CPG ブランドが抱えるプレッシャー。原材料不足、価格高騰のなかで

記事のポイント
大手による高額買収が注目される一方で、多くの食品スタートアップは収益化や売却に至るのが難しいのが実情。
新興ブランドは原材料高騰やコスト増に苦しみ、リソース豊富な大企業との価格・品質競争に不利な立場にある。
食の嗜好やトレンドの変化が早く、差別化と陳列棚の確保には絶え間ない製品改良と革新が求められている。
大手による高額買収が注目される一方で、多くの食品スタートアップは収益化や売却に至るのが難しいのが実情。
新興ブランドは原材料高騰やコスト増に苦しみ、リソース豊富な大企業との価格・品質競争に不利な立場にある。
食の嗜好やトレンドの変化が早く、差別化と陳列棚の確保には絶え間ない製品改良と革新が求められている。
年に一度のナチュラルプロダクトエキスポウェスト(Natural Products Expo West)カンファレンスで、CPGの幹部たちは来年について期待と不安の両方を抱いていた。
また、このディールでケビンズナチュラルフーズは8億ドル(約118億円)の価値に評価されたと報じられている。
しかし、このようなディールはごくまれだ。食品スタートアップは、短期的には流通やマーケティングのコストに加えて卵やカカオのような原材料の価格変動などの圧力にどう対処するかにもっとも注力している。一方で小売業者はブランドに、急速に変化する嗜好や食のトレンドに対応する手助けになることを期待している。
米モダンリテールが話を聞いた幹部によると、小売業者と顧客の期待はかつてないほど高まっているという。一部の企業は課題を成長の機会に転換しようとしているが、生産と流通のコスト上昇からほかのスタートアップや大手CPGとの熾烈な競争に至るまで、あらゆることに関して慎重な空気が漂っているという。
新興ブランドvs大企業
ピザカップケーキ(The Pizza Cupcake)の共同創業者であるミシェル・ヒメネス氏は、食品スタートアップは規模の拡大に関しては不利な立場にあると語った。
同氏とその夫で共同創業者のアンドレア・メギアト氏は、同ブランドの最新の冷凍食品で、今年5月に全米のターゲット(Target)で発売される予定の朝食用カップケーキのサンプリングをするためにエキスポに参加していた。また、同ブランドは主力商品であるペパロニとマルゲリータのピザスナックをターゲットの300店舗で販売していたが、これを1500店舗にまで拡大しようとしている。
「新興ブランドである我々にとって最大の課題は、我々が理論上持っていない規模とリソースを持つ大手既存企業と競争しなければならないことだ」と同氏は述べた。「使っている原材料の条件が違うのに、消費者は製品が同じ条件で提供されることを期待している。それはとても難しい」。2018年に設立されたピザカップケーキは現在、クローガー(Kroger)やウォルマート(Walmart)などの小売店を通じて全米で販売されている。
健康志向のブランドの多くはプレミアム価格で販売しているため、規模をどんどん拡大させるという期待に応えるのは困難だと、ヒメネス氏は言う。多くの家庭が価格に敏感になっている時代には、特にそうだ。「もっと多くの人に手にとってもらえる方法があればいいとは思う」と同氏は語り、こう続けた。
「しかし、大量販売しているわけではなく、原材料の特徴も大きく異なるため、ある特定の価格にまで引き下げてほしいといわれても、それは本当に難しい」。たとえば、ピザカップケーキはBHA(ブチルヒドロキシアニソール)を含まない本物のモッツァレラチーズとペパロニを使用しているが、ヒメネス氏によると、これは人工的に合成した代替チーズよりはるかに高価だという。
ひとつの棚でブランドを差別化することの難しさ
挑戦者の立場にあるブランドは互いに争っているだけでなく、健康志向の商品を自社ブランドで発売しているプライベートブランドや大手食品メーカーとも争っている。2月、大手飲料メーカーのコカコーラ(Coca-Cola)はプレバイオティクスソーダ(腸に良いソーダ)を発売すると発表したが、これは、この分野のリーダーであるポッピー(Poppi)やオリポップ(Olipop)と直接的に競合するものだ。
