記事のポイント サンダルブランドのチャコはフィッシュワイフやワッフルハウスなど多彩なコラボを仕掛け、収益とSNSでの熱量を高めている。 ワッフルハウスとの真夜中発売キャンペーンでは新規顧客を獲得し、コミュニティとの関係を強化している。 リ・チャコを活用したクラウドソーシングやデザインコンテストで、顧客の声を即座に製品開発へ反映させている。
サンダルブランドのチャコ(Chaco)は、混雑したアウトドア市場での競争を視野に、パートナーシップと製品に関するマーケティング戦略を強化している。過去3カ月間だけでも、チャコは数多くの話題のコラボレーションを展開しており、それが大きな収益とソーシャルエンゲージメントをもたらしたと、同社のマーケティング担当幹部がModern Retailに明かした。5月、チャコは缶詰の魚のブランド、フィッシュワイフ(Fishwife)とコラボレーションを行い、人魚にインスパイアされたサンダルを発表した。そして6月には、ボブ・マーリーの家族とともに「ライブワンラブ(Live One Love)」サンダルを発売。さらに7月には、ワッフルハウス(Waffle House)提携して朝食にインスパイアされたサンダルを深夜に発売したが、この商品は24時間で完売するほどの人気を博している。

フィッシュワイフとのコラボ商品

チャコのマーケティングディレクター、ローズ・フルブライト氏は、チャコは「熱狂的なファンがいる」ブランドとのコラボレーションに意欲的だと語る。しかし、フルブライト氏とチャコのマーケティングマネージャーであるケルシー・ダンバック氏が指摘するように、それは同ブランドがいかに顧客の関心に歩調を合わせようとしてきたかという一例にすぎない。チャコは、ユーザー生成コンテンツの共有を拡大し、ファンにキャンペーン画像の制作を依頼したり、顧客がサンダルをパーソナライズするのに活用できるプログラム、リ・チャコ(ReChaco)のためのストラップの色や模様のクラウドソーシングなどを行っている。同ブランドはまた、最新のポップカルチャーのトレンドにも目を光らせており、8月には、テイラー・スウィフトのニューアルバムにちなんで、キラキラしたオレンジ色の限定版ストラップを発表した。一方でチャコは、関税やより大きなマクロ経済の不確実性に直面しているフットウェア業界での生き残りを目指す。チャコの親会社ウルヴァリンワールドワイド(Wolverine Worldwide)は、中国への依存度を削減する取り組みを進めており、6年前には米国製品の40%近くを中国から調達していたが、2026年までに「ほぼゼロ」に減らす計画だ。また、ウルヴァリンワールドワイドは在庫を減らし、バランスシートを健全化するための事業再建戦略のまっただなかにある。その戦略は功を奏しているようだ。8月には四半期売上高が前年同期比11.5%増を報告しており、CEO のクリストファー・ハフナゲル氏は「ここ数年でもっとも強い売上成長」だと述べている。これは、サッカニー(Saucony)やメレル(Merrell)の販売と卸売事業の好調なパフォーマンスによるものだと同氏は説明したが、ウルヴァリンワールドワイドはチャコの売上高については公表していない。

コラボレーションとファンの熱狂

未来に向けた再編を進めるなかで、チャコはパンデミックから引き継がれたハイキングやランニングなどのアクティビティに対する人々の関心の高まりを利用し続けている。「消費者はもっと外に出るようになっている」とフルブライト氏は言う。「人々はスマートフォンから距離を置きたいと考えている。チャコには間違いなく大きなチャンスがある。当社は何をするにしても、意図的でインパクトのあるものにすることに力を入れている」。フルブライト氏とダンバック氏がModern Retailの取材に応じ、チャコが現在マーケティングやコミュニティにどのようにアプローチしているかについて語ってくれた。これには、ワッフルハウスとのコラボレーションを宣伝するために、遊び心のある「You up?(起きてる?)」というテキストメッセージを送る施策も含まれている。以下の抜粋は、わかりやすく簡潔にするために編集を加えている。

チャコのコラボレーション戦術

フルブライト氏:「ソーシャルメディア上で同様のエンゲージメントがあり、熱狂的なファンがいるブランドを探している。人々がそのブランドを身につけることに誇りを感じるようなブランドだ。それがこのコレクターズアイテムを生み出す。また、当社の価値観と一致するブランドは我々にとって非常に重要だ。でも当社で行っているのは、キッチュな食べ物[のコラボレーション]だけではない。自社の分野で本当にクールなことをやっている隣接するアウトドアブランドや、アパレルファッションブランド、飲料ブランドなどとも話し合いをしている。異なるKPIで異なる分野にアタックすることは、まさに大きな学びがある」。ダンバック氏:「さらに付け加えるなら、我々は消費者に目を向けている。当社の顧客はアウトドアが好きだが、それ以前にひとりの人間だ。ではほかにはどんなことが、その人たちのライフスタイルに結びついているのか。缶詰の魚や「サーディンの夏」に興味を持ってもらえるか。消費者のライフスタイル全体を見ながら、驚きを感じさせつつも、その人自身のありかたに沿うような方法で当社をアピールできる場所はどこなのかを探ろうとしている」。

