●評価機材の紹介 / 3DMark

5月10日、AMDはRadeon RX 6000シリーズに新しくRadeon RX 6650 XT/6750 XT/6950 XTの3製品を追加する。このうち今回Radeon RX 6650 XT/6750 XTの2製品を試す機会に恵まれたので、簡単に性能をご紹介したい。

「+50」な新Radeonの実力をベンチマーク

今回発表になったのは以下の3製品(Photo01)。スペックをまとめたのが表1であるが、基本的にはNavi 21/22/23の最大構成ということで、CU数とかROP数などはそれぞれRadeon RX 6600 XT/6700 XT/6900 XTと変わらない。変更があったのは動作周波数とメモリ速度で、Radeon RX 6650 XTはGDDR6 17.5Gbps、6750 XT/6950 XTはGDDR6 18Gbps品がそれぞれ採用されている(*1)。価格はRadeon RX 6600 XT/6700 XT/6900 XTより若干引き上げられている(Photo02)が、競合製品と比較すると割安である(Photo03)としている。

■表1

Photo01: 6800 XTシリーズのUpdateが無いのがちょっと残念。6950 XTはGeForce RTX 3090 Tiへの対抗馬という位置づけだろう。

Photo02: ちなみに発表時のRadeon RX 6600 XT/6700 XT/6900 XTの価格はそれぞれ$379、$479、$999だった。

Photo03: 問題は性能としてどうか? というあたり。

気になる性能だが、今回はRadeon RX 6950 XTが入手できていないので、こちらに関するスライドは割愛。Radeon RX 6750 XTはGeForce RTX 3070対抗という位置づけであり、同等以上の性能でありながら安価(Photo04)。加えてRSR(Radeon Super Resolution)を使うと更に性能が伸びるとしている(Photo05)。一方Radeon RX 6650 XTはGeForce RTX 3060比で十分高速であり、かつ主要なゲームで60fpsをキープできるとし(Photo06)、RSRを使う事で更に性能の上乗せが期待できる(Photo07)とする。いずれの製品も米国時間の5月10日に発売という話だが、現時点で日本での発売予定とか価格などは明確になっていない(Photo08)。まぁこれは追々、情報が入ると思われる。

またこの3製品に合わせてリリースされるRadeon Software Adrenalin Edition 22.10では、いくつかのゲームで結構な性能向上が実現される、としている(Photo09)。

Photo04: GeForce RTX 3070が8GB Memory、大してRadeon RX 6750 XTは12GB Memoryでありながら安価、というのもアピールポイントの一つとされる。

Photo05: Super Scaling同士で比較しても十分競合できる、とする。

Photo06: 言うまでもなくこれは2Kでの話。解像度を上げると当然厳しくなる。

Photo07: とはいえ、元々の性能がそう高くないから、RSRでも大きな伸びは期待できない。

Photo08: 問題は現時点でRadeon RX 6950 XTの評価機材の話すら来ていないのに、本当にRadeon RX 6950 XTが発売できるのか? というあたりだろうか。

Photo09: ただこの21.50でそもそもRadeon RX 6950 XTが動作するのか? という話が。ちなみに評価時点での最新版は22.4.2で、ここから22.10でどの程度性能が向上しているのかは不明である。

(*1) 実はまだRadeon RX 6950 XTのみ、GDDR6 18Gbpsかどうかの確認が取れていない。現物がなく、AMDの資料はInfinity Cacheと併せての帯域が示されているので、ここから算出できないためだ。とはいえ、GDDR6 19Gbps品は量産出荷できるレベルでは無かったと記憶しているので、多分GDDR6 18Gbpsだと思う。

○評価機材

今回はAMDのReference Boardではなく、ASRockの製品を利用しての評価となる。まずRadeon RX 6650 XTの方はChallenger Radeon RX 6650 XT(Photo10〜16)。GPU-Zでの認識も特に問題はなし(Photo17,18)。一方Radeon RX 6750 XTの方はPhantom Gaming Radeon RX 6750 XT(Photo19〜27)。同じくGPU-Zでの認識も問題はなかった(Photo28,29)。