「見てわかるとおり、この分野全体が活況を呈している」とシリアルブランドのカタリーナクランチ(Catalina Crunch)でシニアマーケティングマネージャーを務めるカトリーナ・ウィンケル氏は、エキスポウエストの光景を指差して述べた。カタリーナクランチは、ほかの多くのブランドと同様に、絶えず新しさを提供する必要性を感じている。さらに、多くの企業が同じ陳列棚のスペースを取り合っているなかで、ブランドを差別化することは難しいとも感じている。
低糖質の朝食やスナックを製造しているカタリーナクランチは2017年に設立された。「私がこのブランドに入社した5年前は、シリアルと1種類のクッキーしかなかった」とウィンケル氏は語った。同ブランドは、2年前にはじめて低糖質、高繊維、高タンパクの製品に進出した。2023年からはスナックミックスや低糖質のチョコレートバーも発売している。
絶えず繰り返し、革新を続けるというプレッシャーの多くは、消費者の食の好みの変化から生じている。カタリーナクランチの創業当初、食の好みの大部分はケトジェニックダイエットやグルテンフリーの選択肢に集中していた。今年のエキスポで明らかになったとおり、今のトップはタンパク質だ。「だからこそ、今はタンパク質製品と繊維質製品を揃えている」とウィンケル氏は述べた。同社は4月に、パッケージを刷新して食味を改善した新しい高タンパク質グラノーラなど、これらの製品の改良版を発売する。
原材料不足、価格高騰……
現在は、多くの小売業者が栄養価の高いおいしいスナックやデザートを販売したいと考えている。カタリーナクランチは2021年にはじめてのクッキー製品を発売したが、ここ数年はチェックスミックス(Chex Mix)やオレオ(Oreos)などの健康志向版の提供に力を注いできた。ウィンケル氏によると、どちらの製品も好調だという。
小売業者からの期待に応えることに加え、コストの上昇も多くのCPG幹部を悩ませている。そして、これはスタートアップだけの問題ではない。何十年もの歴史がある企業でさえ、価値と価格で競争する必要があると、ますます神経を尖らせている。
プラントベースミルクメーカーのカリフィアファーム(Califia Farms)のCEOであるデイブ・リッターブッシュ氏は、関税の猛攻に直接さらされているわけではないが、サプライチェーン全体の不安定さは懸念していると語った。「世界中で大きな変動が起きている」と同氏は述べ、インフレや関税コストだけでなく、気候の変化による長期的な変動もあると指摘した。
結局、原材料不足や価格高騰への対処はモグラ叩きゲームのようなものかもしれない。主要原材料の問題がひとつ解決すると、別の問題が発生する。
リッターブッシュ氏は、「たとえば、今週はコーヒーの価格が史上最高値を記録した」とリッターブッシュ氏は述べた。「1年と少し前は1ポンド(約454グラム)が1.6ドル(約237円)だったが、今は4ドル(約592円)以上だ。そうした流れに加え、ほんの少しの気候変動や気候事象が起きただけでも、チョコレートやコーヒーなどの価格は上昇する」。
新興のCPGブランドがプレッシャーを受けながら全国展開をめざすなか、小売業者や買い物客の期待は高まっている。カタリーナクランチのウィンケル氏は、計算しつくしたいい製品を提供する場合でも、プレミアム価格で販売する場合は特に、製品の味も良くする必要があると述べた。「だからこそ、すべての製品を刷新した」とウィンケル氏はいう。「競争するには、味と食感も良くしなければならないことはわかっている」。
[原文:DTC Briefing: CPG brands face growing pressure to offer retailers constant newness amid rising costs]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:島田涼平)
