「デジタル変革」は農村活性化の切り札になるか
日本の農業は高齢化と後継者難でなり手が見当たらず、じり貧傾向―。一般的な国内農業のイメージだろう。だが、実際には農業産出額は2016年度まで3年連続で増加し、反転の兆しが見え始めている。政府が進めてきた農地集積による大規模化と法人化、6次産業化の支援などが実を結びつつあると、日本総研は見る。
日本総研も農業者への提供を目指し、栃木県茂木町で農業ロボット「MY DONKEY」の実証を進めている。中央のベースモジュールにさまざまなアタッチメントを接続することで、キャベツの肥料やりからトマトの収穫など、異なる作物の作業に対応。年間稼働日数が数日で、採算が取れない問題を解決し普及を狙う。タイヤの駆動部も作物によって変更が可能で、作業する農業者の後をついて自律走行する追従機能を備える。
DONKEYには田畑を走行した際の作業履歴や作物の収穫情報などが取得できるようになっている。得られたデータを田畑ごとの1メートル四方メッシュで分析し、フィードバックすることで新人就農者でもできる農業環境へつなげる。データ活用の流れを、さらに農村社会全体の活性化へつなげるのが次のステージだ。
例えば、高齢ベテラン農業者の作業データをDONKEYに記憶させることで、熱中症の早期検知やシニア向けサービスのプラットフォームに活用する。ドローンの空撮対象を利用農家の田畑だけに限定せず、道路・用水路などのインフラモニタリングやイノシシなど害獣モニタリングに広げ、小水力発電やバイオマス発電などの電力をDONKEYやドローン充電に使う。
道の駅などに農産物を届けたトラックが、帰りの空状態の荷台に近隣住民向けの宅配荷物を運べば、配送頻度の適正化やコスト削減につながるとする。
ただ現実には、官民や省庁の垣根や規制など多くの難題が横たわる。農村デジタルトランスフォーメーションの実現に向け、輸送と農業、電力など行政の枠を超える規制緩和や特区の扱いがカギを握る。
(文=編集委員・嶋田歩)
