地域住民は「人が集まるとは思えない」と悲観…熱気ゼロの横浜・上瀬谷「巨大テーマパーク」計画地に漂う不穏な空気
横浜・瀬谷で進む巨大テーマパーク「KAMISEYA PARK」構想が、波乱含みの船出となっている。
2027年の国際園芸博覧会の跡地を活用するこのプロジェクトは、当初の整備主体だった相鉄が撤退し、新交通「上瀬谷ライン」計画も頓挫。三菱地所が新たな主体として名乗りを上げ、ようやく再始動した。
USJ復活の立役者・森岡毅氏も参画するが、氏が直近手がけたイマーシブ・フォート東京とジャングリア沖縄はいずれも苦境に立たされている。「ディズニー級」を謳う横浜の壮大な賭けは、果たして成功するのか?
後編では、会場予定地である瀬谷の現状や、花博開催にあたっての不安点について解説する。
前編記事『2027年「横浜花博」跡地に誕生…刀・森岡毅氏も参画する「日本最大級テーマパーク」開業前から見えてきた暗雲』より続く。
三菱悲願のテーマパーク創設なるか
三菱地所はディズニーという大魚を逃し、テーマパークという新たなエンターテイメントを創造することができなかった。
「KAMISEYA PARK」は三菱によるリベンジといえるが、それは森岡毅氏についても同様だ。森岡氏はUSJ再生を果たし、昨年にはジャングリア沖縄をオープンに導いたが、そこには常にディズニーへの対抗心が見え隠れしていた。
KAMISEYA PARKは開業年の来園者数目標を1200万人、年間目標を1500万人と掲げている。2025年の入園者数は東京ディズニーランド・シー合計で約2753万人、USJは約1600万人。現段階でアトラクションをはじめ園内で楽しめるエンターテイメントやコンテンツが未知数であるにもかかわらず、野心的な目標を掲げている。
もっとも、KAMISEYA PARKは純粋なテーマパークではない。駅前広場・商業広場・都市公園といったオープンスペースを備えており、有料のテーマパークはその一部に過ぎない。ディズニーリゾートにおけるイクスピアリやボン・ヴォヤージュのような位置づけとみるのが自然だろう。
地域住民は「人が集まるとは思えない」
筆者が初めてこの地を取材で訪れたのは2023年10月のことだ。外周を延々と歩き、農地で農作業に励む人に話を聞いてみると、GREEN×EXPO 2027のことは知っていても、その後に建設されるテーマパークのことまでは把握していなかった。
「ここは横浜といっても(横浜駅や桜木町駅のような)繁華街ではないから、テーマパークができても人が集まるとは思えない」――そうした感想は周辺住民に広く共通していた。
アメリカ軍の通信施設が返還されたとはいえ、一帯は鉄条網で厳重に囲われたままだった。基地特有の雰囲気が色濃く残り、周辺の住宅街や農地とは明らかに隔絶された空間という印象を受けた。
敷地内にはGREEN×EXPO 2027の開催を知らせる看板が立てられていたが、その荒涼とした風景から輝かしい未来を思い描くことは、容易ではなかった。
進まぬ工事に、熱気のない現地
大阪・関西万博が閉幕した直後の2025年11月、再び同地を訪れて外周をひたすら歩いた。初訪問から約2年が経過し、万博終了直後という高揚感も相まって、以前より現地は盛り上がっているだろうと考えたからだ。
しかし実際に足を運んでみると、瀬谷駅の駅舎壁面にGREEN×EXPO 2027の開催告知、隣の三ツ境駅に開幕までのカウントダウンを示す電光掲示板が設置されているのを目にした程度で、現地にGREEN×EXPO 2027に対する熱気は感じられなかった。
会場予定地も順調に工事が進んでいるとは言い難い状況だった。敷地を取り囲んでいた鉄条網が工事用の仮囲いに変わり、会場を南北に貫く海軍道路の渋滞を緩和するための拡幅工事が実施されていたぐらいだった。むしろ、海軍道路の名物だった桜並木が拡幅工事によって植え替えられることになり、その多くが伐採されていたことの方が印象に残った。
仮囲いの隙間から敷地内を覗くと、重機が動いて造成工事が行われていた。土砂を積んだダンプカーが出入りする様子も時折見られたが、まだ明らかに会場としての体を成していなかった。
会場周辺は飲食店もコンビニもない
事務局が発表した会場イメージ図によれば、会場内には鹿島建設が大阪・関西万博のシンボルだった大屋根リングの部材を再利用する形で「KAJIMA TREE」というタワーを建設する計画がある。ただ、それ以外に目立つ構造物は見当たらない。
大阪・関西万博にも共通することだが、GREEN×EXPO 2027は未利用地の開発促進という目的を含んでいるため、会場周辺には飲食店はおろかコンビニすら存在しない。
コンビニやファミレスに寄るには瀬谷駅か三ツ境駅まで戻らなければならず、多くの来場者でごったがえすことを考えると、飲食インフラは貧弱で、来場者は実質的に兵糧攻めを強いられる格好になる。
万博に限らず五輪などの国家的プロジェクトでは、電気・ガス・上下水道・通信・道路・鉄道といった基幹インフラの整備のみならず、周辺の飲食環境まで含めた配慮が不可欠だ。閉幕後に大型テーマパークをオープンさせるという後続の開発がすでに決定している以上、それを見据えた上で、開幕前の段階からインフラを入念に整えておく必要があるだろう。
愛知万博で浮上した環境問題
これらに加えて近年、主催者・事業者を悩ませる問題がもう一つある。環境への配慮だ。2005年に愛知県で開催された愛・地球博(愛知万博)では、会場地に瀬戸市の「海上の森」と呼ばれる約600ヘクタールの里山・森林が含まれていた。
この海上の森は、1999年、この森で希少野生動植物種に指定されていたオオタカの営巣が確認されたことで、環境保護の観点から万博開催への疑義が広がっていった。
筆者も1999年、万博会場の整備問題に揺れる海上の森を訪れた。名古屋市中心部から車で1時間ほどの場所に、これほど手つかずの自然が残されていることへの驚きは大きかった。会場予定地とされていたエリアは一日かけても歩き切れないほど広く、一帯は緑に囲まれ、野鳥の声があちこちから聴こえてきた。ところどころに池やせせらぎがあり、こうした水辺空間が豊かな自然生態系の維持に欠かせないことは誰の目にも明らかだった。
万博の工事によって緑が失われることはもちろん、水涸れもまた環境維持に深刻な影響を及ぼしかねない。また、工事期間中の振動・騒音、粉塵による環境悪化も懸念された。
横浜「市民の森」は守られるのか
同様の問題がGREEN×EXPO 2027でも起きる可能性は否定できない。高度経済成長期に東京の人口が急増したことを受け、横浜市はその受け皿となるべくニュータウン開発に邁進した。人口で大阪市を抜くほどの成長を遂げた一方、それと引き換えに住環境の悪化を招いた。
緑の減少を懸念した横浜市は1971年、自然環境を独自に保全する「市民の森」制度を創設した。同制度は現在も継続しており、2026年3月末時点で市内48か所・約560ヘクタールが指定されている。
GREEN×EXPO 2027の会場地にも、約19.3ヘクタールの瀬谷市民の森、約10.1ヘクタールの上川井市民の森、約33.4ヘクタールの追分市民の森が近接している。これらの森は現在進行形で拡大を続けている。言うまでもなく自然・環境を謳った博覧会である以上、これら静謐な森の環境を乱すことは許されない。
閉幕後に整備されるテーマパークにも同じ制約が課せられる。大阪・関西万博は夢洲という人工島が会場地だったために、それなりに自由な開発ができたが、GREEN×EXPO 2027は事情が異なる。
開催まで300日を切り、KAMISEYA PARKの開業も2031年とアナウンスされた今、問われるべき問いは二つある。KAMISEYA PARKは触れ込みどおりの「ディズニー級」のテーマパークに本当になれるのか。そして、緑を守りながら開発を進めることができるのか。まだ時間的な余裕は残されているが、ここまでの道のりを振り返ると、自然との共存という課題をクリアすることは決して簡単な話ではない。
(写真はすべて筆者撮影)
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