Photo10: パッケージは小柄で、かなり軽い。

Photo11: 2ファン構成。大口径ファンを搭載する関係で、背はやや高い。寸法は265mm×120mm×41mm、重量640.8g(いずれも実測値)。

Photo12: 背面はバックプレートが入っている。基板そのものはかなり小さいのが判る。

Photo13: 厚みは背面のバックプレートの分、厚みはあるがファン側はブラケットからはみ出さない程度。出力ポートはDisplayPort×3+HDMI×1。

Photo14: このアングルで、後端がかなり薄いのがお分かりいただけるかと思う。

Photo15: 補助電源は8pin×1。ファンのお蔭でちょっと奥まった位置になっている関係で、補助電源の着脱がやややり難い(まぁ普通は煩雑にするものでもないから実害は少ないが)。

Photo16: このアングルだとヒートパイプの配置が良く判る。

Photo17: 微妙にBase/Boost ClockがOC動作になっているが、さして大きな差ではない。

Photo18: Power Limit Adjustment Rangeは最大+10%なので、最大198W程度での動作になる計算。

Photo19: パッケージはChallenger Radeon RX 6650 XTより一回り大きく、重さも結構異なる。

Photo20: 3ファン構成。ちなみに中央のファンのみLEDで点灯する。何気にかなり大きめ。寸法は305mm×120mm×55mm、重量は1197.3g(いずれも実測値)。

Photo21: バックプレートはかなり大きめで、基板をはみ出してその先のヒートシンク部までカバーする構成。上に突き出している部分もかなりごつい。

Photo22: 出力ポートはDisplayPort×3+HDMI×1。ほぼ3スロット厚。

Photo23: 後方のヒートシンクもかなり大きめなのが判る。このアングルだと補助電源コネクタが見えない。

Photo24: その補助電源コネクタは8pin×2。

Photo25: 底面から。ヒートシンクがかなり分厚いのが判る。

Photo26: ブラケット部から。高さ、厚みともにかなりのものであるのが判る。Challenger Radeon RX 6650 XTもそうだが、小型のケースだと蓋が閉まらなそうである。

Photo27: 稼働時はこんな感じに点灯する。3ファン全部これだとかなり五月蠅い感じがするので、この程度で良かったという気も。ちなみにLEDスイッチ(Photo21で中央上側にある)をOffにすると完全に消える。

Photo28: こちらも動作周波数が若干上がっている(2495/2600MHz→2554/2623MHz)程度。

Photo29: Power Limitは最大+15%まで行けるので、287.5Wあたりまで上がる可能性がある。もうほぼほぼ、Radeon RX 6800 XTと変わらない感じ。

その他のテスト環境は表2の通り。今回は比較対象としてGeForce RTX 3060 Ti/3070、それとRadeon RX 6700 XTを用意した。ちょっと時間の関係もあり、GeForce RTX 3060 12GB版は用意できなかったが、概ねGeForce RTX 3060 Tiとの対比で考えれば評価できるだろう、と判断でのことである。

■表2

グラフ中の表記は

3060 Ti: NVIDIA GeForce RTX 3060 Ti Founder Edition

3070 :NVIDIA GeForce RTX 3070 Founder Edition

6650 XT: ASRock Challenger Radeon RX 6650 XT

6700 XT: AMD Radeon RX 6700 XT Reference

6750 XT: ASRock Phantom Gaming Radeon RX 6750 XT

としている。また本文中の解像度表記は、いつものように

2K :1920×1080pixel

2.5K:2560×1440pixel

3K :3200×1800pixel

4K :3840×2160pixel

とさせていただいた。

○◆3DMark v2.22.7336(グラフ1〜3)

