投資意欲も「iDeCo改悪」で尻込み。これから積立投資するなら「新NISA」一択でしょうか?



iDeCoは改悪? これから投資する人への影響は
具体的に指摘されているiDeCoの改悪は、退職所得控除の二重取りができなくなった点です。
iDeCoの一時金を受け取ったあと、5年以上空けてから勤務先から退職金を受け取ると、それぞれで退職所得控除をフル活用できます(受け取りの順番が逆の場合は20年以上空ける必要がある)。
退職所得控除とは、受け取った退職金または一時金から控除できる金額です。控除額は、勤続年数(iDeCoは加入年数)に応じて、図表1のように計算します。
図表1
出典:国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
今回改悪が話題になっているのは、先にiDeCoを受け取る際のルールです。前述のとおり、これまでは退職金とiDeCoの一時金でそれぞれ退職所得控除をフル活用するのに、「5年以上空ける」ことが要件となっていましたが、改正により「10年以上」となります。
つまり、それぞれで退職所得控除を受ける要件が厳しくなるのです。受けられる控除額が減ると、課税対象となる所得が増えるため、実質的な増税といわれています。
なお、iDeCoの一時金を受け取ってから10年経過せずに退職金を受け取ると、勤続年数とiDeCoの加入期間が重複している部分に関しては控除対象外となります。「60歳でiDeCoの一時金を受け取り、65歳で勤務先から退職金を受け取ろう」と考えている方にとっては、「増税」と感じられるでしょう。
ただし、日本企業の多くは定年を60歳に設定しています。今後定年の引き上げが進むと考えられるとはいえ、「70歳で退職金を受け取る」というのは現実的ではないでしょう。
実際に、厚生労働省の「高年齢者雇用状況等報告」によると、令和5年度において定年を70歳以上とする企業は2.3%でした。退職所得控除を二重で利用できる仕組みを有効活用できるのは、ごく一部の方といえるでしょう。
投資元年の人は「新NISA」がおすすめ
iDeCoの改悪は大して気にするほどのものではありませんが、これから投資を始めようと考えている方は、iDeCoよりも新NISAを優先するとよいでしょう。いずれも運用益が非課税になるメリットがありますが、「iDeCoにはなく、新NISAにはあるメリット」として、以下が挙げられます。
・自由に運用資産を引き出せる
・金融機関によっては最低100円から始められる
・投資対象が幅広い
iDeCoでは、原則として60歳までは運用しているお金を引き出せません。iDeCoの正式名称は「個人型確定拠出年金」で、年金という言葉があるように、老後資産を用意することに特化しているためです。
しかし、新NISAでは特段の縛りはなく、必要に応じて引き出せます。教育資金や住宅取得資金、娯楽費用などさまざまな資金ニーズに対して、柔軟に対応できるメリットがあります。
また、iDeCoは最低でも毎月5000円を拠出する必要がありますが、新NISAの場合は最低100円から投資できます(金融機関による)。少額から始められるため、投資初心者の方にとって心理的にも始めやすいでしょう。
iDeCoで投資できるのは投資信託に限られますが、新NISAでは投資信託以外にも国内株式や外国株式、REITなどさまざまな資産に投資できます。「慣れてきたら自分で投資対象を選定したい」と考えている方は、新NISAのほうが向いています。
まとめ
iDeCoの改悪が話題になっていますが、実際にはそこまで大きな影響はないと考えられます。計画的に老後資金を用意できる制度として、引き続き有効活用できるでしょう。
ただし、柔軟に資産を引き出せる点を魅力に感じる方や、少額から投資をしたいと考えている方は新NISAのほうが向いているといえます。それぞれの制度をきちんと調べたうえで、自分に合っている制度を選択しましょう。
出典
財務省 令和7年度税制改正の大綱
国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト iDeCoってなに?
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
厚生労働省 令和5年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します
金融庁 NISA特設ウェブサイト NISAを知る
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー