本上まなみ、20代前半に撮影した自身の写真集を振り返りながら明かす“家族との時間”「写真集を家族みんなの手が届く場所に置いたのに、まだ誰も感想を言ってくれません(笑)」
自身の写真集を手に「20年ぶりくらいにタイムカプセルを開けるみたいだった」と語るのは、女優の本上まなみ(50)。カメラマンの西田幸樹氏が活動40周年を迎えるにあたり、同氏が撮影を手がけた写真集『Days of Heaven.』(小学館、2000年)の想い出を明かしてくれた。
【写真】王道とはひと味違うストーリー性のあるグラビア 写真集『Days of Heaven.』よりアザーカット
撮影に2年間かけ、23〜24歳の本上を追った作品は、『ヤングサンデー』のグラビアとして立ち上がった企画だった。
「担当の方から『四季の美しい景色に溶け込む本上さんをおさめた、歳時記のようなグラビアを撮りませんか』と、声をかけていただいたのが始まりでした。水着でニコッと微笑む王道とはひと味違う、ストーリー性のあるグラビアに胸が躍ったことを覚えています。カメラに向かって表情やポーズを意識するのではなく、その瞬間の素の姿を切り取っていただく撮影が新鮮で、心地よくもありました」
当時の本上は『ほんじょの虫干。』(学習研究社)で文筆家デビューを果たし、香取慎吾主演のドラマ『蘇える金狼』(日本テレビ系)出演など女優業でも順調。"癒し系"と称されて脚光を浴びていたが、その胸中は「いつも揺らいでいた」のだと振り返る。
「演技の勉強をしてこの世界に入ったわけでもなく、ずっと自信が持てなかったんです。『ここにいていいのかな、私』と不安を抱えてしんどくて、『頑張ってね』と期待されても頑張り方がわからない……。そんな不安定な時期にオファーされたのがこのグラビアでした。撮影中、カメラマンの西田さんは私に寄り添い、頑張って笑顔を浮かべなくても『ありのままのあなたでいいんだよ』と受け入れてくださった」
スペインでの撮影はスタッフ全員が1台のロケバスに乗り込み、8時間も走り回ることもあったという。
「ロードムービーのようにいろんな場所を転々とし、ヘトヘトなんだけれど、白夜の時期だったから明るい時間が長く、いくらでも撮影できるんです。衣装が汚れることも気にもせず(笑)。2年間、丁寧に積み重ねた撮影は、セラピーのような時間でした。この写真集には、自分自身をまるごと認めてもらえた、あの時の喜びや幸せが詰まっている。私の人生にとって、かけがえのない1冊だと思っています」
写真集を「家族みんなの手が届く共有スペースに置いてみた」
ページをめくりながら、本上は愛おしそうな表情を浮かべた。
「この写真集を最近、家族みんなの手が届く共有スペースに置いてみたんですが、照れくさいのか、まだ誰も感想を言ってくれません(笑)。娘が当時の私の年齢に近付いていて、一緒に見ながら話をしてみたい。娘も息子も、この写真集の中にいるような私を見慣れているので、しっくりくると思います。『動物と戯れたり、草の上でゴロゴロしたり、お母さんは若い頃から変わらないんだね』って、笑うんじゃないかな」
自身で考えたという写真集のタイトル『Days of Heaven.』にかけて、50歳になった本上に、日常のHeavenなひとときを訊いた。
「家族と過ごす時間。そして、いとこたちと交流する時間です。母は5人きょうだいで、いとこ会は今や、その伴侶など含めて20人以上の大所帯に。祖父の名を冠したLINEグループでは近況を報告し合いながら、さりげなく、親への心配事などもお互いに打ち明けています。親子だと角が立つような日常の困りごとも、いとこから伝えてもらうと、すんなり解決したりして。互助会のようなチームワークを発揮しています」
毎年、夏には母の故郷・山形県の庄内地方に親戚が集まるのだとか。
「直接会えて、いとこ会も最高に盛り上がります。山形の夏といえば、だだちゃ豆も楽しみ。京都の丹波の黒豆も立派でおいしいけれど、自分にとっては、子どもの頃から食べているだだ茶豆がやっぱり一番! めちゃめちゃで小粒で、さやがくびれているのがかわいくて、小ぶりながら味わいが深くて……。庄内の伝統食"笹巻"も大好きなんです。今年の夏も待ち遠しいな」
"心の故郷"と語る庄内への愛が、止まらない。東京で生まれて大阪で育ち、2013年からは京都で暮らしている。書店が多く、ゆったりと時が流れる古都にも愛着がある。
「私にとって、京都のいちばんの魅力は夜がしっかり真っ暗になること。日々散歩している鴨川も昼間は心癒される美しい眺めですが、夜になると、どこからおばけが出てきてもおかしくないような暗闇にひっそりと包まれます。平安時代の書物などに〈怪しい者が辻に出た〉なんてあると、『その恐怖わかるなぁ』と共感してしまう。石燈篭を模したような明るすぎない街灯など、京都らしさを保つ細やかな工夫にも心打たれます」
変わらないことに価値を見出し、愛でる。幼い頃より本を愛し、文字を愛する本上。新聞のエッセイなど、執筆活動もこつこつ続けてきた。
「『ほんじょの虫干。』の頃はちゃぶ台に向かって原稿用紙に鉛筆で執筆していましたが、パソコンが便利なので、今はすっかりデジタル化しています(笑)。でも、原稿用紙や文房具の手触りや"匂い"には未だに心を掴まれています。子どもたちが学生で家の中には文房具がいっぱいあるので、ロケで留守にする時などには、家族に置き手紙をしたりして。文字を書いていると頭の中の考えもまとまって、手書きっていいなとしみじみ感じるんです」
愛する文房具を時には、ただ触れてみる。ひそやかな安らぎに、心も潤うのだという。
【プロフィール】
本上まなみ(ほんじょう・まなみ)/1975年生まれ、東京都出身。俳優・エッセイスト。近著に『みんな大きくなったよ』(ミシマ社)。『newsおかえり』(ABCテレビ、火曜担当)、『そこに山があるから』(BS朝日)に出演中。4月20日より放送開始の連続ドラマ『銀河の一票』(カンテレ・フジテレビ系、月曜22時〜)に出演する。
撮影/西田幸樹 取材・文/渡部美也
※週刊ポスト2026年5月1日号
