露出部分ばかり執拗に狙う…「競技に集中できない」 女性陸上選手を苦しめるセクハラ動画
女子陸上選手は、トラックやフィールドで、もう一つの敵とも闘ってきた。特定の身体部位を執拗に映すカメラや、性的な意図を強調する編集を施してインターネット上に拡散されるセクハラ性を帯びた動画は、女子陸上選手にとって大きな悩みの種だった。
こうした「女性選手の性的対象化」という慣行を改めるため、欧州の放送各社が動き始めた。56カ国・113の加盟放送局を擁する欧州放送連合(EBU)は最近、女子陸上中継における性的商品化を防ぐための具体的かつ実践的なガイドラインをホームページで公表した。
このガイドラインは、実際の中継映像を一つ一つキャプチャーし、どのようなアングルが選手に屈辱感を与え、どのようなアングルがスポーツ本来の姿を伝えるのかを、「○・×」形式の図解で詳しく比較している。競技場内のカメラ配置を示した上で、各カメラごとの実践的な撮影指針を提示する「実戦向け中継ガイド」だ。
EBUは、このガイドラインの作成に当たり、オリンピック(五輪)銅メダリストで英国の棒高跳び選手ホリー・ブラッドショー、セルビアの走り幅跳び選手イバナ・シュパノビッチ、クロアチアの走り高跳び選手ブランカ・ブラシッチら世界トップクラスの女子陸上選手から助言を受けた。
ブラッドショー選手は「競技が生中継される中で、超高速スローモーションカメラが必要以上に露出や恥ずかしい姿勢を映し、その映像が不適切な動画として編集されてインターネット上に拡散されるという被害を実際に受けた」とし、「多くの選手は競技に集中すべき場面で、かえってカメラの位置や角度を気にして不安を感じている」と指摘した。シュパノビッチ選手も「中継のゆがんだカメラアングルと性別による固定観念が重なり、選手に深刻な精神的苦痛を与え、長期的にもメンタルヘルスに大きな悪影響を及ぼしている」と訴えた。
ガイドラインによると、棒高跳びや走り高跳びの中継では、選手の身体を下方や後方から撮影するローアングルは禁止される。また、選手がポールを拾うため前かがみになった際に、接写でズームインする撮影も規制対象とした。走り幅跳びでは、砂場に着地した際に身体の特定部位を強調する映像を避け、全身を映すか、選手の顔へ画面を切り替えることを推奨している。短距離走では、スタート前の待機時やゴール直後に、太ももや下半身をズームアップする撮影を問題視した。
「超高速スローモーション(SSM)」によるリプレーについても詳細な指針を示した。スローモーション自体を禁止するのではなく、放送ディレクターがリプレー映像を放送前に必ず確認することを求めている。また、刺激的なアングルではなく、跳躍時の足首の角度など競技力に影響する要素に焦点を当てるよう強く勧告した。
このガイドラインは、8月に英国バーミンガムで開催される欧州陸上選手権をはじめ、EBU加盟局である英国BBCのスポーツ中継にも導入される予定だ。
女性スポーツ選手を「性的対象」として扱うことへの反発は、他の競技でも広がっている。2021年の東京五輪では、ドイツ女子体操代表が、従来の股関節部分が大きく露出するレオタードではなく、足首まで覆うユニフォームを着用して話題となった。当時、代表選手のサラ・フォスは「女性選手は性的対象化から自由で、安心して演技できる環境であるべきだ」と語っていた。
ビーチバレーは、性的商品化をめぐる議論が最も活発だった競技の一つだ。1996年アトランタ五輪で正式種目となって以降、国際バレーボール連盟(FIVB)は長年、女子ビーチバレー選手のビキニボトムのサイド幅を「7センチ以下」と定め、観客動員のために露出を強いているとの批判を受けてきた。これに対し選手たちの反発が続き、2012年ロンドン五輪からは、ショートパンツや長袖シャツなど選手が希望する服装を自由に選択できるよう規定が緩和された。だが、規定変更後もビキニを選ぶ選手は少なくない。一方で2016年リオデジャネイロ五輪では、エジプト代表のドア・エルゴバシ選手がヒジャブを着用し、手足を覆う黒いユニフォーム姿で試合に臨み、大きな話題となった。
![「顔をクローズアップするのは問題ない。しかし下半身をズームインしてはならない」−−。欧州放送連合(EBU)が示した女子陸上中継ガイドライン。[写真 欧州放送連合ホームページキャプチャー]](https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/4/f/4fa2e_204_c50aa8e7_9e57d0ea.jpg)