ワッフルハウスキャンペーンの制作過程

フルブライト氏:「『24時間年中オープントゥでいる』というコンセプトについて、たくさん議論を重ねた。ワッフルハウスは、友達と出かけたあと、真夜中に行くことができる場所だし、ハイキングの前に行くことも、あるいはその翌日に行くこともできる場所だ。チームは、その24時間年中無休というアイデアを打ち出したいと考えていた。そこで、製品を真夜中に当社のサイトでリリースした。我々は『起きてる?』というテキストメッセージを送り、それからメールも送信した。[その製品を]ソーシャルメディアにも投稿したところ、爆発的に話題になった。当社でソーシャルを担当するテイラー[・ステレンバーグ氏]は、朝までずっとコメントや質問に対応していた。『本当に真夜中にサイトに来てくれる人なんているのかな』と半信半疑だったが、人々が商品をカートに追加したり共有したりするのを目にするのはすばらしい経験だった。そのようなわけで、売上の大部分は真夜中に行われた。[そのキャンペーンで]、まさに多くの新規顧客を獲得した。また実際、[ソーシャルの]投稿にコメントした人のなかには、過去に当社の消費者調査に参加してくれた人もいた。つまり、これまで姿を見せなかった人々が次々と現れて、チャコと交流しはじめた。本当に興奮する出来事だった」。

より草の根的なマーケティングアプローチ

ダンバック氏:「ソーシャルは、ものごとに命を吹き込むために当社が活用している主要なチャネルのひとつ。当社の消費者はデジタルで深くつながっていて、つねにオンライン状態だ。我々はインスタグラムやTikTokで何かをテストする方法を模索している。また、さまざまなタイプのコンテンツを試すようにしているので、よりカジュアルでおもしろい変わったコンテンツ、舞台裏のコンテンツ、チームへのインタビュー、消費者のアンケートなどにも力を入れようとしている。これはただこちらが一方的に話すのではなく、コミュニティとのつながりを感じられるような、とてもすばらしい方法だ」。フルブライト氏:「コンテンツについても、これまでとは違う考え方をしている。消費者はすでにチャコでクールなことをしている。だから、こちらがタレントや衣装、メイクを使って[撮影で]それを作り出そうとするのではなく、消費者のところに行ってブランドの顔になってもらい、そのストーリーを語ってもらうほうが、ずっと本物らしい感じがする。たとえば、ワッフルハウスのクリエイティブはレイチェル・ウェーバー氏という写真家が撮影しているが、彼女はテネシー州の大学生だ。ワッフルハウスがタグ付けされた写真を見ていて、彼女を見つけた。それで彼女に連絡を取った……ウェーバー氏は本心からチャコを気に入っているし、ワッフルハウスのことも本当に大好きなのだ。チャコを心から愛している人々がまさにチャコらしいことをしている、ということを示す公式を解き明かそうとしている。もちろん、崖から川に飛び込むような行動は驚異的だし、憧れる。でも、朝一番にぐしゃぐしゃな髪でテントから出てきた人に、友人が一杯のコーヒーを差し出すという瞬間はどうだろう? 我々が興味を持っているのは、完璧ではないけれども消費者の気持ちに結びつくような、物事の隙間にある、そんな瞬間だ」。

リ・チャコを活用した製品開発

フルブライト氏:「ソーシャル上で非常にエンゲージメントの高い消費者と、[ミシガン州ロックフォードの当社のオフィスから]通りを隔てた場所にリ・チャコ(ReChaco)という施設が存在するという事実を結びつける公式を解き明かすことができた。その施設ではサンダルを修理しているので、20年前のサンダルを送ってもらえれば、靴底を張り替えてもらえる。でも、そこにはカスタム[サービス]もあるので、やろうと思えばチャコのサンダルに自分の顔をプリントすることも可能だ。このふたつの要素をうまく使ってテストができる。そこで、ヒョウ柄が流行っていたときに、ストラップにヒョウ柄を施した製品を作った。通りの向こうで250[ユニット]を製造し、2日で完売した。それから[別の]投稿で、『当社のアーカイブからこれまで公開したことのないストラップデザインをたくさん紹介。あなたの好みはどれ?』と尋ねた。実際問題として、もし皆が『バナナストラップ』と答えたなら、明日にでも作ることができる。これがチャコブランドにとって本当に重要な公式だと思っている。消費者の声を直接製造部門に伝えることができるのは、非常に強力だ。この秋には、『次のストラップをデザインする』コンテストも実施する。そこから5点の候補を絞り込み、その後、みんなが採用したいデザインを『チャコの民』に投票してもらう。ほかのブランドでも同様の取り組みは行っているが、当社ならではの点は、10日ほどで製品を現場に投入できること。もちろんそれが成功すれば、今後も継続していくことを検討する」。[原文:Behind Chaco’s 2025 marketing playbook, from collaborations to contests]Julia Waldow(翻訳:Maya Kishida、編集:戸田美子)Image via Chaco