日持ちするメロンの開発に取り組む今井博士(左)ら(茨城県つくば市で)

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 日持ちする高級メロンを海外へ――。

 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)などは、ゲノム編集技術で熟成を抑え、長持ちするマスクメロンを開発した。収穫後1か月以上腐らず、食べ頃も自在に調整できる。長距離輸送による輸出拡大が期待され、2029年にも市販される見通しだ。(つくば支局 吉村悠)

 お中元などに重宝されるメロンは収穫後、急速に熟し、1週間程度しか日持ちしない。このため、長距離輸送や輸出に不向きとされ、生産者らから改良を求める声があがっていた。

 メロンは収穫後、ガス状の植物ホルモン・エチレンを放出して軟らかく甘くなり、その後、傷みが進む。農研機構と筑波大の江面浩特任教授、同大発の新興企業「サナテックライフサイエンス」の研究チームはエチレンの生成に必要な遺伝子に着目し、発芽した芽の先端に酵素を打ち込む独自のゲノム編集技術で、その働きを抑えた。

 するとエチレンはほとんど発生せず、収穫後1か月以上過ぎても皮は緑色で、果肉は硬いままだった。反対に、収穫1週間後に丸1日メロンをエチレンにさらすと、3日後に完熟した。

 生産者は出荷時期を柔軟に決められる。流通業者も船便の活用で輸送コストを抑制できる利点がある。国内では人口減や農家の担い手不足により、メロンの消費量や収穫量は減少傾向だが、香港やシンガポールなど海外では人気で輸出量は伸びている。21年には米国への本格輸出が解禁されたが、コストの高い空輸に頼らざるを得ず、生産量が国内トップの茨城県でも米国輸出額は70万円程度(2025年度)だ。

 農研機構の今井亮三博士は「糖度や果汁量、食感に影響はなく、より新鮮な状態のメロンを市場に届けられる。“長持ち”で廃棄リスクも軽減できる」と説明した。江面特任教授は「日持ちと品質の両立が可能となり、日本産メロンを海外でより多くの人に味わってもらえるのでは」と話している。

 茨城県鉾田市の石田和徳さん(66)は40年以上、メロン農家を続けてきた。農園では約30棟のハウスで年間約33トンのメロンを生産しているが、輸出は米国向けに例年200キロ程度にとどまる。石田さんは「日持ちするようになれば輸出しやすくなるし、国内向けでも需要の多い夏にたくさん出荷できるようになる」と期待を寄せる。

 開発したメロンは、国への届け出や農家による試験栽培などを経て、3年後をめどに販売を目指す。需要が見込めれば、マスクメロン以外の品種への技術活用を拡大する。

 大阪公立大の小泉望教授(植物分子育種学)は「メロンのゲノム編集はあまり例がなく、日持ち期間をのばした成果は画期的だ」としたうえで、「実から種が取れるため、市販後の技術流出を防ぐ手立ても必要となる」と指摘した。

ゲノム編集 応用進む

 ゲノム編集は狙った遺伝子を切断し、書き換える技術だ。従来の品種改良が完成まで数年〜数十年かかったのに対し、1年〜数年程度での開発も可能となる。

 これまで、成長速度が速いトラフグや食べられる部分がより多いマダイなどがゲノム編集で生まれた。医療分野でも応用研究が進む。

 安全性について、消費者庁は品種改良と同程度としている。品種改良は異なる特徴の品種を掛け合わせ、遺伝子に突然変異を起こす。遺伝子の切断も、自然界では突然変異として日常的に起きているという。

 一方、遺伝子組み換えは、ほかの作物の遺伝子を組み込み、新しい性質を持たせる技術だ。アレルギー物質や毒性が生じる恐れもあり、国内では輸入、製造、販売にあたって安全性審査が義務づけられている。