AI 活用によるメディアプランニングの未来 電通の事業提携からみえてきたもの

記事のポイント
AIはメディアプランニングとバイイングにおける意思決定や成果に本質的な変化をもたらしている。
電通はシンセティックオーディエンスの活用に向け、複数の企業と提携し実装を進めている。
AI生成のオーディエンスは精度とスピードで優れ、直感からデータ主導の手法への移行が進む。
AIはメディアプランニングとバイイングにおける意思決定や成果に本質的な変化をもたらしている。
電通はシンセティックオーディエンスの活用に向け、複数の企業と提携し実装を進めている。
AI生成のオーディエンスは精度とスピードで優れ、直感からデータ主導の手法への移行が進む。
6月16日〜20日に開催された「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル(Cannes Lions International Festival of Creativity)」での雑談の多くは、コンテンツをより速く生成したり制作コストを削減したりするAIの能力に集中していた。
より重要な変化は、意思決定の仕方、メディアの割り当て方、キャンペーンの成果を変える導入を通じて、競争上・業務上の優位性を獲得するためにAIがどのように利用されているかということだ。
デジタルツイニングの実践
メディアプランニングを例に取ろう。この仕事の大部分は、マーケターの予算と、最終的に予算を獲得するメディアオーナーとのあいだにあり、それは人間関係、評判、組織的な知識の上に築かれた機能だ。こうした資質は依然として重要だが、AIはそれを再現、あるいは少なくとも補完する能力をますます高めている。
その一例として、まだ初期段階ではあるが、市場調査、クリエイティブテスト、さらにはメディアプランニングやターゲティングのためのシンセティック(合成)オーディエンスの利用が挙げられる (この実践は「デジタルツイニング」とも呼ばれる)。
要約すると、これは、複数のデータソースを使用して生成AIによって作成された複合オーディエンスプロファイルを採用し、メディアのターゲットにすることだ。
電通は6月中旬、新興企業のエビデンザ(Evidenza)と事業提携を結んだ。これは、シンセティックオーディエンスがより広く使われることを予感させる動きである。電通のオルタナティブ投資部門責任者、ポール・カン氏は、カンヌにて米DIGIDAYの取材に応じ、「我々は、ブランドやクライアントがインサイトからアクティベーションに移行する方法について、実に強力かつ積極的な一歩を踏み出そうとしている」と語った。
シンセティックオーディエンスを一般的に
彼らがベースにするデータは現実に存在する。電通の場合、自社のコンシューマー・コネクション・システム(CCS)調査パネルと、エビデンザが提供するデータを利用する計画だが、そこから生成されるプロファイルは人工的なものだ。ペルソナは個人情報には一切依存せず、基本的に確率的なデータソースから作成される――それにより「シンセティック(合成)」と称している。
電通が6月に発表した提携は、エビデンザとの契約だけではない。アドテク企業のシグマ(Sigma)のプログラマティックプラットフォームを使用するためにMiQと、コマースメディア・プラットフォームの技術スタックを使用するためにクリテオ(Criteo)とパートナーシップ契約を結んだ。この動きは、ライバルの大手エージェンシーとは異なるアプローチで技術的信用を獲得しようとしていることを示している。買収競争よりも、マーケティング業界のほかのプレーヤーとの提携を優先しているのだ。
カン氏は、電通によるこの分野での将来のM&Aを否定はしなかったが、エージェンシー事業者は、自社とは根本的に異なるビジネスモデルを持つ企業に対して、キャッシュによるオファーを拙速に行うべきではないと示唆した。「我々は、(AI)技術を社内に導入するための積極的なステップをどのように踏むのかについて、本当に慎重にならなければならない。(中略)ただ前へ突き進み事業を買収すればいいというものではない。特にエージェンシーにとって、そうすることにはリスクがつきまとう」とカン氏は言う。
カン氏によると、このパートナーシップは、電通がシンセティックオーディエンスを「新興の手法」から、どのメディアプランナーも導入できる手法に移行させるのに役立つという。同氏は、どのクライアントチームがすでにこの方法を採用しているかは明かさなかった。
直感ではなくデータに頼るようになる
AIツールは、調査パネルに依存する従来の方法よりも迅速にこのようなプロフィールを作成できるため、スピードとコストの面でメリットがある。電通の最高データおよび技術責任者、シャーリ・ゼルサー氏の声明によると、この技術は「プランニングとアクティベーションにおいて、より高い精度、スピード、機敏性を実現した」という。
ゼルサー氏は、初期のテストでは、AIが作成したオーディエンスプロフィールと従来から作成されているオーディエンスプロフィールのあいだに87%の相関関係があることが示され、「レガシーメソッドに匹敵する精密性を持ちながら、価値実現までの時間を短縮し、新たな成長機会を引き出すことができることを証明している」と話す。
また、これはAI技術の応用のひとつであり、一般的になれば、スタッフが直感ではなくデータに頼るようになり、必然的にメディアプランニングの仕事が変わることにつながる。
[原文:Media Buying Briefing: What Dentsu’s synthetic audiences deal reveals about future of media planning]
Sam Bradley(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:島田涼平)