3DMark v2.22.7336

UL Benchmarks

https://benchmarks.ul.com/3dmark

グラフ1

グラフ2

グラフ3

まずは3DMarkのOverall(グラフ1)を見てみたい。テストによって多少差はあるが概ね

Radeon RX 6650 XT < GeForce RTX 3060 Ti < Radeon RX 6700 XT ≦ GeForce RTX 3070 ≦ Radeon RX 6750 XT

という感じだろうか? スコアを見ると、Radeon RX 6700 XTとGeForce RTX 3070が同程度な場合と、GeForce RTX 3070とRadeon RX 6750 XTが同程度な場合が混在しているという感じであるが、Overallに関してはCPU性能も含まれており、今回の環境で言えば差が出にくくなっている(CPU自体は共通のため)。そこでGraphics Testの結果(グラフ2)を見ると、もう少し差が明確である。とはいっても先ほどの傾向そのものは変わらず、多少性能差が広まった程度でしかないのだが。あと上で言い忘れたが、WildLife〜TimeSpyまでの範囲では上の傾向が通用するが、TimeSpy ExtremeとPortRoyalに関してはRadeon系がGeForce系に明らかに劣っている。なんせRadeon RX 6750 XTのPortRoyalのスコアはGeForce RTX 3060 Tiより低いのだから、これはもう明確である。このRay Tracing周りの性能差は、Navi 2世代では如何ともし難いのかもしれない。

Physics/CPU Testは差が無い(実際差が無かった)ので割愛し、Combined Testの結果(グラフ3)を見てみても、まぁCPU性能は同じなので結果は大きく変わらない。Radeon RX 6950 XTとGeForce RTX 3070の2つの性能は解像度によって上下が変わるが、どのケースでも大きな性能差とは言えないあたりは、概ね同等レベルと考えて良いかと思う。逆にRadeon RX 6650 XTは確実にGeForce RTX 3060 Tiには劣るが、スコア差を考えると確かにGeForce RTX 3060には競合できる性能だろうと理解できる。

●ゲームその1:Borderlands 3 / F1 2021 / Far Cry 6 / Metro Exodus

○◆Borderlands 3(グラフ4〜10)

Borderlands 3

2K Games

https://borderlands.com/ja-JP/

設定方法はこちらのBorderland 3の項目に準ずる。全体的な品質は「High」である。

グラフ4

グラフ5

グラフ6

グラフ7

グラフ8

グラフ9

グラフ10

結果(グラフ4〜6)を見ると、上位3グループ(GeForce RTX 3070/Radeon RX 6700 XT/Radeon RX 6750 XT)と下位2グループ(GeForce RTX 3060 Ti/Radeon RX 6650)で綺麗に判れているのが目に付く。そして上位グループでは、2.5K位までは

GeForce RTX 3070 < Radeon RX 6700 XT < Radeon RX 6750 XT

が成立し、また下位グループでも2.5Kまでは

GeForce RTX 3060 Ti ≦ Radeon RX 6650 XT

が成立している。Photo01に(メモリ容量の下に小さく書かれている様に)、Radeon RX 6650 XTがFor 1080P、Radeon RX 6750 XTがFor 1440Pをそれぞれターゲットとしており、Borderlands 3の結果はこれを裏付ける結果になっている。逆に言えばこれを超える解像度になると、急速にGeForce RTX 3060 Ti/3070の性能がRadeon系を上回る事になっているが、どのみち3K以上はGeForce系を含めてターゲットから外れる事を考えれば、これはこれでアリだと思う。

フレームレート変動(グラフ7〜10)をみてもこの傾向が裏付けられる。2Kはちょっと変動が大きいが、それでもRadeon系が極端に大きなピークがあるという訳でもなく、一番激しいケースでも80fpsを割る事は無い。もう少し厳しい2.5Kになるとだいぶ変動もおさまって傾向が明確になるが、Radeon RX 6650 XTも2.5Kで現実的なフレームレートで描画が可能で、GeForce RTX 3060 Tiとほぼ互角、というのはなかなか優秀な結果ではないかと思う。3Kになると下位グループは結構厳しく、4Kでは上位グループを含めて厳しい結果であるが、このあたりはもうSuper Samplingを利用する範囲と考えて良いかと思う。

