子どもの恋愛・結婚に“親ガチャ”は影響する?(写真はイメージです)

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 子どもは、親を選ぶことができません。どんな親の元に生まれるかわからない。それを、お金を入れると何が出てくるかわからないカプセルトイの“ガチャ“に例えて、“親ガチャ“という造語が生まれ、最近ネットニュースなどで話題になっています。また、どんな親の元に育ったかは、その後の恋愛観や結婚観に大きな影響を与えます。仲人をしながら婚活現場に関わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、さまざまはテーマ別に考えていく連載。今回は、親子関係と結婚観について考えていきましょう。

恋愛できないのは、両親のせい

 先日、都内でOLをしている31歳のまゆこさん(仮名)が、入会面談にやってきました。面談ルームで、開口一番にこんなことを言ったのです。

「歳を考えたら、そろそろ結婚をしないといけないと思うのですが、今まで一度も男性とお付き合いしたことがないんです。どちらかといえば、男性は、避けて生きてきたので、異性を好きになる感情がわからない。こんな私でも、結婚できるでしょうか」

 なぜ、男性を避けて生きてきたのか。それは、育ってきた環境にあると言います。

「私が小学校に入学する前に、両親が離婚したんです。母は、父の両親と同居していたのですが、離婚して私が大人になるまで何かにつけて、『結婚していたときは、地獄だった』という話をしていました。父は、些細なことでキレて暴力を振るう人でした。私も幼な心に、母が父に殴られているのを見た記憶があります。祖母は、父が母を殴っていても、見て見ぬ振り。母が逃げようとすると祖父が前にはだかって、逃げ道を塞いていた。離婚をして、母と2人暮らしになりましたけど、そんな話を何かにつけてされるので、男の人がすごく怖い存在に思えていました」

 それなのに、なぜ婚活をして結婚しようと思うようになったのでしょうか?

「コロナが蔓延したことが大きいです。私、不要不急の外出をなるべくしないようにしていました。私が外で感染したら、母にうつしてしまう。母は、基礎疾患があるんです。もしもコロナになって死んでしまったとしたら、私はひとりぼっちになる。そう考えたら、絶対にコロナにかかれなかった。そして、母の死が現実にいつかは起こりうることとして考えたら、急に心細くなって、人生を一緒に過ごせるパートナーが欲しいと思ったんです」

 そして、入会後にまゆこさんはお見合い婚活を始めたのですが、どうしても恋愛を頭で考えてしまう傾向にありました。これは恋愛経験のない方の特徴です。自分を素直に開示できずに、頭で考えた答えを出してしまうから、お付き合いに入っても1、2度会うと、“この相手は自分とは合わない”と感じて、交際を終了にしてしまうのです。

 ただ何事も経験です。お見合いの回数をこなしていくうちに、男性と対峙してお話ししたり、お食事したり、デートしたりすることにも慣れていくでしょうし、そんなときに波長の合う男性が出てきたら、好きになると思うのです。時間はかかるかもしれませんが、お見合いで出会い恋愛する楽しさやドキドキ感を知って、そこから結婚に向かっていってほしいなと思っています。

男にだらしない母親が反面教師

 さちえさん(30歳、仮名)には、26歳のときから4年お付き合いしていた男性がいました。30歳を目前にして、“そろそろ彼と結婚したい”と思っていた矢先に、その恋人から、フラれてしまいました。フラれた原因は、彼の心変わり。3か月前に婚活アプリで出会った女性とさちえさんを二股にかけ、結局新恋人を選んだのでした。

 入会面談に来たさちえさんは、時折涙をこぼしながら言いました。

「私の母は、男性にだらしない人でした。小さかったときに母に連れられて出かけ、父ではない男性とファミレスでご飯を食べた記憶もあります。その男性が、ときどき変わるんです。それが、浮気相手だったとわかったのは、小学校中学年のころでした。私が家で1人で留守番できる年齢になると、母はだんだん私を連れて行かなくなりました。それからは深夜帰宅したり、帰ってこなかったりが続き、とうとう離婚になりました」

 離婚は、さちえさんが中2のときだったと言います。

「父は、母の浮気を知っていたと思います。夫婦でどんな話し合いをしていたか、私はわからないけれど、母の帰りが遅いときには、父が夕食を作ってくれました。そんな優しい父を置いて、私のことも放っておいて、男性に走っている母が腹立たしくてならなかった」

