軽とコンパクトカーの維持費でもっとも差が広がるのは自動車税!

 最近のクルマは安全装備が充実して環境性能も向上した。好ましい傾向だが、クルマの価格も全般的に高まっている。2019年10月1日から消費税率が10%になり、ますます高額になった。

 その一方で、平均所得は1990年代の後半をピークに下降しており、直近では少し上向いたものの20年前の水準には戻っていない。

 そうなれば新車に乗り替える時、必然的に小さなクルマを選ぶ。以前に比べて小さな車種の商品力が高まり、乗り替えやすくなったこともあるが、ユーザーの置かれた状況はそれ以上に切実だ。

 小さなクルマを買う場合、カテゴリーとしては、軽自動車とコンパクトカーが選択の対象になる。そこでこの2つのカテゴリーの維持費を比べてみたい。軽自動車は維持費が安いといわれるが、具体的にどの程度の差が付くのだろうか。購入後の3年間で比べる。

 サンプルとして、軽自動車はN-BOX G・EXホンダセンシング(164万2300円)、コンパクトカーはマツダ2・15Sプロアクティブ(169万4000円)を選んだ。両車ともに価格はほぼ等しい。

 両車の差額が最も広がる出費は、自動車税と軽自動車税だ。N-BOXの軽自動車税は3年間で3万2400円だが、小型/普通車のマツダ2は、自動車税が1001〜1500ccの区分で3年間なら9万1500円だ。N-BOXは5万9100円安い。

維持費は1年当たり約60000円の差

 また消費増税と併せて、自動車取得税の後継として設けられた環境性能割は、N-BOXが2020年度燃費基準プラス10%を達成して非課税になる。マツダ2は2万7700円だ。

 自動車重量税(3年分)は、N-BOXは25%軽減されて5600円、マツダ2は3万6900円だ。

 自賠責保険料(37か月分)は、N-BOXが3万5610円、マツダ2は3万5780円だから、ほとんど差が付かない。ちなみに2010年の時点では、小型/普通車の自賠責保険料は3万1600円、軽自動車は2万6280円であった。今の差額が減ったのは、軽自動車の保険金支出が増えたからだ。

 自賠責保険料は税金と異なり、軽自動車を安くしているわけではない。保険金支出が低いから、保険料も安かっただけだ。近年はこのバランスが変化してきた。

 従って今後高齢ドライバーの事故増加などにより、軽自動車の自賠責保険料支出がさらに増えると、小型/普通車よりも高額の自賠責保険料を徴収されることも考えられる。

 燃料代はレギュラーガソリン価格が1リットル当たり145円と仮定して、WLTCモード燃費で計算した。3年間に3万kmを走るとして、N-BOXの燃料代は20万円、マツダ2は22万9000円だ。このほかオイル交換(2回)、オイルエレメント交換(1回)、タイヤ交換(1回)の費用も安い。

 以上の税金やメンテナンス費用に購入時の諸費用も加えると、3年間の出費は、N-BOXが38万3250円、マツダ2は55万7970円と算出された。軽自動車のN-BOXは、約17万4000円安い。1年当たり5万8000円の差額になる。

 1台のクルマを所有するなら、この差額で済むが、4台を持っていたら1年間に23万2000円、3年間なら約70万円に拡大する。

 そのために軽自動車は、公共交通機関を使いにくい地域で、1人に1台のクルマとして好調に売れている。鳥取県、佐賀県、長野県などでは、軽自動車が10世帯に10台以上の割合で普及している。逆に東京都は、10世帯当たり1台少々にとどまる。全国平均は10世帯に5台だ。

 今は軽自動車の車内が広くなって安全装備も普及した。価格も割安だから、税金の安さだけが軽自動車のメリットではない。またほかのカテゴリーが海外向けになり、軽自動車は日本のユーザーを見据えて開発される唯一のカテゴリーだから、好調に売れている事情もある。この影響で、東京都でも軽自動車の普及率が高まってきたが(20年ほど前までの東京都は10世帯に1台以下だった)、税金の安さが魅力になるのは、今でも複数所有の世帯だ。