「20代は焦らず、30代は自分らしく」ORANGE RANGE・RYOが語るキャリアの築き方
2001年に沖縄県で結成された5人組のロックバンドORANGE RANGEは、今年で活動25周年を迎えました。昨年、SNSをきっかけに『イケナイ太陽』(2007年発売の17thシングル)がリバイバルヒットを記録するなど、再び注目を集めています。そんなORANGE RANGEのボーカルを務めるRYOさんに、キャリアを歩む上での苦労や、青春をORANGE RANGEの楽曲と共に歩んだビジネスパーソンに向けたアドバイスを伺いました。
前編: 「このままでいいのか?」ORANGE RANGE・RYOが、大ブレイクの裏で戦っていたもの
戸惑いながらも必死に作った 『おしゃれ番長 feat.ソイソース』
――ORANGE RANGEは今年で結成25周年を迎えましたが、メンバー同士の良好な関係を築くために、気をつけていることはありますか?
最近は、僕とHIROKIが歌詞を書くことが多いんですが、制作を進めていく中で、どうしても互いの主張にズレが生まれることや、二人で「こういった方向性で歌詞を書きたい」と主張しあってしまうことも少なくありませんでした。
そんなときは二人で話し合ってみたり、互いに歌詞を書いて良いほうを採用したりして、着地点を探っていきます。大切なのは、相手にリスペクトを持ちつつ、状況に応じて自分の意見を引っ込められるかどうか。そして、もし相手に引いてもらったときには、感謝を伝えつつ、他のメンバーの思いも背負って、全力で頑張れるかどうか。
わざわざメンバー間で言葉に出して話すようなことはありませんが、他人の意見にきちんと耳を傾けて、それを素直に受け止められる姿勢を持ち続けることが大切だなと感じます。
――ちなみにRYOさんがこれまでのキャリアで最も制作に苦労されたのは、どの曲ですか?
『musiQ』(2004年12月発売の2ndアルバム)に収められている『papa』や、『おしゃれ番長 feat.ソイソース』(2008年11月発売の20thシングル)とかかな。
メンバーのNAOTOが、あるとき「歌詞に意味を持たない曲を作ろう!」と言い出して。「どうすればいいんだろう?」と必死に悩みながら書き上げました。
――「ハニカミポリスメン」や「あこがれパイナポ」、「すっかりハチベエ 戻ってこーい」といった歌詞は、どのようにたどり着いたんですか?
今はインターネットを検索して、良さそうな言葉を探すこともありますが、当時は辞書を持ち歩き、空いた時間にパラパラと開くようにしていました。いろいろなところを調べて、見つけた言葉を繋ぎ合わせて仕上げたような気がしますけど、この2曲は、書くまでに本当に苦労しましたし、時間もかかった。実際にライブで披露するときも、「意味のない歌詞を、どんな顔で歌ったらいいんだろう?」と戸惑いながら、ステージに立っていたような気がします。
メジャーレーベルを離れて感じた意外なハードル
――2010年に自主レーベル「SUPER ((ECHO)) LABEL」を設立し、インディーズでの活動に戻られました。どういう経緯があったんでしょうか?
2003年のメジャーデビュー以来、ずっと走り続けてきました。活動が大規模になるにつれて、「仕事で出会う相手は僕らのことを知っているのに、僕らは相手の顔と名前が一致しない」というケースが増えてきて、次第に違和感を覚えるようになってきたんです。タイミングの良かった2010年に「僕らの感謝を直接伝えられていない状況を何とかしたい」と独立を思い立ち、インディーズに戻ることを決断しました。正直に言うと、最初は怖さもありましたけどね。
――独立して、一番苦労された点は何ですか?
