不動産相続は「相続税を節約」するポイントに? 土地の評価額を計算するとポイントと節税におけるコツを紹介



相続税評価額の計算の仕方
以下に示す表1は東京都内の中古ワンルーム・マンションを想定した上で、その時価(実勢価格)、自分で居住している場合(「自用」といいます)、賃貸している場合について、それぞれの相続税評価額の目安を比較したものです。
表1
(=実勢価格) 2 自用の場合の
相続税評価額 3 賃貸中の場合の
相続税評価額 建物 2000万円 1200万円 840万円 土地(敷地権割合) 800万円 560万円 442万円 合計 2800万円 1760万円 1282万円 時価の合計額に占める比率(四捨五入) 100 63 46
ワンルーム・マンションの時価
このケースにおけるワンルーム・マンションの時価は2800万円で、そのうち建物は2000万円、土地(マンションの場合は敷地権という)は800万円とします。また、相続税評価額の計算を行うに当たって、以下の表に前提となる比率を設けます。
ここでは60とする 路線価(土地の場合) 80 66~73
ここでは70とする
注:
実勢価格:実際に不動産が売買される価格です。公示地価や、建物の固定資産税評価額と比べ、10~20%は高い傾向にあります。
公示地価:国土交通省が毎年3月に公示する標準地の価格です。
建物の固定資産税評価額:建物の場合は、この額が相続税評価額として扱われます。建物の固定資産税評価額は建物の課税標準額の70%とされています。
路線価:土地の場合は、路線価が相続税評価額になります。土地の公示価格の80%が目安とされています。
通常(自用)の建物・土地の相続税評価額の計算
(1)建物の相続税評価額
通常、建物の相続税評価額は、固定資産税評価額(当記事では、建物の実勢価格の60%とする)で表されます。
上記の例の場合、固定資産税評価額は、(2000万円×60%=)1200万円となります。
(2)土地の相続税評価額
通常(自用)の土地の相続税評価額となる路線価を、大まかに土地の実勢価格の70%として考えると、通常の土地の相続税評価額は(800万円×70%=)560万円となります。
上記(1)と(2)より、通常(自用)の建物・土地における相続税評価額を合計すると、(1200万円+560万円=)1760万円となります。これは、時価2800万円の約63%に当たります。
賃貸中の建物・土地の相続税評価額
(1)建物の相続税評価額
固定資産税評価額1200万円の建物が賃貸されている場合は、自用の場合よりも相続税評価額が少し少なくなります。貸し出し中の建物評価額は、「建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)」という式で算出されるからです。
そのため、仮にこのワンルーム・マンションが貸付用で、借家権割合(全国一律で30%と規定されている)が30%だとすると、建物評価額は(1200万円×(1-30%×100%)=)840万円に下がります。
(2)土地の相続税評価額
固定資産税評価額560万円の土地が賃貸されている場合は、借地権割合と借家権割合を踏まえて計算します。
具体的には、貸家建付地評価額を「自用地としての相続税評価額×(1―借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」という式で算出します。
例えばこの貸付用マンションの土地について、借地権割合が70%、借家権割合が30%、賃貸割合が100%(空室なし)だとすると、貸家建付地評価額は(560万円×(1-70%×30%×100%)≒)およそ442万円となります。
なお、「借地権割合」の考え方は以下の注のとおりですが、今回の計算に当たっては、この割合をC(70%)としました。
注:借地権割合は30%~90%の範囲で、地域によって決められている。国税庁発行の「路線価図・評価倍率表」を見ると、路線価とともにA~Gに分類されている。
例えば、対象地の路線価が「180C」ならば、路線価が「180千円/平米」で、借地権割合が「C(70%)」となることを示している。
記号と借地権割合は、以下のように対応している。
割合 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30%
まとめ
今まで見てきたように、現金で相続するより、都内のワンルーム・マンションを買って相続すると、相続税評価額は下がります。具体的には、相続によって評価額が実勢価格の63%になり、それを賃貸した状態で相続すると、さらに下がって46%になります。
おおざっぱにいうと、通常の不動産を相続すると、相続税評価額が約40%安くなり、賃貸不動産では約55%安くなります。
勿論、マンションでなく一戸建や、物件がもっと大きくなる場合の割合は若干異なりますが、上記の数字は節税の目安となるのではないでしょうか。不動産による相続税節税の有効性が、この記事を通して理解できたと思います。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー