KNB北日本放送

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国内の日本酒市場が縮小する中、富山の地酒メーカーは生き残りをかけ、海外市場の開拓など新たな取り組みを進めています。砺波市の酒造会社が挑む、伝統の枠を超えた新たな酒造りを取材しました。

「ハイ、どうぞー」

砺波市にある若鶴酒造です。大型連休イベントを開きました。来場客に初めて提供されたのは、4月下旬に発売した新ブランドの日本酒です。

関西から来た人
「めちゃくちゃ飲みやすいです。全然日本酒っぽくない、だいぶやさしい味で、けどしっかり後味はある」
日本酒初めての人にもいいと思います」
福井から来た人
「食事中に飲んでも、全然いやな感じしないと思います」

新ブランドの日本酒「三六〇」。名前は、創業の地「砺波市三郎丸」にちなんだのと、「甘味、酸味、旨味、苦味、香り」のバランスにこだわった味わいを円の全周である「360度」になぞらえています。会社が「新たなスタンダード」と位置づける日本酒です。

会社は今回、酒造りを見直すとともに、商品体系やブランド戦略も一新しました。売り上げの8割を占めるまでに成長したウイスキーとともに、日本酒は「さぶろうまる」の名前を前面に押し出します。製造工程も見直し去年、日本酒蔵の「昭和蔵」を大規模リニューアルしました。短期間の大量生産型から、小規模高回転型の設備へ更新。酒蔵の名称も「三郎丸蔵」に一本化しました。

稲垣貴彦社長
日本酒の消費量っていうのは、1970年代が多分ピークだったと思うんですけど、その時代から比べるともう3分の1になってるんですね。酒蔵の数も3000蔵あった蔵から、今ではもう1000蔵、もう3分の1になってる。これが現実なんですよ。でそんな中で、やっぱりいかに日本酒を未来に残していけるかっていうことを考えると、やっぱりこう嗜好品としての日本酒のあり方っていうことを、やっぱり探っていかなきゃいけない」

海外では日本酒人気が高まっています。去年の日本酒の輸出額はおよそ459億円。1リットルあたりの単価は過去最高水準の1368円となり、10年前のおよそ1.8倍です。特にプレミアムな日本酒が好調で、日本食ブームを背景に、全体の輸出額も高い水準を維持しています。

一方国内では、人口減少などを背景に出荷量は右肩下がりの状態が続いています。1970年代のピーク時と比べると3割以下に落ち込んでいます。ただ、普通酒が減少しているのに対し、純米酒や純米吟醸酒は増加傾向で、高付加価値商品のニーズは高まっています。

若鶴酒造も多くの酒蔵と同じ悩みを抱えています。清酒の製造量は1975年のピーク時の10分の1にまで減りました。一方ウイスキーは、現存するデータで最も古い1981年当時の131倍に増えました。売り上げ全体に占める日本酒の割合は、およそ2割。ウイスキー事業の成長が日本酒造りの改革を後押ししています。

稲垣貴彦社長
「今後の大きな投資についてお話をしますとですね、今度大きな熟成庫というか倉庫というか塔を建てます」

この日、稲垣社長は今後の方針を社員に伝えました。

稲垣貴彦社長
「皆の考えを、ぜひとも考えていきたいと思っています。考えをぜひ聞かせていただいて、未来に取り込んでいきたいと思っているんですね」

会社は今年9月にかけて、冷蔵設備導入のため大規模な工事を行う計画です。完成後はこれまで冬場だけに仕込んでいた日本酒づくりを、通年の「三季醸造」に切り替えます。さらに敷地内の倉庫を改修し、新たな見学施設を整備する計画です。最上階にラウンジを設け、散居村の向こうに広がる北アルプスを眺めながら、富山のすしを味わえるスペースも設けるとしています。

稲垣貴彦社長
「やっぱり今後、日本酒っていうものを、いかにこう未来に残していくかっていうことが課題になってると思います」
「選ばれる酒にならなきゃいけないと。そんな中では、やっぱり冬だけに大量に機械を使って作るってやり方だと難しくて、いかにやっぱりこう長い期間、規模が小さくても、作ることによって人の練度を高めていけるかっていうことが大事になってると思います」

杜氏 田村幸作さん
「ありがとうございます。めっちゃ本当に書いていただいて、ロゴのデザインもしていただいて、ありがとうございます」

4月下旬。新ブランド「三六〇」発売の翌日、富山市内の酒店に杜氏の田村幸作さんの姿がありました。新商品への率直な声を聞くためです。北陸の酒蔵でも珍しい29歳の若き杜氏。蔵の新たな一歩を担っています。

リカーポケットみずはた 水畑幸司さん
「やっぱりね、アルコール率が14度ということで通常の日本酒より1度か2度低いです。なのでなんていうかな。今までのお酒とまたちょっと違う、飲みやすい感じになるのかな」
お酒と食事の相性がいいと思いますよ」
杜氏 田村幸作さん
「一つ実感を持って大きな仕事をしたなという気持ちと、ここからが始まりだなっていう、始まりだなって思いました。これからもっと頑張ろうと思いました」
リカーポケットみずはた 水畑幸司さん
「すごい勉強熱心な方で、若いのでこれからどんどんどんどん、立派な杜氏さんになられます」

この酒店では発売から2日で、10軒ほどの飲食店にも納品していました。上々の滑り出しに、背中を押された若き杜氏です。

会社はこの春、敷地内に新たに小さな社を建てました。蔵や蒸留所を訪れる人たちの「酒の難」を払い、この地で受け継がれてきた酒造りの伝統を未来へつないでいきたいーーーそんな思いが込められています。

稲垣貴彦社長
「今後の成長というのはやっぱりチームワークにかかっていると思いますし、いかに組織としてこう連携してやっていけるかってところが大事だと思っています。そういう意味でこう心を一つにして、皆で目標に向かっていこうと思います」