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ミニと比較されがちなRRのインプ

ヒルマン・インプの話題になると、英国のマニアはオリジナルのミニを比較対象に持ち出す。後輪駆動だったのに対し、現在では一般的な前輪駆動と、わかりやすい違いがあるからだろう。だがそれ以上に、実用性などの差が販売へ影響したといっていい。

【画像】FFのミニ・シリーズとRRのインプ・シリーズ イノチェンティ・ミニと現行クーパーも 全129枚

ヒルマンを傘下にしたルーツ・グループは、不安定な経営と度重なるストライキ、高くない信頼性へ悩まされていた。また1960年代の欧州では、リアエンジン・レイアウトは珍しいものではなかった。ルノーや現アウディのNSUも、RRのモデルを擁していた。


FFのミニ・シリーズと、RRのインプ・シリーズ    トニー・ベイカー(Tony Baker)

結果的にミニは今へ生き残ったが、インプの魅力も忘れがたいもの。そこで今回は、直接的なライバル同士を、3つのボディスタイルで振り返ってみよう。

上流階級をターゲットにしたライレー・エルフ

1961年のブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)が、上流階級をターゲットに発売したのが、モーリスとオースチンのミニ・マイナーをベースにした、ライレー・エルフとウーズレー・ホーネット。全長は、約215mmも伸ばされていた。

ノッチバックのスタイリングを担当したのは、ディック・ブルジ氏。内装はレザー張りで、ダッシュボードはウォールナットで飾られ、2つのグローブボックスが備わった。価格は、エルフが475ポンドとホーネットより15ポンド高かったが、装備が良かった。


ライレー・エルフ(1961〜1969年/英国仕様)    トニー・ベイカー(Tony Baker)

「ライレーのオーナーは、なぜこれほど優越感に満ちているのか?」と、広告では強気なフレーズで訴求された。1966年の映画「影なき裁き」には、脇役で登場している。

果たして、エルフとホーネットは「少し上」を好む層へヒット。ライレー・ブランドが経営再編を理由に消滅した、1969年まで生産は続いた。

郊外の一般道で発揮される998ccの本領

今回ご登場願ったのは、アベリーノ・カルメロ・トレンティーノ氏が所有する1963年式。848ccから998ccへエンジンの排気量が増え、MkIIへアップデートされた直後のエルフとなる。前オーナーは、2022年まで34年間も大切に乗った、両親だったという。

「本当はMkIのミニが欲しかったんです。でも凄く高額ですし、エルフにも以前から憧れていましたから。現代の交通にも充分対応できますが、高速道路は得意じゃないですね。郊外の一般道で、本領が発揮されますよ」とトレンティーノが微笑む。


ライレー・エルフ(1961〜1969年/英国仕様)    トニー・ベイカー(Tony Baker)

エルフは、同時期のミニ・シリーズの中では目立たない存在かもしれない。だが、確かな魅力を感じることは間違いない。彼が続ける。「現代のクルマと違って、直接的で純粋な運転体験を味わえます」

興味が奪われる小気味いいエンジン音

そんなエルフへ直接的に対峙したのが、1964年後半に登場したシンガー・シャモア。ベースとなったヒルマン・インプは、1965年にMkIIへアップデートし、翌1966年にツインキャブレター・エンジンの「スポーツ」が登場している。

女性ラリードライバーのローズマリー・スミス氏は、兄弟モデルとなるサンビーム・インプをドライブし、1965年のオランダ・チューリップ・ラリーで優勝。シャモア・スポーツの販売を、後押しすることになった。


シンガー・シャモア・スポーツ(1966〜1970年/英国仕様)    トニー・ベイカー(Tony Baker)

ダーク・グリーンのボディは端正だが、まず興味が奪われるのは、小気味いいエンジン音だろう。運転席には、俳優のリチャード・ブラッドフォード氏が似合うに違いない。

今回ご登場願ったのは、1967年式。オーナーのレス・ヒューマン氏は、このクルマを1999年に購入したが、レストア半ばの状態にあったそうだ。

最大の問題は優れない製造品質だった?

優れない製造品質が最大の問題だったのでは、と彼は指摘する。「素晴らしいトランスミッションが載った、ドライバーズカーですよ。100km/h前後での巡航も余裕です。インプ MkIも所有していますが、明らかに速いですね」

高級感でいえば、シャモア・スポーツよりエルフの方が勝る。ダッシュボードの雰囲気も、どちらかといえばオフィス的。それでも、フロントシートはリクライニングでき、メーターパネルは情報を確認しやすく、1960年代らしい上質な雰囲気はある。


シンガー・シャモア・スポーツ(1966〜1970年/英国仕様)    トニー・ベイカー(Tony Baker)

「公道を走る小型車の中で、最も訴求力の高い1台です」と、当時のAUTOCARはシャモア・スポーツを称えた。特に、動力性能と操縦性を高く評価している。

ところがライレーと同様に、1970年代を迎えるまでにシンガー・ブランドは消滅。シャモアの提供も終了してしまう。その3年前、親会社のルーツ・グループはクライスラー社によって買収。インプ・ファミリーへ、充分な機会が訪れることはなかった。

ライレー・エルフとシンガー・シャモア・スポーツのスペック

ライレー・エルフ(1961〜1969年/英国仕様)

英国価格:607ポンド(新車時)/1万5000ポンド(約315万円)以下(現在)
生産数:3万912台
全長:3302mm
全幅:1410mm
全高:1334mm
最高速度:125km/h
0-97km/h加速:24.1秒
燃費:12.4km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:649kg
パワートレイン:直列4気筒998cc 自然吸気 OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:38ps/5250rpm
最大トルク:7.1kg-m/2700rpm
ギアボックス:4速マニュアル/前輪駆動

シンガー・シャモア・スポーツ(1966〜1970年/英国仕様)

英国価格:695ポンド(新車時)/1万ポンド(約210万円)以下(現在)
生産数:4149台
全長:3588mm
全幅:1530mm
全高:1384mm
最高速度:144km/h
0-97km/h加速:16.3秒
燃費:11.7km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:723kg
パワートレイン:直列4気筒875cc 自然吸気 SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:51ps/6100rpm
最大トルク:7.1kg-m/4300rpm
ギアボックス:4速マニュアル/後輪駆動


シンガー・シャモア・スポーツ(1966〜1970年/英国仕様)

この続きは、RRでミニ・シリーズに勝負(2)にて。