宮根誠司

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共演者にも大人気

 日本テレビ系の情報番組「情報ライブ ミヤネ屋」(平日午後1時55分、制作・読売テレビ)の後継番組のMCを、読テレの黒木千晶アナ(32)が務めることが正式に発表された。地元・関西では祝福の声が相次ぎ、共演者たちもわがことのように喜んでいる。なぜ、黒木アナはこれほど愛されるのか。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

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【写真】ミニ丈ワンピから美脚スラリ…「新人時代」の黒木アナ

 黒木アナは2021年から、社会派トークバラエティー「そこまで言って委員会NP」(関東未放送、日曜午後1時30分)で議長を務めている。つまり司会役である。橋下徹・元大阪府知事(57)や舛添要一・元東京都知事(77)ら論客が時事問題などを語る番組だ。

宮根誠司

 同番組には中国問題のエキスパートである近藤大介氏も出演している。講談社特別編集委員で明治大学講師だ。近藤氏に黒木アナの新情報番組のMC就任について尋ねると、「黒木さんなら適任。宮根誠司さんの後を継げる」と太鼓判を押した。

「私は在京局も含め、十数年前からテレビに出演していますが、黒木さんの才能や魅力は女性アナの中でも群を抜いています。モノが違います」(近藤氏)

 黒木アナがほかの女性アナと異なる点は多い。その中でも最大の特徴は、卓越した番組進行力だ。

「そこまで言って委員会NP」に登場する橋下氏や舛添氏、吉村洋文・大阪府知事(51)らの議論は時にヒートアップする。それでも混乱に陥らないのは、出演者が例外なく黒木アナの采配に従うからだ。出演者は、それが自分にとっても番組にとっても最善だと分かっているのである。

「黒木さんはオーケストラの名指揮者のようなものです。収録中、誰かが話している時に、ほかの出演者が発言したそうな素振りを見せると、黒木さんは目で合図して適切なタイミングを伝える。その人の話が終わると、次に振るべき相手を瞬時に判断するのです」(近藤氏)

 青山学院大学時代に演劇に打ち込んだ経験も役立っているのかもしれない。舞台では共演者全員に目を配る力が求められる。

 進行のうまさを示すエピソードはこれだけではない。例えば橋下氏の言葉がやや辛辣になると、「そんなことばかり言うから大阪で嫌われるんですよ」と笑いながらたしなめる。

 一方、吉村氏の発言が控えめだと、「東京では放送されていないので、国のこととか言いたいことを言ってください」と発言を促す。いずれもアドリブである。

 黒木アナがきついことを言っても、論客たちは不愉快そうな顔一つしない。むしろ笑って受け止める。黒木アナの人望の厚さがうかがえる。「出演者全員が『黒木家の人々』になっています。みんな黒木さんと家族のような感覚なんです」(近藤氏)

抜群の人柄

 この番組の司会が前任の辛坊治郎氏(70)から黒木アナに代わった時のことを、近藤氏は今も忘れられない。

「収録前に控え室へ入ると、私宛ての手書きの手紙が置いてありました。黒木さんからでした」(近藤氏)

 手紙には「今後よろしくお願いします。中国問題について私はまだ分からないことが多いので、教えてください」などと書かれていた。近藤氏の著作も読み込んでおり、その内容にも触れていたという。

「驚きました。共演者に手紙を書く女性アナなんて、聞いたためしがありません。その後、控え室にも挨拶に来てくれました。手紙と挨拶は私だけでなく、初めて共演する人全員に行っていた」(近藤氏)

 スター然とした女性アナも少なくないだけに、近藤氏が意外に思ったのも無理はない。黒木アナが共演者に取り入ろうとしたと受け止める人もいるかもしれないが、当の共演者たちはそう思わない。黒木アナの気配りは誰に対しても一貫しているからだ。

「この番組は視聴率が高い『お化け番組』なので、出演者によってはガチガチに緊張する。すると黒木さんはいつの間にかその人たちに向かって、『素敵なお召し物ですね』などと世間話を始めて、緊張を解いていく。本番前に話し掛けるのは200人ほどの一般視聴者の観客に対しても同じで、そうしてスタジオを一体化させます」(近藤氏)

 司会者が自ら観客に話しかけて、スタジオの空気を温めることは、まずない。テレビカメラはタレントやアナウンサーの人柄まで冷徹に映し出す。黒木アナが関西で絶大な人気を誇るのもうなずける。

