スライド作成ソフト「PowerPoint」の共同開発者であるデニス・オースティン氏が亡くなりました。76歳でした。

Dennis Austin, software developer who created PowerPoint, dies at 76 - The Washington Post

https://www.washingtonpost.com/obituaries/2023/09/08/dennis-austin-software-developer-powerpoint-dies/

PowerPoint co-creator Dennis Austin is dead at 76 - The Verge

https://www.theverge.com/2023/9/9/23865578/dennis-austin-powerpoint-co-creator-died

Beginnings of PowerPoint - 102745695-01-acc.pdf

(PDFファイル)https://archive.computerhistory.org/resources/access/text/2012/06/102745695-01-acc.pdf

オースティン氏はマサチューセッツ工科大学やカリフォルニア大学サンタバーバラ校で工学を学んだ後、1984年からソフトウェア開発企業「Forethought」に就職し、同社で働いていたロバート・ガスキンズ氏と共にスライド作成ソフトの開発を始めました。

スライド作成ソフトは「Presenter」というコードネームで開発が進められたとのこと。オースティン氏は回顧録の中でPowerPointの命名について「出張中に、ボブ(ガスキンズ氏)が飛行場の滑走路に設置された『Power Point』という標識に目をとどめました。この名前は商標登録を通過し、私たちは『About PowerPoint(PowerPointについて)』画面の開発に取り組みはじめました」というエピソードを語っています。

また、オースティン氏は「ボブは私と一緒に何時間もアイデアを練り上げてくれました。私のデザインはボブのフィードバックを反映したものでした。私たちの共同開発プロジェクトを建築作業に例えると、ボブが『理想の家を建てたい』と言い、私は彼の建築家のように振る舞いました」と述べ、PowerPointの開発に両氏が共に大きく貢献したことを明かしています。ガスキンズ氏も著書「Sweating Bullets: Notes about Inventing PowerPoint」の中で「(オースティン氏が)主要なアイデアの少なくとも半分を思いつきました。もし彼が開発に参加していなければ、誰もPowerPointの名を聞くことはなかったでしょう」と述べ、オースティン氏の貢献の大きさを強調しています。

PowerPointは1987年にリリースされましたが、リリース当初はMacintosh(Mac)にしか対応しておらず、Windowsでは動作しませんでした。MicrosoftはPowerPointのリリースから数カ月後にForethoughtを1400万ドル(当時のレートで約21億円)で買収。この時、買収を報じたThe New York Timesは「Microsoft初の大規模買収」と記していました。

その後、1990年にWindows向けのPowerPointがリリースされました。Microsoftによる買収後も1996年に退職するまでPowerPointの開発にかかわり続けました。コンピュータ歴史博物館が実施したインタビューで、オースティン氏は1992年リリースの「PowerPoint 3」まで主要な開発者として関わっていたと話しています。



記事作成時点では、PowerPointはWindowsやmacOS、iOS、AndroidなどのOSで動作するだけでなく、オンラインツールとしても提供されています。