ヤクルト大躍進のワケは「クラブハウスの風呂」にあった! 選手、OBが語る「イケヤマジック」の正体

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声かけの魔法、聞く魔法

「古巣に対して失礼かもしれませんが、正直、こんなに上位につけるとは思いませんでした(笑)。しかし、ただの偶然で首位に立てるほど、プロ野球は甘くない。今年のヤクルトは強いですよ」(ヤクルトOBの飯田哲也氏)

3月のプロ野球開幕前に行われた100人以上の野球解説者による順位予想では、約9割がヤクルトを最下位と見ていたが、無理はない。昨オフ、メジャー挑戦のためチームを去った主砲・村上宗隆(26)の穴はあまりにも大きく、トリプルスリーを3度達成したスター・山田哲人(33)はケガの影響で二軍暮らしを余儀なくされている。

ところがそんな下馬評を覆(くつがえ)し、ヤクルトは現在、阪神との熾烈(しれつ)な首位争いを繰り広げている。なぜ今季のヤクルトは強いのか? 池山隆寛監督(60)はどんな魔法を使って戦力を底上げしたのだろうか。

飯田氏は、「監督が池山さんになってから、とにかくチームの雰囲気がいい」と目を細める。

「若手主体のチームということもあり、池山さんの中には『選手が失敗を恐れるような環境にはさせない』という強い考えがあると思います。私は若手時代、池山さんの″部屋子(へやご)″を務めていましたが、当時の池山さんはその場にいるだけで怖いくらい、オーラのある人でした。

しかし、現在はベンチで笑顔を見せ、選手を応援するような声かけを欠かさない。今の選手たちにとっては、のびのびとした雰囲気のほうが、戦いやすいのでしょう」

とはいえ、いくらベンチが活気に溢(あふ)れていても、肝心の采配が振るわなければ勝てないのがプロ野球の世界。

しかし、今季のヤクルトは、「ノーバント野球」や「8番投手」など、あらゆる作戦がハマりにハマっている。「イケヤマジック」と称される卓越した池山監督の手腕に、かつてヤクルト黄金期を築いた名将、故・野村克也氏の影を見るファンやメディアは少なくないが……。

「実は、『イケヤマジック』には″借用″が多い。たとえば、投手の打順を8番に上げて攻撃パターンを変える作戦の発案者は、池山さんではなく坪井智哉打撃コーチ(52)です。

坪井さんがDeNAの一軍打撃コーチだった際、当時のアレックス・ラミレス監督(51)は、相手投手や自軍野手の調子に合わせてピッチャーを8番に置くことがありました。坪井さんがそれを池山さんに提案したところ、『いいね!』とすぐに採用されたようです。

坪井さんは併せて、池山さんに『お気に入りの選手だけを代打に出したり、逆にここぞの場面で代打を送らなかったりと、セオリーから外れたところで監督の色を出すことだけは避けましょう。そうすれば8番投手も上手くいきます』と進言。ラミレス監督は気分屋で、せっかくハマった作戦をひっくり返されることもあったようで……(笑)。その苦い経験を念頭に置いての言葉でしょう」(ヤクルト内野手のA氏)

湯船で野球談義

池山監督は、投手起用についても積極的にコーチの進言を受け入れている。

「勝ち頭の山野太一(27)を疲労回復のために4月12日に登録抹消したり、中継ぎ陣の3連投を回避したりと、野手出身の監督ながらピッチャーへの配慮がきめ細かい。これは松元ユウイチヘッドコーチ(45)からのアドバイスによるところも大きいそうです。

野手出身のコーチが投手について進言するのは珍しいですが、松元さんは高津臣吾前監督(57)を事実上のヘッドコーチとして支えていました。そこで学んだ投手管理術を、池山さんに伝えています。

球界には前任の方針を踏襲することを嫌う人も少なくありませんが、池山さんは『試して上手くいけばそれでいいし、ダメなら戻せばいいよ!』とどこまでもポジティブなんです」(球団スタッフのB氏)

コーチの意見を吸い上げつつ、モチベーターとしてチームを盛り上げる。言葉にするのは簡単だが、就任1年目の監督の精神的負担は想像を絶するほどのものだろう。しかし池山監督は、ストレスを文字通り洗い流してシーズンを戦っているという。

「池山さんはとにかくお風呂が大好き。ヤクルトで伝統となっている松山(愛媛県)での自主トレを最初に始めたのは池山さんですが、その理由は『練習後に権現温泉の湯にゆっくり浸かりたいから』でした。今でもそれは変わっておらず、神宮球場のクラブハウスでは誰よりも長湯を楽しんでいます」(同前)

別の球団スタッフのC氏は、「このクラブハウスでの長湯が、結果的にチームをまとめている」と話す。

「池山さんは、ベンチで議論するよりも湯船に浸かりながら人と話すことを好む。試合後にさっさと風呂に入り、首脳陣と反省点を洗い出したり、上手くいったプレーを分析したりしているそうです。松元さんや坪井さんともそこで話し合っているのかもしれません。その場で選手の起用や打順を決めることもあるみたいで、選手も監督の入浴タイムの様子を気にしています(笑)。

一緒になった裏方には『一軍監督になってからバタバタで申し訳ない……。いつもありがとう!』と声をかけてくれるんですよ。裏方を気にかけてくれていた杉村繁コーチ(68)が昨季限りで退団されたのでスタッフ陣は不安だったのですが、池山さんが『今度は俺が』と声をかけてくれたり、遠征先では食事に連れて行ってくれたりする。だから首脳陣も裏方も、選手も一丸となって戦えるんです」

池山ヤクルトの強さの根源は、グラウンドではなくクラブハウスの風呂場にあるのかもしれない。

『FRIDAY』2026年6月19日号より