ツアーを開催する際に僕らが直接出向き、全国のイベンターさんと交流を深めていくうちに、デビューから築いてきたORANGE RANGEに対するイメージが、仕事の壁になっていることに気づかされました。
イメージで「きっとこんな仕事は受けてくれないだろう……」と思われ、オファーすらもいただけていない状況があることがわかって。 僕らの想いに耳を傾けてもらいながら、心理的なハードルを下げることから始めていきました 。地味ですが、意外とココが一番大変だったかな。
――現在は再びソニーミュージックに戻り、「MUSIC AWARDS JAPAN 2026」では、SNSをきっかけに再ブレイクした『イケナイ太陽』(2007年)が最優秀リバイバル楽曲賞を受賞しました。
ソニーに戻った際に、スタッフさんから「TikTokのようなSNSに力を入れてみよう!」と提案されまして、最初は「40代でTikTokをやるのは、少しお寒いんじゃないか……?」なんて思いましたけど、それでもスタッフのみなさんの熱意に推されて、挑戦してみることに決めたんですよ。こうやって、自分たちだけではやらないようなことを提案してくださることがありがたいですね。
<Tiktok/@orangerange_official >
「流行についていかなきゃ」ではなく、それを自分の中に取り込んで、その環境を楽しめるか。近年はテレビやライブなども、呼んでいただいたものにただ参加するのではなく、「ORANGE RANGEらしさを残せるように」と考えて臨むようにしています。
そこが、スケジュールに追われて「まるでイジメじゃないか!」と尖っていた若いころとの大きな違いかな(笑)。
――『イケナイ太陽』のように、過去に発表した楽曲が時空を超えてヒットするケースも、近年はよく見られるようになりました。
時代の変化に伴い、手軽に昔の曲を聴けるような環境が整ったことで、音楽が簡単に時間の軸を越えられるようになった。当時を知らない若い世代にも、新曲のような感覚で聴いてもらえている現状は本当に嬉しいですし、この傾向がさらに広まってくれたらいいなと感じています。
近年はサブスクやSNSで音楽に触れるのが主流ですが、時代の移り変わりとともに楽しみ方も変化してきました。
時代の流れや環境は変えようにも変えられないと思いますし、物を持たない社会になりつつありますが、レコードやCD、カセットテープなど、それぞれの良さや魅力を感じつつ、音楽を楽しんでもらえたらなと思います。最近、アレステッド・ディベロップメントの『3 Years, 5 Months & 2 Days In The Life Of…』という作品をレコードで聴いたときに、その音質の良さにとにかく驚かされました。
20代は焦らず。30代は「自分らしい幸せな人生」に向き合うべし
――価値観や情報多様化した現代は、情報の取捨選択が求められるようになりましたが、RYOさんが意識していることやこだわりはありますか?
情報を詰め込みすぎて頭でっかちになると、それまで培ってきた価値観を疑ったり、壊したりしてしまいがちですが、 自分自身が元々持ち併せている価値観に目を向けて、それを大切にしながら、幅を広げていくほうが良いんじゃないかと思います 。
僕は「自分らしさ」を、自分一人だけで見つけることは難しいんじゃないかと思っていて。親しい友人や家族、恋人といった自身の近くにいる人に聞いてみたりすると、もしかしたら良いヒントが見つかるかもしれませんね。
――青春時代にORANGE RANGEさんの曲を聴いて育った世代のみなさんに、人生の先輩としてのアドバイスをお願いします。
20代前半のころは、まだまだ失敗ができる年齢だと思うので、とにかく目標に向けてガムシャラに挑戦を続けていけば良いと思います。
ただ、20代後半に差し掛かったころから、徐々に転職や独立を考えたり、出世街道を歩み始めたりする人も出てきて、やがて差が生まれてきてしまう。おそらく周囲に置いてかれてしまう怖さや焦りを感じてしまうこともあると思いますが、それでも長い人生のなかで成功を掴むチャンスはたくさんあるはず。どんなときにも決して焦らずにいられるか、そして、冷静に周りの意見に耳を傾けられるかが大切なのかなと感じます。
そして30代以降は、「自分がやっていることに価値を見出せるのか?」が大切なのかなと。
仕事は、生活を成り立たせるうえで必要なものですが、「自分自身が本当に楽しめているか」「無理してまで仕事を詰め込んでいないか」あとは「何のために仕事をしているのか」。おそらくさまざまな迷いも出てくるでしょうが、自身の価値観と向き合いながら、人生を楽しむことに目を向けてほしい。30代は何が自身の幸せに繋がるのかをしっかり理解し、歩むことが大事なのかなと思います。
(※)アナログ盤:アレステッド・ディベロップメントの『3 Years 5 Months & 2 Days In The Life Of…』
URL:https://www.amazon.co.jp/Years-Months-Days-Arrested-Development/dp/B000003JBE
前編: 「このままでいいのか?」ORANGE RANGE・RYOが、大ブレイクの裏で戦っていたもの
プロフィール
RYO1985年生まれ、沖縄県出身。ORANGE RANGEのボーカル。高校1年生だった2001年にメンバーに加入。2015年には「RYO from ORANGE RANGE」名義で1stソロアルバム『DELIGHT』を発表。映画『食べる女』(2018年公開)への出演など、活動の幅を広げている。
ORANGE RANGE(オレンジレンジ)沖縄出身の5人組ロックバンド。2001年に結成し、2002年2月22日にアルバム「オレンジボール」でインディーズデビュー。翌年2003年シングル「キリキリマイ」でメジャーデビュー。2026年に結成25周年イヤーに突入。ジャンルにとらわれない自由かつ高い音楽性と、卓越したポピュラリティが話題となり、数々の名曲を送り出し続けている。
X(旧Twitter) @orangerangenow Instagram @orangerange.official YouTube ORANGE RANGE TikTok @orangerange_official 公式HP RANGE AID取材・文:白鳥純一
撮影:Tomo Sodeyama
編集:内藤瑠那
