1ゴール2アシストの活躍を見せ、ゴール後はサポーターに大きく一礼した。
「代表を離れた期間は苦しかった。まだ、気持ちが晴れることはないですが、みんなの応援は嬉しかったです。これからもピッチで頑張っていくしかないです」
伊東は、殊勝な表情で自分を応援してくれたファンに感謝の言葉を口にした。重苦しい時間を超えて、代表に戻って来た表情には安堵感も垣間見えた。
それからはシャドーの堂安とともに右サイドの攻撃を作り上げ、周囲との連携をさらに磨いて行った。伊東が代表から離れていた時も連絡を取り合っていた森保一監督は「純也のスピードのある攻撃は、日本に不可欠なもの」と言い、日本の攻撃のキーマンであることを隠さなかった。
左のシャドーか、アウトサイドか、あるいは右サイドか
伊東は右サイドの攻撃に欠かせない選手だが、壮行試合のアイスランド戦では左のシャドーに入った。本来であれば、三笘が位置するポジションだが、その三笘が怪我のために代表に招集されず、左サイドの攻撃が再構築されることになった。
中村敬斗が左サイドの攻撃の一翼を担うが、伊東がシャドーに入るのか、アウトサイドに入るのか。あるいは、右サイドになるのか。
「イングランドのような強い相手だとボールを持たれて、守備の時間が長くなるので、奪った後のカウンターだったりっていうのは、シャドーの方が生きやすいと思います。薫(三笘)が奪ってゴールを決めたような早い攻めの時は、やっぱり自分たちスピードのある選手が前にいた方がやりやすいかなと思うので」
イングランド戦では右のシャドーに入ってプレーし、アイスランド戦では左のシャドーでプレーした。右は堂安と久保のコンビが確立しているが、伊東はカタールW杯の時のように、アウトサイドでのプレーが多くなるだろう。
今回のW杯、チュニジア戦では怪我をした久保に代わり、右シャドーで先発した。果たして今後の試合で、伊東はどのポジションで輝きを見せるのか。
中村俊輔仕込みのコーナー&フリーキックに期待
伊東は、ゴールに直結するプレーが期待されているが、もうひとつ大きな任務を背負っている。コーナーキック、フリーキックなどセットプレーでのキッカーとしての役割だ。もともと代表ではコーナーキックの際、ボールを蹴っていた。
だが、W杯ではセットプレーがより貴重な得点源になる。そのために多様なボールを蹴れるキッカーの存在、そしてキックの精度が重要になるが、それを高めるために代表チームのコーチになった中村俊輔から、コーナーキックや直接フリーキックの極意を学んでいる。
特に、直接フリーキックでゴールを狙うのは、これまであまり経験がなかったが、狙って蹴ってみると意外と手応えがあった。「マリノスは地元なので俊さんは、一番憧れていた選手。一番フリーキックがうまい人から教われるのは、良いこと」と、今も意欲的に取り組んでいる。
オランダ戦でコーナーキックから同点ゴールを演出したように、今後も伊東のキックが日本を救う可能性は十分にあると言えよう。
苦難を経てより際立つようになったスピード
振り返れば、カタールW杯後、苦難の道だった。
サッカー界を揺るがす大きな事件に直面し、昨年10月にはブラジル戦で負傷した。2カ月ほど戦列を離れて、12月26日に復帰し、ヘンクは敗れたが1ゴールを挙げて自らの復帰を祝った。そうして2大会連続で、W杯メンバーに選出された。
スピードは4年前と変わらず、今も色褪せることはない。むしろ緩急をうまく使うことで、より速さが際立つようになった。
チュニジア戦では4年前に取れなかったゴールを決め、CKを蹴り、サイドでは抜群のスピードで相手を翻弄した。これからもそれらを再現し、対戦相手を震え上がらせてくれるはずだ。
(佐藤 俊)
