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ドラマや映画によく登場する「警視庁公安部外事課」。「聞いたことはあるけど、具体的なイメージが湧かない…」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。日曜劇場『VIVANT』の監修を務めた元警視庁公安部外事課の勝丸円覚さんは「公安警察の活動は、人々に称賛されることも評価されることもほとんどない。それでも彼らは、来る日も来る日も地べたを這うような地道な任務を続けている」と語ります。そこで今回は勝丸さんの著書『警視庁公安部外事課 スパイ・テロを水面下で阻止する組織の実態』より一部を抜粋し、知られざるインテリジェンス(諜報)の世界をお届けします。

【書影】日曜劇場『VIVANT』(TBS系)公安監修が伝える知られざるインテリジェンスの世界。勝丸円覚『警視庁公安部外事課 スパイ・テロを水面下で阻止する組織の実態』

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公安警察と一般の警察との違い

警視庁公安部外事課の仕事を理解していただくにあたり、まずは「公安警察」という組織そのものについて述べてみたい。

公安警察とは、どんな組織なのか?

それは、簡単に言えば「日本の治安を維持するため日々任務を行なう警察のセクション」ということになる。

その点で、一般の警察となんら変わりはない。

ただ、一般の警察と公安警察との決定的な違いは「取り締まる対象が異なる」ということだ。

一般の警察は「市井の人々を脅かす犯罪」や「生活に害を及ぼす行為」を取り締まるのに対し、公安警察は「公共の安全に対する犯罪」や「反社会的な活動」をおもな対象とする。

いわば、ミクロの目線から日々の市民生活を守るのが普通の警察で、マクロの目線から日本という国家全体を守るのが公安、と考えればわかりやすいかもしれない。

だから、公安が追いかける対象は、空き巣や痴漢、強盗や殺人などの凶悪犯といった連中ではなく、「過激派」や「テロリスト」などの犯罪者やその集団ということになる。

さまざまな「公安」

ところで、ひと口に「公安」といっても、実はその役割ごとにいくつかの組織に分かれている。

ここで、それらの全体像をざっくりと述べてみよう。

国家公安委員会

国務大臣を委員長とし、その他5名の委員からなる行政委員会のこと。警察庁を管理する内閣府の外局。

【都道府県公安委員会】

各都道府県知事の所轄のもと、都道府県警察の管理を自治事務として行なう組織。みなさんが持っている運転免許証に印字されているのは、この組織だ。

【公安警察】

警察の一部門。普通の警察が「刑事警察」であるのに対し、公安警察は「警備警察」という部門に属している。

公安調査庁

法務省の外局として、破防法や団体規制法などに基づき情報の収集と分析を行なう組織。オウム真理教への観察処分の実施や、国内諸団体、諸外国、国際テロ組織などを対象とする情報機関。

【公安審査委員会】

公安調査庁と同じ法務省の外局。各法令の規定により、公安調査庁からの処分請求を受けて、各種の処分を審査・決定する行政委員会。

この中で一般的にいわゆる「公安」と認識され、映画やドラマ、小説などの舞台としてたびたび登場するのは「公安警察」と「公安調査庁」ということになる。

二つの中で今回は「公安警察」をおもなテーマとしている。みなさんは「あの映画やドラマで描かれる公安の世界ってどうなってるんだろう?」という目線で読み進めてほしい。

内実は地味な世界

普段、公安警察がどんなことをしているかというと……。

「監視」と「情報収集」、この二つに要約される。


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実際に行なわれているものを挙げると、次のようなものになる。

・対象の動きを把握するため、ひたすら定点から対象を監視する

・アジトや活動拠点を炙り出すため、尾行する

・協力者(ドラマなどで言うところの情報屋)と接触し、情報を収集する

・収集した情報の精度を高めるため裏取りを行ない、真偽を見極める

・常に新たな協力者を発掘、開拓するため、さまざまな人物にアタリをつける

・対象周辺における「ヒト・モノ・カネ」の動きを徹底的に調査する

こうして列挙すると、一見華やかなスパイ映画のような仕事に感じられるかもしれない。しかし、それは思い込みで、内実は辛抱・我慢・忍耐の3語がふさわしい地味な世界だ。

たとえば「定点監視」などの場合は、監視対象のわずかな変化を見極める必要があるため、何カ月、あるいは何年もかけて監視し、「この日だけは建物への人の出入りが少し多い」などという微細な動きをチェックする必要がある。そのため、心身ともに健康な状態でないと遂行できない仕事であるともいえる。

監視対象

次に「誰を監視しているのか?」「どんな情報を収集しているのか?」ということについて述べてみよう。

公安警察が「監視対象」とするのは、おもに次に挙げる個人・団体である。

【公安警察のおもな監視対象】

・テロリスト(及びその兆候が見られる人物や団体)

・過激な言動を繰り返す左翼団体

・過激な言動を繰り返す右翼団体

・過激な思想の政治団体

・在日外国人の活動団体

・日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派(革マル派)など

・過激な思想の宗教団体

・自衛隊(陸上・海上・航空すべて)

先述したように、公安警察の任務というのは「日本の治安を維持すること」だから、それを脅かす恐れがある組織や人物は監視対象になる。

国家を転覆させる恐れがある動きや計画を排除するのが目的のため、それなりの規模があって影響力も大きい団体や組織の名が挙がっている。

この中に、自衛隊の名前が挙がっていることに疑問を抱いた人もいるだろう。自衛隊は言うまでもなく、治安を維持する側だ。

実は、これにはちゃんと理由がある。自衛隊というのは「戦闘力」という大きな力を保持しているので、そこから重要な防衛機密が漏れたり、力を背景に日本の国体を揺るがすような行為に出るといったことがないとは限らない。そうしたことのなきよう、その管理や運用が正しく行なわれているかどうかを監視するのである。

※本稿は、『警視庁公安部外事課 スパイ・テロを水面下で阻止する組織の実態』(光文社)の一部を再編集したものです。