野村ホールディングス(HD)が経営破綻した米証券大手リーマン・ブラザーズのアジア太平洋、欧州中東部門を買収したニュースは、中国で大々的に報道された。さらに、三菱UFJフィナンシャル・グループがモルガン・スタンレーを救済するために同社株を取得、中国の金融界を震撼させた。しかし、実のところ中国では日本の金融機関のプレゼンスは弱く、名前すら知られていないのである。

「アメリカ金融企業を底値で買う日本企業」

   中国の経済エリートに影響を与える経済誌『財経』には、メリル・リンチ、モルガン・スタンレーなどのアメリカ系金融機関のエコノミストに常にコラムを書かせている。また、投資セミナーなどに行くと、基調演説を担当するのは全員アメリカ系金融機関の人間だ。一方、日本の銀行、証券会社のエコノミストは、ほとんど名前を知られていない。それどころか、日本のトップ金融機関の「社名」ですら「無名」なのだ。

   そうした中で、アメリカ金融企業の救済に打って出たのは、中国ではほとんど名前を聞いたことがない野村證券、三菱東京UFJ銀行みずほ銀行だった。

   「アメリカ金融企業を底値で買う日本企業」といったタイトルは、経済紙だけでなく、大衆の読むタブロイド紙にまで踊っていた。

   中国でもっとも発行部数の多い『環球時報』の経済担当のデスクは、

「日本の金融機関については、三菱銀行、住友銀行ぐらいは知っているが、証券会社については正直に言ってわからないし、記事にしてもあまり読者がぴんと来ない。今回のアメリカ金融危機の際、何で日本が救済に出たかよく理解できない」

J-CASTに明かす。経済のプロであるデスクさえもこんな状態なのだ。

日本の金融力をどう使うか、という点では注目

   しかし、今回の金融危機の処理には、以前のアジア金融危機のような、中国の出番はなかった。加えて10月10日以降、平均株価指数が暴落。1989年に三菱地所がロックフェラービルを買収し、その後撤退したように、野村HDのリーマン買収も、その二の舞とならないのか、さらに日本の証券企業、銀行は果たして実力があるのか。中国の代表的な経済紙である『21世紀経済報道』は、10月14日付けの記事で疑問を問いかけていた。日本金融の実態も先行きの行方も、中国にはまだよく分からないのだ。

   もっとも、突然評価された日本の金融力をどう使うか、という点では注目が集まっている。中国社会科学院金融研究所の孟祥昇博士は、J-CASTの取材に答えて、

「世界金融が危機に直面しており、中国が以前のアジア通貨危機の時と同様、大国の責任を果たす場合、むしろ日本と協力して出て行くべきだ。われわれは内々それを議論した」

と、日本への期待を込めてこう話す。

(J-CAST北京支局)

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