この記事をまとめると

■北京では中国車が圧倒的多数を占める光景が広がる

■日本車ではカローラやカムリが存在感を維持している

■BEVだけでなくPHEVやHEVも含め中国メーカーが勢力拡大

中国でカメラを構えることはリスクと紙一重

 筆者は取材で海外を訪れると、街角に立ってカメラを構えながら、そこを通るクルマを「定点観測」するようにしている。ここ数年の中国の都市部では直接なにか取り締まりのようなものを受けたことはないのだが、なかなかこの定点観測を気軽にできる雰囲気ではないなと筆者は感じている。

 2025年春、久しぶりに中国の上海を訪れた。中国へ出かける前に、周囲で筆者が定点観測を行うことを知っているひとからは、「街角で一眼レフカメラを構えるのは命がけの行為なのではないか」と心配してくれる声も多くあった。

 実際上海の街角にある交通量の多い交差点を探して撮影しようとすると、たいてい(ほとんど)の交差点には公安(警察)関係者がおり、とりあえずは交通整理を行っているのだが、とてもではないがズームレンズのついた一眼レフ(ミラーレスではあるものの)カメラを構える勇気は筆者にはなかった。

 中国に限らず新興国では、駅構内など限られているものの、撮影に関して厳しいことがある。某東南アジアの国の駅にて数人で駅に停車している電車を撮影していると、スマホやコンパクトデジタルカメラで撮影していたひとにはなんのお咎めもなかったのだが、光学式一眼レフで撮影していたひとのところへ警察官関係者が近寄り、記録画像の消去を求めたことがある。中国ではおもに現地駐在員が理由もよくわからず公安当局などに身柄拘束される事件が発生するが、街なかで一眼レフにて撮影をしていたり、政府や軍関係の施設をたまたま撮影してしまったケースがあるのではないかとはよくいわれる話である。

 2026年春に、8年ぶりに北京を訪れた。日本と中国の政治関係がかなり緊張しているなかでの訪中である。過去に訪れた定点観測ポイントへ行くと、大きい交差点にもかかわらず公安関係者の姿はなかった。そこで撮影をはじめたのだが、ふと道路脇に目を向けると、高い鉄柵の上部には鉄条網が張り巡らされていた。

 もしかしたら……と思いさらに目を凝らすと、人民解放軍の制服らしきものを着たひとが門番をしていた。「これはヤバい」と思い早々にその場を立ち去った。仮に公安関係者の姿がなくとも、街のいたるところに尋常ではない数の監視カメラが設置されている。入国に際しては顔写真を撮影されているので、顔認証ですぐに身元は判明してしまう。中国での定点観測は1カ所につき15分程度と、短い時間を設定して移動を繰り返すようにしている。

 小心者の筆者なので多少オーバー気味に様子をうかがっていることを差し引いても、いまの中国の街角は変わったこと(定点観測など)をするのはなかなかスリリングというか、リスクは高めということは間違いないようだ。

主役が地場メーカーへ移行しつつある

 命がけとまではいかないものの、緊張感をもって北京市内を走るクルマを多少ウォッチしたのだが、日本車だけではなく外資ブランド車もなかなか見ることができなかった。2025暦年締めでの中国国内での年間新車販売台数は3440万台、そのうち7割弱が中国系ブランド車となっているので当たり前といえば当たり前の話だ。

 そのなかで目立った日本車といえば、一汽豊田のカローラとなる。中国生産されるカローラは日本仕様と世代は同じなのだが、2025年秋にハンマーヘッドフェイス(サメ顔)を採用するなどの改良を行っている。サメ顔カローラはまだそれほど見かけないのだが、改良前モデルは意外なほど北京市内で見かけることができた。ライドシェア車両として使われているケースが多いように見受けられた。

 カローラほどではないものの、やはり「サメ顔」を採用した広汽豊田のカムリもよく見かけた。サメ顔カムリはタイや台湾でも頻繁に見かけることができた。もともとカムリは北米をはじめ世界的にも根強い人気があるのだが、サメ顔が目立つこともあるのか、普及スピードの速さをひしひしと感じるほど歴代モデルのなかでも勢いを感じている。

 ある事情通は「日本でもアメリカ生産モデルが右ハンドルで完成車輸入販売されるが、日本での売れ行きへの期待がもてる」と語っていた。東南アジア東アジアでサメ顔カムリは消費者にまさに「刺さった」様子。BEV販売比率が全体の5割に迫ろうとする中国でのカムリだが、HEV以外にガソリンエンジン車もラインアップされている。次に中国へ出かけたときにはサメ顔カムリがさらに多く街なかを走っている風景を筆者は想像している。

 中国系ブランドでは、タクシーでは地元北京汽車のBEVコンパクトセダンしか見かけることができず、路線バスも北京福田(FOTON)の車両が圧倒的に多い印象を受けた。北京汽車のほかは、近領都市の天津に本拠地を置くFAW(中国一汽)も地元メーカーといえるだろう。

 そのFAWの代表ブランドといえば、政府要人や共産党幹部専用車もラインアップする「紅旗(ホンチー)」が有名である。政府や党の要人向け車は一般の中国消費者には購入制限があると聞いている。そこで紅旗では広く消費者に販売可能な「民生版」のようなシリーズもラインアップしており、その民生版ともいうべき紅旗のコンパクトセダン(BEV)を北京市内ではよく目にすることができた。

 BYDオート(比亜迪汽車)も華南地区に本拠地を置くメーカーなのに、華北地域となる北京市内ではもっとも多く走っているのではないかと思うほどよく見かけた。全体としては、クロスオーバーSUV人気の高い中国にあって北京市内ではセダンニーズが高いようで、セダンのほうが目立っていたのも印象的であった。

 多くの大手中国系メーカーは多ブランド構成をとり、ボディサイズ、ボディタイプもさまざまなモデルが用意されている。「中国車=BEV」というだけではなく、PHEV、HEV、そしてガソリン車まで用意するメーカーも珍しくない。電子装備関係でもある意味コネクテッド環境が特殊でもある中国では、自国メーカーが強みを見せてくるので、そのフォローが充実しているのも中国車がよく売れている背景なのかもしれない。