 離婚後、母親はほかの男性と暮らし始めたそうです。

「そんな母を見て育ちましたから、私は、自分が好きになった男性は裏切りたくない、大切にしたいと思っていました。だから、彼と4年お付き合いしていたときも、ほかの男性に目移りすることもなかった。彼だけを見て、彼だけを大事にしていたんです。それなのに浮気されちゃって。私が、『あなただけしか見ていなかったのに』と言ったら、『そういうところが重くて嫌なんだよ。これまでも、たまに浮気していた』っていうんです。父が母からされたことを、私は恋人からされたんですよね。正直者がバカを見るというか」

 そして、こう続けました。

「私が結婚に望むものは、パートナーを大事にできるごく普通の生活です。口先だけの調子のいい男性ではなく、ひとりの人を大事にできる男性を探したいです」

 さちえさんは、見た目にこだわるよりも、とにかく誠実な男性を探したいと、今は、果敢にお見合いに取り組んでいます。世の中には、平気で浮気や不倫をする人たちもいますが、ひとりの人を大切にして生涯愛し続ける人もいます。さちえさんには、後者の男性に巡り会ってほしいなと思います。

母親にいつもダメ出しをされながら育った

 あきえさん(41歳、仮名)は、婚活をして半年になります。真剣に婚活をしていると、疲れが出てくる時期です。あきえさんが、3度ほどデートをして、いいなと思っていた男性から、先日交際終了が来ました。そのお断りの理由がこうでした。

「“私なんか”が口癖で、自分に自信のない発言が多くて、結婚しても楽しい時間を過ごすことができないと感じました」

 あきえさんは、有名私大を卒業後に公務員になり、年収も安定していました。とても優秀な人なのに、私と面談しているときも、ネガティブな発言が目立ちました。また婚活がうまくいっていなかったので、さらにネガティブ発言が多くなっていたのでしょう。

 交際終了が来たことを伝えたあとに、私はあきえさんに言いました。

「婚活に一番大事なのは、マインド設定なんですよ。生きていれば、何か問題にぶつかりますよね。そのときに、ポジティブに考える人は、1歩前に進める。ネガティブに考える人は、1歩後ろに下がるんです。そして、何か問題が起こる度にそれを繰り返していくと、ポジティブな人は前へ前へ、ネガティブな人は後ろへ後ろへと下がっていくから、人生に大きな差が出てしまうんですね。

 婚活もそうですよ。前向きに考えている人は、いい結果が出なくても気持ちを切り替えてどんどんお会いしていくので、ご縁を引き寄せられるんです。でも、マイナス思考の人は、ひとつの失敗にクヨクヨしていて、後ろ向きな気持ちを抱えてお見合いに行くから、暗い雰囲気しか出せない。そして、発言もネガティブになる。そうなると、いい波がきていても、ご縁が素通りしてしまうんですよ」

 こういう私に、あきえさんは、言いました。

「母が幼いころから私に、ダメ出しばかりする人だったんです。テストで70点を取ると、『どうしてこんな悪い成績なの』、90点を取ると、『なんで100点が取れなかったの?』と。良くても悪くても、否定されるんです。そういう母に育てられたから、私どこかで自分に自信が持てなくなったのだと思います」

 あきえさんは、自分がネガティブ思考であると分かっていました。でも、その考え方が辞められないのです。そこで、私はこんなアドバイスをしました。

「ネガティブな感情を抱いたら、いったんそれは自分の中で受け止める。紙に書いてみるのもいいですよ。そして、それがどうしたらプラスに転換できるのか、その方法を考えてみたらいいんじゃない? あと、物事ってどの角度からそれを考えるかで、プラスにもとらえられるし、マイナスにも考えることができると思うんです。

 例えばドライブデートで、渋滞にハマったとしますよね。“お昼前に目的地に着けると思っていたのに、ついてないな”と思ってしまったら、まずはその感情を一度自分で受け止める。で、そこから“あ、でも、渋滞に巻き込まれたおかげて、車の中で話す時間がたくさんできたわ。いい機会だから、彼の結婚観をじっくり聞いてみよう”と思えば、渋滞もポジティブに捉えられるようになるんじゃない?」

 私の言葉は、あきえさんにどこまで響いたかわかりませんが、今も婚活を続けています。結婚できる人は、どういう人かというと、諦めずに会い続けた人です。あきえさんもお見合いを続けていくうちに、結婚できるお相手に巡り会えるはずです。

 識者によると、性格は、生まれ持った気質(遺伝)と育った環境によって形成されるのだそうです。ならば、親の影響は絶大です。ただ個々が意思ある大人なのですから、自分の性格とうまく向き合いながら、自分に合った結婚相手を探せばいいのではないかと思っています。

鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。新刊『100日で結婚』(星海社)好評発売中。公式サイト『最短結婚ナビ』 YouTube『仲人はミタチャンネル』