○◆F1 2021(グラフ11〜17)

F1 2021

EA Sports

https://www.ea.com/ja-jp/games/f1/f1-2021

ベンチマーク方法はこちらのF1 2022の項目に準ずる。設定は

Anisotropic Filtering:16x

Anti-Aliasing:TAA Only

Detail Preset:Ultra High

DXR:Medium

としている。

グラフ11

グラフ12

グラフ13

グラフ14

グラフ15

グラフ16

グラフ17

さて、結果(グラフ11〜13)を見ると、どうもRyzen系列の分が悪い。理由はなんとなく推察でき、Ray Tracingである。この結果として、解像度全域において

Radeon RX 6650 XT < Radeon RX 6700 XT ≦ GeForce RTX 3060 Ti < Radeon RX 6750 XT < GeForce RTX 3070

という関係が成立しており、これは最大フレームレートや最小フレームレートでもほぼ成立する。フレームレート変動(グラフ14〜17)を見てもこれは明白である。せめてもの救いと言えば、Radeon RX 6650 XTであっても2.5Kで十分Playableであり、Radeon RX 6750 XTは3K Playableな事だろうか? ただ競合製品より高速、というのはRay Tracingが入る限りは難しいという事実の再確認が出来た格好だ。

○◆Far Cry 6(グラフ18〜24)

Far Cry 6

Ubisofy Entertainment

https://www.ubisoft.com/ja-jp/game/far-cry/far-cry-6

ベンチマーク方法はこちらに準ずる。設定は

Quality:Medium

Antialias:TAA

DXR Reflections/Shadows On

としている。

グラフ18

グラフ19

グラフ20

グラフ21

グラフ22

グラフ23

グラフ24

さて結果(グラフ18〜20)を見ると、これもF1 2021に似た傾向である。やはりRay Tracingが足を引っ張っているようだ。ただRadeon RX 6650 XTは間違いなく一番遅い(といっても見る限り2.5K Playableの性能は確保できている)が、Radeon RX 6750 XTは2.5KまではGeForce RTX 3070をやや凌いで最高速のポジションを確保しているのは流石だが。

とはいえ、フレームレート変動(グラフ21〜24)を見ると、そのRadeon RX 6650 XTですら2.5Kまで60fps超えの性能を確保しているのは流石である。その2.5Kまで、Radeon RX 6750 XTもGeForce RTX 3070と同程度以上のフレームレートを出しているのはグラフ22からも明らかであり、その意味では十分頑張っているとは言える。

○◆Metro Exodus PC:Enhanced Edition(グラフ25〜31)

Metro Exodus PC:Enhanced Edition

4A Games

https://www.metrothegame.com/

ベンチマーク方法はこちらのMetro Exodus Enhanced Editionの項に準じる。設定はHighのプリセットをそのまま利用した。

グラフ25

グラフ26

グラフ27

グラフ28

グラフ29

グラフ30

グラフ31

こちらもまた、NativeでRay Tracingが有効になっている事もあり、Radeon系には厳しいベンチマークである。実際結果(グラフ25〜27)を見ると、

Radeon RX 6650 XT < Radeon RX 6700 XT < Radeon RX 6750 XT < GeForce RTX 3060 Ti < GeForce RTX 3070

となっており、またRadeon RX 6650 XTの成績は飛びぬけて低い。それでもRadeon RX 6650 XTは2Kで、Radeon RX 6750 XTは2.5Kで、それぞれ平均で60fps以上を記録しているから、一応1080P/1440P向けGPUとしての面目は立った格好だ。

