米国で話題の「 共和党メイク 」。政治的表現にブランドが乗ってしまう危険性

記事のポイント
TikTokで話題の「共和党メイク」は、濃い眉や厚塗りファンデなど、保守派女性を風刺したメイクトレンドとなっている。
メイクは美意識やライフスタイルの表現手段であるが、政治的立場も含むようになってしまった。
「ブランドは政治色を避け、包摂性や環境保護など自社の価値観を強調すべき」と専門家は指摘している。
TikTokで話題の「共和党メイク」は、濃い眉や厚塗りファンデなど、保守派女性を風刺したメイクトレンドとなっている。
メイクは美意識やライフスタイルの表現手段であるが、政治的立場も含むようになってしまった。
「ブランドは政治色を避け、包摂性や環境保護など自社の価値観を強調すべき」と専門家は指摘している。
2月上旬、TikTokユーザーのアメリア・ジェームズ氏は、「共和党メイク」と題した動画を投稿し、自身の肌に比べて少し暗い色のファンデーション、濃い眉、太い黒のアイライン、薄いピンクのオーバーリップ(自分の唇よりも外側にリップラインを引く技法)を披露した。
いわゆる「共和党メイク」は、メイクしたことがほとんどわからないようにする「クリーンガールビューティー」のような、より現代的なスタイルとは対照的だ。TikTokerたちは、報道官のカロリン・リービット氏のような人物を例に挙げて、暖色系のファンデーションを厚塗りして濃いアイメイクを施した「共和党メイク」について解説している。一方、保守派のユーザーは、斬新な色のアイシャドウや明るい色のファンデーションを使った「リベラルメイク」や「民主党メイク」を投稿している。
何らかの美容トレンドに参加するユーザーにとって、黒のアイライナーや青のアイシャドウのような製品は、美意識を表現する手段であることはもちろん、より広いライフスタイルに関する憧れを表現する手段でもあることが多い。そして、「共和党メイク」や「民主党メイク」が台頭したことによって政治的立場まで含まれるようになった。
流行りに乗るのは危険?
「人々は美意識や外見を、自分の今のライフスタイル、あるいはめざしているライフスタイルの代弁者として使っている」と、消費者トレンドエージェンシーのスペート(Spate)でマーケティングおよびインサイトリーダーを務めるアディソン・ケイン氏は述べた。「たしかに、ワシントンからは非常に特異な美意識が生まれている。いわゆるマールアラーゴ(Mar-a-Lago)顔も、ここで見られるひとつのトレンドだ。人々はそれについて、パロディや風刺を通じてコメントしている」。
ケイン氏は、「メイクアップは比較的手頃なため、SNSに登場するクリーンガールのような憧れの美意識を表現する手軽な手段になっている」と指摘する。しかし、ブランドは特定のルックに憧れる消費者に取り入るために「デミュア(控えめ)」や「ブラットガールサマー」のような流行りのソーシャルトレンドに乗っかることが多いが、「共和党メイク」をあからさまに商業的に利用することは政治的に危険すぎるかもしれない。
「ブランドは、その価値観を明確に定義し、一般に向けて一貫して守ることで成功する。しかし、政党は複雑に混ざり合った信念を代表しているため、ブランドの中核となる価値観と完全には一致しないことが多い」と、ソーシャルメディアマーケティングエージェンシーのムーバーズアンドシェイカーズ(Movers+Shakers)のCEOで創業者のエバン・ホロウィッツ氏は語った。
あからさまに政治的な立場を取ることには注意が必要
フェンティ(Fenty)が幅広いファンデーションの色を展開したり、創業者が非白人であるブランドをセフォラ(Sephora)が後押ししたりするなど、多くの美容企業にとって包摂性などの社会的価値観はパブリックブランディングの一部となっている。同時に、こうした価値は政治化されている。ただ、ターゲット(Target)などの大手企業は、第2次トランプ政権の発足後、DEIの取り組みから距離を置いた。
ホロウィッツ氏は、たとえそれでバイラルトレンドを逃すことになるとしても、あからさまに政治的な立場を取ることには注意が必要だとブランドにアドバイスしている。「ブランドには、特定の政治家や政党を支持したり、現在の共和党メイクのトレンドに乗ったりしないようにとアドバイスしている。代わりに、DEIや環境保護など自社が支持する価値観を擁護するべきだ」と同氏は述べた。
このトレンドは製品の宣伝には役立たないかもしれないが、何人かの創業者はうまく会話に参加する方法を見つけている。このほど、スキンケアブランドのデュー(Dieux)の創業者であるシャーロット・パレルミノ氏は共和党メイクのトレンドについてコメントする一連のTikTokを投稿し、「共和党メイクをからかう人たちはその下手なメイクアップ技術をパロディ化していることが多く、このメイクの大半は女性らしさの演出に関連している」と指摘した。
「共和党員なら、男性からの視線の下で行動しなければならないだろう」と同氏はTikTokで述べた。「ドラァグクイーンから話を聞く時間は増やした方がいいというのは本当かもしれない。なぜなら、最高のメイクアップ技術、特に顔を女らしくする技術を見て学びたいなら、ドラァグクイーンをおいてほかにはない」。
近年共和党の政治家は、子どもたちのためのドラァグクイーンによるストーリータイムのようなドラァグパフォーマンスを禁止しようとしてきた。
メイクは表面的で、多くの美容ファンにとって一種の現実逃避となっているが、リベラル派と保守派によるメイクアップパロディの台頭は、肌の深層よりも深くまで訴求できる美容の力を浮き彫りにしている。「共和党メイクのトレンドを見ると、多くの動画が侮辱的だ」とケイン氏は言う。「美意識は個人的であるがゆえに、さまざまな方法で行使できる」。
[原文:What’s up with ‘Republican makeup’?]
Emily Jensen(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:島田涼平)
