©IZIMA KAORU

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2月2日(土)〜3月3日(日)まで伊島薫氏の個展「あぶな絵 -針と糸、そしてけむり-」が行われる。

女性モデルたちと作り上げた、針と糸、ケムリをからめたヌードフォトシリーズを展示。これらは撮影後に長い年月を経て、壁紙素材を使った新しく美しい出力形態との出会いにより発表可能になった、刺激的な作品だ。

「あぶな絵」という名のとおり、見るものを困惑させるような危険な妄想を具現化した世界であり、彼の真骨頂ともいえる。

女性のきめ細かで成熟した柔肌の表面と構図を写し取ったヌード写真群でありながら、奇妙なことに、それらには無数の針と糸と灸が絡んでいる。全身に突き立った針、顔や身体を締め付けるテグス糸、全身に盛られ煙を舞い上がらせる灸……。

これらは単純なエロティシズムの世界ではなく、視点を変えれば、皮膚に針と糸、煙をまとっただけのファッション写真シリーズともとらえられる。

「あぶな絵」のシリーズ16枚は、長くオクラ入りになっていた”幻の作品”だったという。ある新創刊男性誌から依頼された連載グラビアページ企画が、「過激」だとして書店流通を拒否され打ち切りとなってしまう。

しかし、この事件のおかげで、見る側の感性への強い訴えかけができた、と確信した伊島氏は、長い間このシリーズ発表の機会をうかがっていたという。

転機となったのは、老舗の壁材メーカーのオーナーが伊島氏と「あぶな絵」に惚れ込み、斬新な印刷手法を提案してくれたこと。それは、建築物で使用する塗り壁用のざらざらした素材に工業用インクジェットプリントで吹き付けるというもの。

長辺約120センチの大きな画面で制作しても、表面のザラザラした感触が、逆に写真の肌の透明感を引き立たせ、ヒリヒリした先鋭的なイメージを柔らかく中和させつつ、伊島氏の意図をより受け入れられやすくする手法になった。 

そして新しいフェティシュアート完成した「あぶな絵」ファーストエディションは、2018年9月に京都市・二条のオルタナティブスペース「京都場」で初公開され、まるで豪華な襖絵のような絶景として高い評価を集めた。

同展はその内容を満を持して東京で披露するものである。日本写真界の異端である伊島氏でしかできない着想と、それを刷る支持体のユニークさが掛け合わされた、全く新しいジャンルのフェティッシュ・アートワークをじっくりと鑑賞しよう。

<会期>
2019年2月2日(土)〜3月3日(日)

<会場>
目黒場(東京都目黒区目黒1-23-15-3F)

<開館時間>
14:00〜20:00 会期中無休

<ギャラリートーク>
2019年2月16日(土) 19:00〜20:00
2019年3月1日(金) 20:00〜21:00
※入場無料

詳細は後日「京都場」HPにて公開。
http://kyoto-ba.jp/

(2019年1月23日時点の情報)