ただフレームレート変動(グラフ28〜31)を見ると、2Kの場合にRadeon RX 6650 XT以外は75〜85秒近辺で60fps前後を維持できているが、Radeon RX 6650 XTは40fps強とちょっと厳しい状況になっているあたりは、RSRを併用してもう少し負荷を下げた方が実用的かもしれない。同様に2.5Kでは、何しろ一番性能の高いGeForce RTX 3070ですら75〜85秒近辺で60fpsを割り込んでいるので、Radeon RX 6750 XTもやっぱり50fpsを切っている程度になる。こちらももう少しRSRを使うなどして負荷を下げた方が、実際のプレイでは快適だろう。3K以上については、GeForce RTX 3070ですら(平均フレームレートはともかく)実際のプレイでは多分遅さを感じる事になると思うが、このあたりはもうその解像度で利用するにはもう少し上のグレードのGPUで、という話になる。

●ゲームその2:Shadow of the Tomb Raider / The Division 2 / Watch Dogs:Legion

○◆Shadow of the Tomb Raider(グラフ32〜38)

Shadow of the Tomb Raider

SQUARE ENIX

https://tombraider.square-enix-games.com/en-us

設定方法はこちらに準じる。QualityはHigh、Ray Tracing Shadowsは無効化している。

グラフ32

グラフ33

グラフ34

グラフ35

グラフ36

グラフ37

グラフ38

結果(グラフ32〜34)を見ると、やはりRay Tracingを無効化すると結構性能が上がる傾向が復活する...のだが、Radeon RX 6650 XTは今一つと言うのは、Infinity Cacheが飽和気味のせいなのかもしれない。一応結果で言えば

Radeon RX 6650 XT < GeForce RTX 3060 Ti < Radeon RX 6700 XT < GeForce RTX 3070 ≦ Radeon RX 6750 XT

という感じで、Radeon系の性能の高さが復活する格好だ。もっともその一番低いRadeon RX 6650 XTですら2Kで170fps、4Kですら67.1fpsを確保しているから、十分Playableではあるのだが。というか本来の競合がGeForce RTX 3060であることを考えれば十分な性能だろう。

フレームレート変動(グラフ35〜38)を見ると、やはりRadeon RX 6650 XTはGeForce RTX 3060 Tiに比べると若干の性能差があるが、それで困るか? と言われると3Kまではまぁほぼ困らない程度。流石に4Kは厳しいと思うが、本来2K向けのGPUである事を考えれば十分だろう。またRadeon RX 6750 XTは、4Kでこそ明確にGeForce RTX 3070に差を付けられているが、3Kはほぼ同等、2K/2.5Kでは明らかに上回っているあたり、AMDの謳い文句に嘘は無いとして良いと思う。

○◆Tom Clancy's The Division 2(グラフ39〜45)

Tom Clancy's The Division 2

Ubisoft

https://www.ubisoft.co.jp/division2/

設定方法はこちらの"Tom Clancy's The Division 2"に準ずる。QualityはHighとした。

グラフ39

グラフ40

グラフ41

グラフ42

グラフ43

グラフ44

グラフ45

結果(グラフ39〜41)を見ると、Ray Tracingはサポートしていないゲームながら、今一つRadeon系の性能が奮わない。結果としては

Radeon RX 6650 XT < GeForce RTX 3060 Ti < Radeon RX 6700 XT < Radeon RX 6750 XT < GeForce RTX 3070

という関係が2K〜4Kの全てで維持されている格好だ。とは言え絶対性能としては一番低いRadeon RX 6650 XTでも2Kで160fps、2.5Kで103fpsだから十分といえば十分である。またRadeon RX 6750 XTも、GeForce RTX 3070にはやや及ばないまでもRadeon RX 6700 XTは明確に上回る性能を維持している。

