「J2優勝」を目標に掲げたモンテディオ山形。大型補強を実現できた背景にあるのは?
昨季は8連敗やピーター・クラモフスキー監督の解任もあって序盤に低迷したが、渡邉晋監督就任後に3度5連勝をするなど急浮上。リーグ5位でJ1昇格プレーオフに進出した。だがそのプレーオフ1回戦で清水エスパルスと引き分けて敗退となり、J1昇格は果たせなかった。
渡邉体制2年目となる今年は、クラブとして「J2優勝」という目標をはっきりと掲げている。渡邉監督は昨シーズンオフ前から「その本気度が問われる」と自身だけでなく選手やクラブにも高い意識を求めていたが、それはこのオフの補強にもはっきりと現れている。
チームのストロングポイントとしてある両ウイングには特に力を入れていて、右では坂本亘基(元・横浜FC)、左では杉山直宏(元ガンバ大阪)、氣田亮真(元ベガルタ仙台)を獲得。小野雅史(名古屋グランパスへ)が抜けた左サイドバックには安部崇士(元・徳島ヴォルティス)を獲得し、他にもボランチの松本凪生(元ヴァンフォーレ甲府)、右サイドバックに岡本一真(元ザスパクサツ群馬)、FWに有田稜(元いわきFC)、トップ下に加藤千尋(元ベガルタ仙台)と、ほぼ全てのポジションで即戦力を加えて、戦力の大幅な底上げに成功している。
今回のオフもチームを離れた選手は多かった。昨年J2で13得点のチアゴ・アウベス(ボタフォゴへ)や助っ人FWデラトーレ(ミラソウへ)が移籍しただけでなく、守備陣で主力の野田裕喜(柏レイソルへ)と小野雅史といった結果を残した主力がJ1へ引き抜かれてしまった。
主力選手が上位カテゴリに移籍してしまうのはどのカテゴリのクラブでも抱える共通した悩みだ。しかし、ここ数年の山形はその移籍で空いた穴を埋めて余りある戦力補強に成功していて、特に今年はその質と人数が一段階上がった印象もある。
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今年新たに就任した渋澤大介強化部長は「我々には明確なフットボールのプレーモデルがあり、クラブとしての明確なビジョンがある」としている。
2020年に石丸清隆監督(現・愛媛監督)が就任して以降、ここ数年の山形はボールを動かしながら攻守でアグレッシブに主導権を握り続ける「アタッキングフットボール」を掲げて、クラブとしてのプレーモデル構築を続けてきた。
その間、石丸監督、クラモフスキー監督と成績不振から2度の監督解任があったが、指揮官が代わりながらも、クラブはこのフィロソフィーを曲げることはなかった。その積み重ねの結果、山形はJ2におけるブランドを確立できたのだ。
「東北にあるただのJ2のクラブではなく、モンテディオ山形というクラブのブランド価値が着実に植え付けられてきている」(渋澤強化部長)
今や獲得交渉の際にクラブが自分たち理念をしっかりと伝えられるようになっていて、スタイルに合う特徴を持つ選手たちから、このクラブを選んで来てもらえるようになってきたのだ。
この差別化は今の山形というクラブが持つ、選手獲得における大きな強みのひとつとなっている。
しかし、山形としては「明確なフィロソフィーを掲げるJ2の優良クラブ」という立ち位置に甘んじるつもりはまったくない。
経営規模では、23年度は過去最高を更新する24億5000万円の営業収益見込みで急成長中。コロナ禍明けでサポーターも戻り、観客動員は昨年J2におけるクラブ最多を更新した。3年半後の27年夏には新スタジアムも開業予定で、クラブ環境もどんどん改善されてきている。
経営面、環境、チーム戦力。多くの面で底上げが続き、上昇機運がある時期だからこそ、さらにステップアップするために、今年は「J2優勝」という大きな目標を掲げ、これまでになく本気で意識しているのだ。
渡邉監督は「J2優勝。この目標を達成するために、誰一人、疑うことなく、誰一人、諦めることなく、我々とともに戦い、我々とともに前進して、目標をつかみ取りましょう」とサポーターに熱いメッセージを送っていた。
10年ぶりのJ1昇格をJ2優勝で果たし、クラブの壁をブレイクスルーできるか。
2024年は山形がクラブ・チーム・サポーター一丸となって勝負をかける年となる。
取材・文●嶋 守生(フリーライター)
