【永田 雅乙】「全東信という猛毒」におかされた地方歓楽街の悲惨な末路…そして「情弱な店」からどんどん潰れていく
【前編記事】『全東信の破産、本当に怖いのは“火事場泥棒”の出現…「ヤツらの狙いはカード決済端末」専門家が警告』よりつづく。
全東信「粉飾決算疑惑」まで明るみに
今年最大規模となる、クレジットカード決済代行会社「全東信」の破産という衝撃的なニュースが報じられて、すでに数日が経過した。今回の破産を受け、加盟店である飲食店などから悲鳴が相次ぐほか、その影響は同社へ融資を行っていた地銀などにも波及している。
さらに今月8日には、全東信の粉飾決算疑惑も明るみに出た。東京商工リサーチの調査によれば、業績悪化を隠すために、およそ20年前から多額の預金の架空計上に手を染めていたという。
一連の事案を受けて、気がかりなのが全東信の加盟店である飲食店たちの動向だ。破産手続き開始を受けて、全東信からの未収売上金はそのまま破産債権となり、しばらく宙に浮いた状態になることは避けられない。
周知の通り、飲食店の中には、たとえ黒字であっても綱渡りの資金繰りに追われる店も少なくない。それが数日、数週間の売上金が入ってこないとなれば――全国規模で連鎖倒産が起こりうるかもしれない。
とはいえ“セーフティネット”が無いわけではない。むしろ本来、飲食店経営にとって必要不可欠な財務知識が備わっていれば、全東信破産によって被害を受けた会社も十分な支援策を受けることができる。
セーフティネットはこれだけあるが…
「飲食店経営者が活用しうる支援策は大きく3つ挙げられます」と話すのは、外食産業専門コンサルタントの永田雅乙氏だ。
「まずは日本政策金融公庫、取引金融機関による『セーフティネット貸付』の対象になるかどうかの確認です。これは取引先の倒産などで一時的に資金繰りが悪化した場合に中小企業を対象に融資を行う制度です。直近の試算表や資金繰り表、未入金額がわかる資料と、準備資料はたくさんありますが、まず初動で確認すべきものでしょう。
一番借りやすいという点で、次に挙げたいのが信用保証協会による『セーフティネット保証1号(連鎖倒産防止)』という制度です。これも大型倒産事業者に対して債権を有し、資金繰りに支障が生じている中小企業を支援するもので、全東信が経産相から『指定事業者』に指定される、という要件のクリア待ちという状況です。
そして3つ目が、連鎖倒産を防ぐための国の共済制度『経営セーフティ共済』です。こちらは毎月の掛金(月額5000円〜20万円)が経費・損金に算入でき、40ヵ月以上の納付で解約時に全額戻るため、節税目的でも広く活用されています。無利子・無担保で掛金総額の10倍(上限8000万円)の共済金貸付が受けられるので、加入者ならば対象となるかすぐ確認すべきでしょう」
また永田氏によれば、今回の全東信破産を受けて、各種決済会社が飲食店向けの支援策を打ち出している。たとえば株式会社USENが運営するキャッシュレス決済サービス「USEN PAY」では7日、〈?スピード審査(最短3日で端末設置)?決済代金の翌日入金サービス?決済手数料の削減〉という緊急対応を発表している。
“情弱”な店は八方ふさがりに
飲食店向けのセーフティネットがこれだけ充実しており、なおかつ業界全体が今回の全東信破産を重く受け止め、各社が支援に乗り出している。しかし、「それでも倒産する店は出てきます。なぜなら、こうした情報を正確に知ることができない、活用できない、いわば“情弱”と言われるような飲食店は実は多いからです」と前出の永田氏は指摘する。
とりわけ今後、閉店ラッシュが起きる可能性が高いのが、情報がなかなか入りにくい地方の歓楽街にある、個人経営の居酒屋や大手に属さないキャバクラ、スナックといった店々だ。問題が長期化する中で、上述した策をいち早く講じることもなく、ただ裁判所の仕切りで債権回収を待つだけでは、遅かれ早かれ手元のキャッシュは底をつき、黒字倒産になりかねない。
全国の主要都市に店舗を展開するキャバクラ大手グループの経営幹部に話を聞くと、すでに夜の街では、こんな悲鳴が聞こえているという。
「いち早く動いたのが水商売の店に商品を卸している街の酒屋や業者ですね。すでに月末締め翌月末払いだったのを、日ごと現金払いでの納品に変えた業者まであります。肝心の酒すら満足に仕入れられず、半ば営業休止状態に追い込まれる店もどんどん出てくるでしょう。
無論、キャストへの給料日払いが滞るなんてケースも起こりうる。売れっ子のキャストを抱えている繁盛店であっても資金力が無いなんてザラですからね、今後は中小規模の店はどんどん潰れて、潤沢な資金を持ち、財務能力にも長けた大手グループがより拡大するといった流れになると見込んでいます」
情緒ある歓楽街から、それこそ“味のある”店がどんどん消えていく……。全東信が破産した影響は飲食店だけでなく、我々から夜の街の楽しさすら奪ってしまうのかもしれない。
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