過去最悪のペースで″人喰いグマ″が動き出した…専門家が「今年のクマは違う」と警告する異常事態
例年を上回るペースで死亡事故が発生
″アーバンベア″が急増、市街地で越冬したと思しき個体も登場
″人喰いグマ″が今年も動き始めた。しかも、過去最悪のペースで――。
東北地方の各県では4月に入ってクマの目撃件数が急増。4月だけで宮城県では前年の5.3倍となる138件、秋田県でも前年比4.6倍の395件という異常な数の目撃情報が寄せられるなか、ついに悲劇が起きた。
「4月21日、岩手県紫波町の山中で、55歳女性の遺体が発見されました。遺体には爪痕や動物に噛まれたような跡があり、損傷がかなり激しかったようです。その後、女性の死因がクマによる襲撃であると断定されました。現場付近を捜索していた岩手県警紫波署の男性巡査部長もクマに襲われ、顔や腕に怪我を負っています」(地元紙記者)
下の地図に’25年度(’25年4月〜’26年3月)の被害と’26年度4月の被害状況をまとめた。総被害者数238人、死亡者数13人という過去最悪の被害を記録した昨年度、初の死者が出たのは6月に入ってからだった。ところが――今年は5月14日時点ですでに2人が死亡しているのだ。
近年、危険視されているのが、市街地周辺に生息する″アーバンベア″と呼ばれるクマだ。アーバンベアは本来の住処(すみか)である山奥ではなく、地方の都市部に堂々と姿を現す。そこで遭遇した人間を襲撃し、最悪の場合、死に至らしめる。
そんな恐ろしい個体が増加しているというだけで脅威なのに、日本ツキノワグマ研究所所長の米田一彦氏は「半世紀以上クマを見てきましたが、今年のアーバンベアは従来のアーバンベアとまったく違う」と警鐘を鳴らす。
「今年は4月から宮城県仙台市や福島県郡山市といった都市部でクマが目撃されています。山から人里に移動してきたのではなく、市街地周辺で越冬した個体である可能性が高い。山から下りてきたのであれば、体長1.5m、体重120kgもあるクマたちが途中で誰にも目撃されず数十km離れた市街地までたどり着くのは難しいからです」
「人里に慣れる」どころか、「人里近くで越冬する」ほど″進化″しているというのだ。
「本来クマは臆病な生き物で、人間を恐れる性質を持っていました。しかし、アーバンベアは人間を恐れず、白昼堂々、民家の庭先になった柿の実などを食べにやってくる」(米田氏)
FRIDAYは、今年5月に北海道根室市昆布盛駅付近に現れたアーバンベアの動画を入手した。
動画には、車が行き交う2車線の道路をクマがノッシノッシと横切る姿が映っている。悠々と闊歩する姿には人間はおろか、車にまで慣れたアーバンベアの余裕が感じられた。
なぜ、これほどまでにアーバンベアが増えているのか。クマの生態に詳しい酪農学園大学の佐藤喜和教授がその要因を解説する。
「昨年はクマのエサであるどんぐりが凶作で、本来の住処である山の中では食料が確保できなかった。人里近くにある柿や栗をエサとして求めにやってくるなかで、″ここに行けばエサが食べられる″と学習。人里近くを自分の生活圏として認識したのだと思います。山間部の町や村だと人口減少や高齢化が進み、人間による脅威が少ない。それも、クマが人里に進出している一因でしょう」
冬眠明けと思えない巨体
今年のクマにはもうひとつ、特徴がある。冬眠明けとは思えないほど巨大化しているのだ。
「通常、冬眠明けは体重が2〜4割ほど減少します。冬眠にエネルギーを使うので脂肪も落ち、体の皮がだぶだぶになる。しかし今年目撃されたクマの中には、体重が100kgを超え、ハリのある皮を持つ個体がいるのです。
北海道や東北地方が暖冬だった影響で、冬眠中の消費エネルギー量が少なかったのではないかと考えられます。つまり、冬眠明けにもかかわらず元気な状態で活動を開始しているということです。今年のクマが例年以上に活発なのはそのためでしょう」(前出・米田氏)
実際、巨大なクマの目撃情報が各地で相次いでいる。
今年4月に北海道苫前町長島地区で捕獲されたヒグマは、体長はおよそ2.2m、体重は330kgとみられている。下の写真は、今年5月2日に北海道興部(おこっぺ)町で撮影されたヒグマで、こちらも冬眠明けとは思えない巨体だ。
撮影者の黒澤徹也さんも、今年度のクマの″変化″を実感している。
「250〜300kgぐらいはあったと思います。私は定点カメラで撮影しているのですが、4月にも、250kgぐらいの個体が映っていました。例年なら、もっと小さくて痩せている個体が多い。それが、今年は春先から丸々と太ったクマが活動しているように感じますね」
しかも、専門家たちは「人里に慣れ、巨大化したクマがこれから凶暴化する」と言うから恐ろしい。その理由は「交尾期」だ。前出の米田氏が指摘する。
「クマは初夏にかけて交尾期に入ります。5月上旬あたりから始まり、これから本格化していく。交尾期になると、オスはメスを求めて行動の範囲を広げます。交尾期のオスは、子連れのメスグマを見つけて子グマを捕食し、メスグマの発情を促す習性があるため、交尾期のメスグマは子グマを守るために攻撃的になる。人がクマに遭遇するリスクも、襲われるリスクも高まるのです」
巨大化し、気性の荒くなった「人を恐れぬクマ」とどう向き合えばいいのか。死亡事故が発生した岩手県紫波町役場環境課の担当者が言う。
「我々自治体は、クマが出現しそうな場所に罠を仕掛けたり、目撃情報があった場合に地元の猟友会による緊急狩猟を手配したりする仕組みを整えています。岩手県はクマの出没情報がピンポイントでわかるマップのアプリも導入しています。クマの生息域と思われる場所、出没した地域に入る際には、必ず複数人で行動する、クマよけの鈴をつける、といった対策をとっていただきたい」
前出の佐藤教授は、民間レベルでも「人の生活圏に立ち寄れないようにする対策が必要」と警告する。
「クマのエサとなる、不要となった柿の木や農作物をそのままにしておかないこと。いらない木は伐採し、農作物は屋外ではなく納屋で保管してください。近年、クマを見ても通報しない人が出てきています。クマが現れたら必ず通報し、人里から追い払わなくてはいけない。人里を″生活圏″と認識すると、クマの行動はエスカレートします。その前に、人里は生息地ではないと認識させることが大切です」
5月19日には東京都奥多摩町で上半身のない遺体が発見された。周辺には大型動物の痕跡があったという。
凶暴化も巨大化もした人喰いグマが、次々と現れて人里を襲撃する。悪夢のようなシナリオが現実味を帯び始めている。
『FRIDAY』2026年6月5・12日合併号より
