勝田貴元、地元表彰台の勝因は4本中たった「1本」のウェット用タイヤ【ラリージャパン2022】

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■タイヤはハード3本、ソフト2本、ウエット1本

コロナ禍で延期が続き、実に3年越しの悲願の開催となったWRC第13戦「RALLY JPAN」で、我らが日本の、そして地元出身である勝田貴元選手が見事、3位表彰台を射止めた。

難易度の高いコースにリタイア続出、最終日には雨も降り難しいコンディションとなったラリーでの好結果。これにはじつは絶妙なタイヤ選択も効いていた。勝田選手が駆るGRヤリス ラリー1は、最後のパワーステージ(PS)、SS19では何と右フロントだけウエット用、残りはドライ用という変則的なタイヤを装着で臨んでいたのである。

【画像】ゴール後のタイヤ4本

ラリー1は1日に、車両装着の4本に加えてサービスパークを出る際に最大2本のスペアタイヤを足した合計6本のタイヤを使うことができる。天気予報は、昼前から雨。しかもかなりの量になると報じていたが、早朝の時点では雨は降っていなかったから、タイヤチョイスは非常に難しいものになった。

しかもトヨタ勢はエバンス、オジェ、ロバンペラの3人はウエットタイヤを持ち込んでおらず、勝田も登録しているのはハード3本、ソフト2本、そしてウエット1本だった。ウエット「1本」………!?

公開されたその情報を元に、一体どんなタイヤ選択で来るのかとSS19旭高原のコース脇でWRCマシンの走りを見守っていた筆者。ラリー1勢では唯一、ウェットタイヤ4本を選び、見るからに速かったMスポーツのC.ブリーンがぶっちぎりのステージトップタイムを記録するも、2、3位にはラリー2勢が入り、ウェット2本装着のヒュンダイのヌーヴィルは14.9秒差の4位に。一方、ハード5本というギャンブルに出たチャンピオンのロバンペラは見るからにペースが遅く、実際1分58秒4遅れの30位という結果に終わる。

我らが勝田選手は42.2秒遅れの16位。4位で追い上げていたオジェがソフト+ハードの組み合わせにも関わらず31.6秒遅れの7位に入ったものの、それまでにつけていた大差を覆すには至らず、勝田選手の表彰台がここで決まったのだ。



■ウエットタイヤ1本でどう走らせるの?

戻ってきた勝田選手のマシンを興味津々で見てみると、たった1本のウェットタイヤが右フロントに装着されていた。一体これ、どうやって走らせたのか。豊田スタジアムでのセレモニアルフィニッシュの後、勝田選手に直撃してみた。

「絶対このラリーは荒れると思って用意していました。右にしたのは、ウェットは方向性のあるパターンなので、右にしか付けられないんです。運転はしやすくないです。真っ直ぐ走らないですし、ブレーキングですぐ横を向くし。でもWRCでは“クロス履き”ってよくあって、モンテカルロではスタッドタイヤを右前と左後ろ、スリックを左前と右後ろみたいに履くのですが、それに比べたら全然簡単というか(笑)。なので気にならなかったですね」

ちなみにゴール後の勝田選手のマシン、左リヤタイヤがリム落ちした状態になっていた。じつはこの日2本目のSSで土手にリヤをヒットさせて右リヤタイヤをリム落ちさせてしまい、それを左リヤにつけて走っていたのだという。

「そのソフトタイヤはリム落ちの危険があるので、抵抗の大きいフロントではなくリヤにつけて、何とかしのぎました」

確認しそこなってしまったが、ウエットタイヤの右フロントとバランスを取ったのだろう。そんな状態で走っていたなんて!

日本の狭い林道を、しかもウェット路面の中、全開で駆け抜けていくというだけでも常人離れしているWRCドライバーのテクニックだが、じつはそれをタイヤがこんな状態でやってのけていたわけである。そんな驚異のワザをここ日本で観られたことに本当に感謝だ。

ちなみにこのRALLY JPAN、ナショナルクラスには勝田選手のお父様、勝田範彦選手もGRヤリスで参戦しており、このSS19ではクラストップタイムを叩き出していた。まさにこの日は勝田の日、だったのである。

〈文=島下泰久 写真=島下泰久/トヨタ〉