賞金総額2億円、優勝賞金3600万円をかけて争われる秋のビッグトーナメント、NOBUTA GROUP マスターズGCレディース(マスターズGC/兵庫県)。

 最終日は大混戦となった。3日目に「64」をマークし、2位と3打差の14アンダーで首位に立ったテレサ・ルーがこの日は一転、スコアを崩し、まさかの失速。稲見萌寧、イ・ボミ、柏原明日架、小祝さくらの4人に優勝のチャンスが巡ってきた。

 勝利をものにしたのは、この日、「66」で回った柏原。17番(パー3)でバーディーを奪って単独首位に立ち、混戦に決着をつけた。先月のミヤギテレビ杯ダンロップ女子での初勝利に続く、ツアー通算2勝目。初優勝より難しいとされる2勝目を、間を置かずに達成した。


パットが決まらず、スコアを伸ばせなかった渋野日向子

 優勝スコアは、14アンダー。トップのスコアは3日目までと変わらなかった。6アンダー、9位タイで最終日を迎えた渋野日向子にも、結果的には上位に進出するチャンスはあったことになる。

 2番(パー4)で1m強のバーディーパットを決め、通算7アンダーとした渋野は、この日もショットが好調だった。その後も、3番、4番、5番、6番、7番と、バーディーチャンスと言えるシーンが立て続けに訪れていた。この前半の数ホールで1つ、2つ決まっていれば、波に乗った可能性はある。

「パッティングが全然決まらなかった」「残念です」「悲しかった」と、試合後の渋野は、言葉を絞り出すように述懐した。

 2つ目のバーディーを奪ったのは、8番のロングホール。今日イチの見せ場でもあった。

「3打目は残り80ヤード。56度(のウエッジ)で打ちました」と渋野。ピン奥、2〜3mに着弾すると、間髪入れずにギャラリーの歓声が沸いた。さらに、バックスピンがかかったボールは、ピンに向かっていい感じで転がっていく。1m、50cm、30cm……止まった場所は、カップ際10cmだった。

「スピンは計算していました。ピンの手前は傾斜が強かったので怖さはありましたけど、風がフォローだったので、思い切って突っ込んでいきました。もうちょっとでしたね。入ってくれればよかったのに」(渋野)

 最終日、渋野が奪ったバーディーは3つ。前述の2番とこの8番、そして15番のロングホールだった。

 15番はしかし、多くの選手に2オンの可能性があり、平均スコア4.68という、いわばサービスホールだった。渋野も2オンに成功。5〜6mのイーグルパットを外した末のバーディーだった。

「ナイスパット!」と歓声が上がるような、”パット力”で奪ったバーディーは、結局1つもなかった。

「ショットはよくて、パッティングがヤバい状態。後半は、19パッドですからね。タッチはだいたい合っていましたが、ラインの読み違えかな……。

 ショットが悪かったらどうしようもないですけど、パッティングって、やっぱり入ればスコアはかなり上がりますし、伸ばせる可能性があるゴルフではあった。だから、もうちょっとスコアが出たらよかったかなと」

 最終日のプレーはイーブンパー。通算6アンダー、12位タイで渋野は大会を終えた。

 賞金女王争いを繰り広げる申ジエは、通算8アンダー、8位タイ。大会前約600万円だった2人の差は、およそ800万円に広がった。それでも、最終18番ホールで、申ジエが短いパットを外さなければ、その差は1000万円以上に開いたので、渋野にはツキがあると言えるのかもしれない。

 しかし、自嘲気味にというか、謙虚にというか、渋野はこう述べた。

「『自分が賞金女王になるのは早いな』って。『そんなレベルに達していないのに、失礼なのかな』って思ったりしますけど……。でもやっぱり、目標は高く持ったほうがいい。賞金女王目指してがんばります」

 今シーズンの残りは5試合。だが、渋野は次週の樋口久子 三菱電機レディスを欠場。米女子ツアーのスウィンギングスカートLPGA台湾選手権(10月31日〜11月3日)に出場する。

「楽しみですね。米ツアーの初戦(全英女子オープン)でだいぶインパクトを与えてしまっているので、そこ(米ツアーの舞台)で、今週のようなプレーはできないな、と思っています。今の自分の実力で、どれぐらいの成績が出せるか。世界ランキングのことも考えなくてはならないし、成績を残すことでランキングを維持したり、上げることができるので、しっかりとがんばらなければいけませんね」

 目標を聞かれた渋野は、「今の調子じゃあちょっと……」と言いにくそうにしながらこう言った。

「10位以内」

 好調を維持するショットをスコアに反映させることができるか。渋野の奮闘に期待したい。