 黒木アナは、2016年の入社から今年3月まで、関西ローカルの大型情報番組「かんさい情報ネットten.」(平日午後3時50分)で、サブMCとMCを務めていた。同番組では天秤棒を使って米俵を2俵担いだこともある。顔を真っ赤にして踏ん張っていた。

 お笑いタレントのブルゾンちえみ(現・藤原しおり)のメイクや衣装を完璧に再現したこともある。「お面をかぶることもありましたね」(近藤氏)。また、すっぴんでも平気でカメラの前に立つ。飾らないのである。

 2022年に読テレの先輩社員と結婚したが、人気はまったく衰えなかった。容姿や独身であることを売り物にして支持を集めてきた人ではないからだ。

 一方で頭の回転は速く、勉強熱心でもある。「かんさい情報ネットten.」でも共演していた近藤氏は、こんなエピソードも明かす。

「本番直前に、中国問題について的を射た質問を矢継ぎ早にしてくる。放送中以外の場で質問してくる女性アナは、ほかに知りません。しかも黒木さんは聞いたことを本番でビシッと生かす。普段から勉強を積んでいるので、核心を突く質問をしてきますし、飲み込みも早い」(近藤氏)

進化が止まらない女性

 近藤氏は、黒木アナの進化が止まらないことも特筆すべき点として挙げる。「そこまで言って委員会NP」の司会も、当初こそ危なっかしい面が見られたが、瞬く間に番組の中心的な存在となった。

「決して悪いことではありませんが、多くの女性アナは長年、あまり変化しません。ところが黒木さんはどんどん成長する。まるで『黒木千晶アナの成長物語』があり、それが今も進んでいるようなんです」(近藤氏)

 近藤氏は黒木アナを「10年に1人、出るか出ないかの逸材」と評する。民放関係者の間には「向こう10年、黒木アナが女性アナの中心的存在になる」との見方もある。SNSでも絶賛する声が目立ち、「(TBSの)安住紳一郎アナと同じくらいすごい」(20日の投稿)という意見も見られた。

 視聴者の求める女性アナ像が変化していることに気づかされる。2010年ごろまで主流だったのは、知性と美貌を兼ね備えた女性アナだった。難関大学のミスコンテストでグランプリを獲得した女性アナも少なくなく、高い人気を集めた。

 だが、現在は違う。視聴者が求めているのは、親しみやすさと共感力を備えた女性アナである。その流れを決定づけたのが、2010年に日本テレビへ入社した水卜麻美アナ(39)だった。

 水卜アナは高い知性を備えた和風美人だが、支持されている理由は親近感と、出演者や視聴者に寄り添う姿勢にある。現在は朝の情報番組「ZIP!」(平日午前5時50分)のMCとして番組を支えている。

 同じ系譜にあるのが、NHK出身の有働由美子アナ(57)だ。2018年にフリーへ転身すると、たちまち引っ張りだことなった。

 NHK時代には、アナウンサーとして初めてアメリカ総局特派員を務めた知性派だが、それをひけらかすことはない。やはり和風美人ながら、容姿も前面には出さない。親しみやすく、視聴者との距離を感じさせない人物である。現在はテレビ朝日の情報番組「有働Times」(日曜午後8時56分)のMCなどで活躍している。

 黒木アナは水卜アナ、有働アナと同じ流れをくむ。おそらく現在の視聴者が求める女性アナ像を最も体現した存在なのだろう。今、視聴者が求めているのは、高嶺の花ではなく、身近に感じられる女性アナなのである。

 黒木アナは在京キー局の入社試験も受けたが、すべて不合格だった。それでも読テレは採用を決めた。決め手となったのは、年配の視聴者にまるで「孫」のような親しみを抱かせる人柄にあったという。

 人柄を最重要視したことが黒木アナという人気者を生んだ。他局の採用方針にも影響を与えるのではないか。ほかの業種もそうだが、もう知性や容姿ばかり重んじる時代ではない。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社。放送担当記者・専門委員として、1994年のNHK連続テレビ小説「春よ、来い」のヒロイン途中交代や、1999年のフジテレビ「愛する二人別れる二人」のやらせ問題などを特報する。2015年に毎日新聞出版へ入社し、サンデー毎日編集次長を務める。編集者としては「小池百合子都知事の真実」などを担当した。2019年に独立。元・放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部