バルセロナ戦で奮闘した久保建英【写真:Getty Images】

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【スペイン発コラム】バルセロナ戦で先発出場した久保、決定機を演出して存在感

 スペイン1部レアル・ソシエダは、1月25日のスペイン国王杯準々決勝でFCバルセロナと対戦(0-1)。

 数的不利の厳しい展開のなかでも久保は最大の決定機を演出し、存在感を発揮した。

 先週末のラ・リーガ第18節ラージョ・バジェカーノ戦(0-2)、久保はベンチ入りするも出場することはなかった。試合後、バスに乗り込む際に「筋肉に少し張りがあり、2連戦なので試合前に監督と話し、今日は休むことになった」と説明した。大腿四頭筋に問題があったとのことだが、次戦バルセロナ戦の出場に関しては「大丈夫」と話していた。

 迎えたバルセロナ戦、その言葉どおりに久保は、少年時代を過ごした古巣相手に公式戦3試合ぶりに先発出場。ダビド・シルバやミケル・メリーノなどの主力を含む7人が負傷欠場したため、久保は中盤ダイヤモンド型の4-4-2のトップ下でプレーした。対するバルセロナは怪我人が1人もいない万全の状態であった。

 厳しい状況下に加え、ソシエダはカンプ・ノウでの公式戦30試合連続未勝利、26連敗中と苦手なスタジアムでの対戦とあり、そのデータどおりの試合展開となった。バルセロナは右サイドで爆発力を見せたウスマン・デンベレを中心に攻撃した一方、ソシエダは守備を固めてカウンターを狙っていく。

 序盤からチームが押し込まれたことにより、久保もほとんどの時間を守備に費やすことになる。時折カウンターを仕掛けるも、仲間からのフォローが足りずにチャンスにはつながらない。そんななかでも前半30分にチャンスを掴み、久保がペナルティーエリア内左45度の位置から左足を振り抜いたが、惜しくもクロスバーを直撃し、先制点とはならなかった。攻めあぐねいたソシエダにとって、これが前半唯一のシュートであった。

 そして前半終了間際、ブライス・メンデスがセルヒオ・ブスケッツへのハードタックルで一発退場となる。その直前のプレーでブスケッツが久保に激しいタックルを浴びせていたため、疑問の残る判定だったが、ソシエダはさらに厳しい状況に追い込まれていく。

スペイン各紙が久保のパフォーマンスを高評価「最も脅威となった」「ペドリでさえも…」

 数的不利の厳しい状況を改善すべく、イマノル・アルグアシル監督は後半開始時に2人入れ替え5バックを敷き、前半以上に守備的スタイルを選択。久保のポジションは左サイドに変更された。しかし後半7分、右サイドでDFライン裏に上手く抜け出した絶好調のデンベレがペナルティーエリアに進入し、GKアレックス・レミーロの手を弾く強烈なシュートで先制点を記録した。

 数的不利のなか、久保は後半14分に切れ味鋭いドリブルでペドリのイエローカードを誘発。そして同15分には、左サイドから正確なグラウンダーのクロスで、この日最大の決定機を演出するも、ゴール前で合わせたアレクサンデル・セルロートのシュートは大きく枠上を越えてしまい得点とはならなかった。

 久保はチーム中で、この日一番チャンスを作り、強い存在感を放ったものの、チーム力の差および数的不利の劣勢な状況を変えることはできず、後半33分にピッチを去った。

 試合は、退場者を出しながらも組織的な守備で追加点を与えないソシエダが終盤、同点の決定機を得るも最後までゴールを奪えず、0-1で準々決勝敗退となった。またこの敗戦によりクラブ公式戦連勝記録が9でストップした。

 スペイン各紙は、アスレティックとのバスクダービーで2ゴールに絡む素晴らしいパフォーマンスを見せた時と同様に、この日の久保を軒並み高評価した。

 クラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「ラ・レアルの攻撃で最も脅威となった選手。左足の強烈なシュートはテア・シュテーゲンを抜くもクロスバーを叩き、ゴール前にいたセルロートへのパスで後半のベストプレーを生み出した。さらに久保のドリブルは、それを止めるためにペドリでさえもカードをもらう必要があるほど危険な状況を作り出していた」と称賛し、4点(最高5点)をつけた。また、スペイン紙「マルカ」や同紙「AS」の久保評価も2点(最高3点)と高かった。

ソシエダ番の現地記者が久保の「フィジカルコンディション」について言及

 スペインのラジオ局「カデナ・セル」でソシエダ番を務めるロベルト・ラマホ記者はアウェーの地での試合後、久保のパフォーマンスについて次のような意見を聞かせてくれた。

「今日はベストコンディションではなかったので、アスレティック戦のようなダイナミックな動きを欠いていた。それでもプレスをかけられた時はもっと決定的な役割を果たす必要があった」と相手の激しいチェックに苦しむ様子が見られた点を指摘。しかし、「前半、最大の決定機を作ったのは久保だった、としっかり伝える必要がある」とポジティブな点を挙げていた。

 続いて、「イマノルが言うように久保は献身的でとても規律正しく、常に試合に出る意欲にもあふれている選手。そんな彼だが、今は試合数の多いシーズンの厳しい時期を迎え、ギリギリの状態にある。他のチームメイト同様、フィジカルコンディションがあまり良くない状況なので、今日はあれ以上多くのものを求めてはダメだ。本当ならもっと休ませなければいけないが、この後、多数の怪我人を抱えるなか、強豪のレアル・マドリード戦を控えているので立ち止まることができない」と話した。

 また、退場者を出したソシエダが後半、5バックで戦ったことについて、「タイトな日程や怪我人が多いなか、選手たちは本当に疲れた状態で今日の試合を迎えていたので、ほかの選択肢が残されてなく、あのように戦わざるを得なかった。今日は主力選手であるミケル・メリーノやシルバが欠場し、ブライス・メンデスも退場となってしまった。ダイヤモンド型の4-4-2の中盤を形成する4人のうち、スビメンディ以外の3人が不在の試合ではプレーに大きな制限があった。そのため、うしろに引いてゴールを固め、チャンスを仕掛けるタイミングを虎視眈々と狙う以外になかったが、3度訪れた決定機を生かすことができなかった」との見解を述べた。

迫るレアル・マドリード戦、久保にとって苦い思い出の地で成長ぶりを見せるか

 ソシエダは現地時間1月29日、ハードな1週間を締めくくるべく、アウェーでレアル・マドリード相手のタフな戦いに挑む。

 現在リーグ戦3位につけるソシエダにとって、2位の昨季王者は超えなければならない高い壁となる。しかしこれまで順調に勝ち星を積み重ね、今はその背中が見えているところにまで迫っているため、この一戦はリーグ後半戦の行方を占う試金石となるかもしれない。

 久保にとって、レアルの本拠地サンティアゴ・ベルナベウはマジョルカ時代の昨季、膝に全治2か月の重傷を負った苦い思い出の地となるが、ソシエダでのここ5か月での成長ぶりを見せる絶好の機会となるだろう。(高橋智行 / Tomoyuki Takahashi)