ただフレームレート変動(グラフ42〜45)を見ると、Radeon RX 6650 XTはともかく、Radeon RX 6750 XTの方は2K/2.5K共にGeForce RTX 3070と結構グラフが絡んでおり、同等とは言わないまでも大きな性能差を感じられるか? と言えば結構微妙なところではないかと思う。明確に性能差があるのは3K/4Kであるが、ただその4KですらRadeon RX 6750 XTの最小フレームレートは58fps強と結構な性能を維持できており、性能的には悪くないと判断できる。

○◆Watch Dogs:Legion(グラフ46〜52)

Watch Dogs:Legion

Ubisoft

https://www.ubisoft.co.jp/wdlegion/

ベンチマーク方法はこちらの"Watch Dogs:Legion"に準ずる。ちなみに設定は

Quality:High

RT Reflection:Off

とした。

グラフ46

グラフ47

グラフ48

グラフ49

グラフ50

グラフ51

グラフ52

結果(グラフ46〜48)を見ると、こちらはRadeon系列が非常に高い性能を出している。なにしろ2Kのみで言えば

GeForce RTX 3060 Ti < Radeon RX 6700 XT ≦ Radeon RX 6650 XT ≦ GeForce RTX 3070 < Radeon RX 6750 XT

という、「どうしてこうなった?」と言わんばかりの結果になっているからだ。ただやはりRadeon RX 6650 XTはInfinity Cacheの容量不足のためか、2.5K以降では急速に性能を落としている。とはいえRadeon RX 6750 XTは2.5KまではGeForce RTX 3070を圧倒しているから、2.5K向けGPUとしては十分な性能として良いかと思う。

フレームレート変動(グラフ49〜52)でもこれは確認できる。2KではRadeon RX 6750 XTが飛びぬけており、その下で残り4製品が競っている格好だが、Radeon RX 6650 XTとGeForce RTX 3070が絡み合いながらほぼ同等、というのはなかなか不思議である。2.5Kになると一気にRadeon RX 6650 XTは性能を落とすが、それでも最小フレームレートは52.8fps(恐らく70秒ちょい前の下向きピーク時)。殆どのケースで80fpsを維持しているから、これは十分Playableだし、Radeon RX 6750 XTも明確に他に差をつけてトップである。

Ray Tracingが無ければ、Radeonシリーズは十分GeForce RTXと互角に戦えるという証明になっているような結果であった。

●PCMark 10 / 消費電力 / 評価まとめと考察

○◆PCMark 10 v2.1.2535(グラフ53〜58)

PCMark 10 v2.1.2535

UL Benchmarks

https://benchmarks.ul.com/pcmark10

性能ベンチマークの最後はPCMark 10で、一応2Dアプリケーションで性能差が無い事の確認である。ついでに言えばOpenCL周りの性能の間接的な確認も出来るからだ。

グラフ53

グラフ54

グラフ55

グラフ56

グラフ57

グラフ58

Overall(グラフ53)を見ると、まぁドングリの背比べである。Test Group(グラフ54)で見ると、当然Gaming(3DMark FireStrike)のみ明確な差があるが、それ以外は誤差の範囲といったところ。Essentials(グラフ55)のApp StartupはGPU性能差には無関係だし、その他は誤差の範囲。Productivity(グラフ56)のSpreadsheetsの結果は、OpenCLを使う関数2つでGeForce系列の方が高速になっている

が、同じOpenCLでも次のグラフ57のPhoto Editingの場合には

という具合に、むしろRadeon系列の方が高速で、そう考えるとどっちが高速とも俄に言いにくい。最終的にはOverallで殆ど変わらない、という事は均すと同等、という判断で良いかと思う。

Application(グラフ58)でもExcelのみ妙にバラけるが、その他はほぼ同等である。で、バラける要因であるが、殆どは誤差の範囲。違うのは

の2つ。CopyCompute2の方はCPUでの計算処理でGPUにはあまり関係なく、これは誤差の方だと思うが、Resizeは2Dの再表示処理が入り、ここでなぜかRadeon RX 6750 XTの性能が悪い。ただResizeはWordとかPowerPointなどでもあり、こちらはほぼ同等になっている辺りは、別にRadeon RX 6750 XTの性能が低いという訳でもなさそうだ。あまり深くこの差の理由を追い求める必要は無い様に思われる。

○◆消費電力測定(グラフ59〜64)

最後に消費電力を比較してみたい。今回は

3DMark FireStrike Demo(グラフ59)

Borderlands 3 2K(グラフ60)

F1 2021 2K(グラフ61)

Metro Exodus PC Enhanced Edition 2K(グラフ62)

Shadow of the Tomb Raider 2K(グラフ63)

Tom Clancy's The Division 2(グラフ64)

の6つの消費電力変動を測定。それぞれの稼働時平均消費電力と待機時電力をまとめたのがグラフ65、待機時電力との差を計算したのがグラフ66となる。

グラフ59

グラフ60

グラフ61

グラフ62

グラフ63

グラフ64

さて、一見して判るのがRadeon RX 6750 XTの消費電力の多さと、Radeon RX 6650 XTの消費電力の低さである。今回利用した3枚で言えば、定格は

という事になっており、まぁほぼこの定格の消費電力の順に消費電力が増えている感じではあるのだが、Radeon RX 6750 XTに関してはOCモデルという事もあってかもう少し引っ張っている感じで、Radeon RX 6700 XTとの差から考えると実際は280W近くになっている様に思える。先にPhoto29で示されている様に、定格の15%増しまで電力増加を許す設定になっており、なので実質300W近いと考えるべきだろう。

性能/消費電力比で考えれば勿論Radeon RX 6650 XTとかGeForce RTX 3060 Tiの方が好ましい訳だが、今度はそれなりに性能も落ちる事になる。ちなみにAMDのガイドラインによれば、Radeon RX 6650 XTを使う場合は500W電源、Radeon RX 6750 XTを使う場合は650W電源が推奨とされる(Radeon RX 6950 XTは850Wだそうだ)。このあたりは性能と消費電力のどちらを優先するか、次第かと思う。

○考察 - 性能は十分、趨勢は市況次第

まずRadeon RX 6650 XTについて。多分GPU Clockの向上よりもMemory Clockの向上の方が性能に効果的に効いている様に思うが、GeForce RTX 3060 Tiとしばしば互角の成績を出しているあたりはちょっと驚きで、GeForce RTX 3060との比較であれば十分競合できる性能だと思う。「ただし2Kに限る」というのはもうNavi 23の弱点である「Infinity Cacheが32MBしか無い」に関しての強化はもはやどうしようも無いわけで、あくまで解像度は2Kで十分、というエントリモデルのGaming向けには手頃な製品と言えるだろう。

ついでRadeon RX 6750 XTについては、確かに2.5Kまででは結構な性能で、GeForce RTX 3070と互角上のシーンも多々見受けられるのだが、このクラスだともう少しRay Tracingでの性能が欲しかったところ。とは言え、それをNavi 22に求めても無理な話で、Navi 3世代以降に期待したいところ。逆に言えばRay Tracingはいいや、というユーザーにとっては中々お手頃である。ものによっては4Kまでのプレイも可能だし、2Kでいいならかなり解像度を上げても十分利用できるだろう。

気になるのは流通量と価格である。やっと最近になって、GPUの価格高騰が収まってきたようで、割と現実的な価格で入手可能になってきた。ということはGeForce系列も、以前の「明らかに割高」から「割安感は無いが、リーズナブルな価格」で入手できるわけで、その値段の落ちたGeForceと競合できるだけの値付けがなされ、かつ十分な数量が流通するのか? が一番の関心事である。

AMD/NVIDIA共に、次世代製品の投入までにはもう少し時間が掛かる(現実問題として今年末〜来年頃だろう)。そこまで待てない方の繋ぎとして、製品ラインナップが増える事そのものは歓迎したい。ちゃんと出れば...であるが。