【中村 清志】喜多方ラーメン坂内「こってりブームの反逆者」が、地味だけど”まったく潰れない”長生きのカラクリ

写真拡大 (全3枚)

群雄割拠、数多の店が新たにできては消えてを繰り返すラーメン業界。そんな世界で、1988年の創業以来、けっして大々的に目立つことはなく、時代の潮流にのるわけでもなく、ただひたすらに愚直な経営で生き残り続けるラーメン店がある。“日本三大ラーメン”のひとつ、喜多方ラーメンのチェーン店「喜多方ラーメン坂内」だ。

家系ラーメンに二郎系ラーメン……濃厚なこってりラーメンばかりが持て囃されてきた時代にあって、「喜多方ラーメン坂内」は《毎日食べても飽きることのない味》を追求して約40年。連綿とつづく“あっさりとした”喜多方ラーメンの素朴な味わいを守り続けている。

一見すると、数ある暴力的なこってりラーメン店たちに駆逐されてしまいそうだが、実は業界内でも屈指の“まったく潰れないチェーン”で知られている。その理由はずばり店舗網を支えるフランチャイズ店の「収益性の高さ」と「加盟継続率の高さ」にあるという。外食業界に詳しい中村コンサルタント代表の中村清志氏が解説する。

【前編記事】『「このままだと“日本三大ラーメン”が死語に」消滅寸前の喜多方ラーメン…チェーン店「坂内」救世主となるか』よりつづく。

ラーメン業界屈指の収益率を誇る

2026年6月現在、「喜多方ラーメン坂内」の店舗数は90(国内79、海外11)を数える。そのうち直営店とフランチャイズ店の割合はおよそ1:2とされており、つまりは店舗展開をフランチャイズ店が牽引していると言える。

ではなぜ、そもそも「喜多方ラーメン坂内」は、けっして主流ではない“あっさり”とした喜多方ラーメンを扱っているにもかかわらず、加盟店に選ばれ続けるのか。その理由は、ブームにも揺るがない強固な顧客基盤による絶対的な「収益性の高さ」が担保されているからだ。

たとえば「喜多方ラーメン坂内」に関しては、こんな顧客アンケートがある。《再来希望:94.7%》《誰かに紹介したい:89.9%》。それだけ顧客層の広さとリピーターの多さには定評があるというわけだ。

もちろん、いわゆる“中毒性”を好むラーメンマニア層からは「インパクトがない、無個性だ」と批判されたり、「良くも悪くもオーソドックスなラーメン」と揶揄されたりすることもあると聞く。しかし、ラーメン店にとって店舗運営の原動力はあくまで顧客基盤の盤石化にある。

その点で、「喜多方ラーメン坂内」の“我が道を行く”姿勢は正しくあり、何より数字につながっている。あくまで同チェーンの運営会社(株式会社麺食)による発表であることは留意しつつ、全店平均売上750万円以上、償却前営業利益率15%以上というのはかなりの破格な収益率だ。

「新規客誘致にかかるコストは既存顧客の来店促進の5倍以上かかる」という法則があると外食業界ではよく言われているが、「喜多方ラーメン坂内」はあえて新規顧客の開拓にこだわらず、既存顧客に長年親しまれるスタイルを貫いていることが、収益性の高さにつながっているのではないだろうか。

“温かみある”フランチャイズ経営とは

「喜多方ラーメン坂内」のフランチャイズ店が潰れることなく安定している様は「加盟継続率の高さ」からも見て取れる。こちらも同社の発表だが、3年以内の閉店率が70%と言われているラーメン業界の中で、同チェーンのフランチャイズ店は、その65%以上が継続年数20年以上を達成しているという。

これには、前述した顧客基盤の強固さもあるだろうが、同社ならではの人材育成力についても触れておきたい。「店舗は人なり」とはよく言ったもので、労働集約型の外食店では、働く人の良し悪しが店舗の栄枯盛衰の分岐点となる。

とはいえ、飲食業界の人手不足は深刻化の一途を辿っている。そんな中、「喜多方ラーメン坂内」のフランチャイズ本部は、早い段階から外国人人材の育成体制を構築。外国人の自社雇用は約20年前には開始していたというから驚きで、いわば外国人雇用のパイオニア的存在と言えるだろう。

無論、各店舗に人材を紹介するだけで終わりではない。その後の彼らへのきめ細かなフォローにより、フランチャイズ店へのサポートを継続的に行うことで、早期の戦力化と定着を実現している。フランチャイズ店側からすれば、これほど手厚い保障は無いはずだ。

「食を通じた、気持ちのぬくもり」を世界に伝えていく。――そんな同社のミッションらしく、顧客はもちろん、フランチャイズ店へも温かみを忘れない。その精神が、同社の安定的な成長につながっているのだろう。

【こちらも読む】『「島田紳助が出資したラーメン店」本人も予想外の急成長を遂げていた…100店舗超えの牛骨ラーメン「まこと屋」誕生秘話』

【こちらも読む】「島田紳助が出資したラーメン店」本人も予想外の急成長を遂げていた…100店舗超えの牛骨ラーメン「まこと屋」誕生秘話