「夏休みに算数教材をガツガツやる」と9月に成績がガタ落ちする…頭のいい家庭が小6夏に徹底すること

■夏休みに努力しても算数の成績がガタ落ち
中学受験を控える小学6年生の保護者にとって、夏休みは「とにかく勉強量を詰め込む期間」と認識されがちです。この長期休暇を前に、多くの保護者が焦燥感に駆られ、大手進学塾の分厚い夏期講習テキストを前に右往左往します。
特に、「応用問題の克服」「記述対策」といった、目に見えて配点が高く、華やかな学習課題ばかりに目を奪われがちです。
しかし、現場の指導者として、私は秋以降に起きる「最大の悲劇」を目撃してきました。夏休みにあれほど必死に応用問題を解き、夜遅くまで机に向かって限界まで努力していたはずの子が、9月以降の本格的な過去問演習に入った途端、急激に算数の成績をガタ落ちさせ、合格圏から遠ざかっていく姿です。
親御さんは慌てて「うちの子は応用力が足りないのだろうか」と表面的な原因を探しますが、断言しましょう。原因の9割はそこではありません。すべては「夏休みという最終納期(デッドライン)までに、計算をノーミス水準に仕上げられなかったこと」にあります。
■計算とは中学受験の「根幹インフラ」
9月からの志望校対策(過去問演習)という「実戦フェーズ」に入れば、もう基礎に戻ってやり直す時間は1分もありません。夏休みは、その基盤を固めるための文字通りの『最終納期(デッドライン)』。
ここを落とした家庭は、秋以降、過去問を解くたびに計算ミスによる失点を繰り返し、どこが本当の弱点なのかすら見えなくなる「手戻り(やり直し)の連鎖」へと突入し、プロジェクト全体が完全に機能不全に陥ることになります。
ビジネスの世界に置き換えてみてください。基礎インフラ(土台)の耐久テストも終わっていないグラグラの地盤に、どれほど素晴らしい設計の高層ビル(過去問演習)を建てようとしても、建物の自重によって一瞬で地盤沈下を起こし、瓦解するのは当然の結末です。計算とは、中学受験という巨大なプロジェクトを成功させるための「根幹インフラ」そのもの。
夏休みという納期までにそのインフラ構築を完了できず、秋からの実戦フェーズに突入した家庭は、本番を前にプロジェクトごと跡形もなく崩壊するのです。
■「ドリルを一通り解いてやり直す」学習はNG
ここで、すべての中学受験の保護者に、指導者として極めて冷酷な、しかし絶対に目を背けてはならない「現実」を突きつけたいと思います。
家庭での計算学習において、最も普及しており、かつ最も子供の脳を破壊している悪習があります。それが、「算数ドリルを一通り解いて、丸付けをし、間違えた問題だけをあとからやり直す」という、一見すると極めて真面目で、どこの家庭でも推奨されている学習風景です。

断言しましょう。その「間違えてから、あとでそこだけやり直す」という勉強をさせている限り、お子様の計算ミスは入試当日まで1ミリも減りません。それどころか、やればやるほど「計算が下手」になっていきます。
なぜなら、計算練習の唯一の目的は、「出された問題を、最初から時間内に、すべて全問正解させて、その日のワークを即座に終わらせる」こと、それだけだからです。
それなのに、「間違えたから、あとでやり直せばいい」をデフォルト(初期設定)にしている家庭は、もはや、わざわざ「本番で間違えるクセ」を家庭で身につけさせているとも言えるのです。
■「最悪の努力の積み上げ」から脱却するために
これはスポーツに例えれば分かりやすいでしょう。毎日、わざわざ変なフォームで素振りを繰り返し、筋肉に悪い癖を完全に記憶させてから、あとになって「あ、今のフォームは間違いだったから、もう一回正しいフォームで振っておこう」と帳消しにしようとしているのと同じです。
そんなことを1万回繰り返したところで、本番(入試)の一発勝負において正しいフォームで打てるわけがありません。
「1年間、毎日計算練習を続けていながら、この夏休みの段階になってもまだ計算ミスを繰り返している」。
その残酷な真実の理由は、ただサボっていたからではありません。「1年間かけて、わざわざ悪いフォームを必死に固める練習(間違える練習)を続けてきた」という、最悪の努力の積み上げの結果なのです。
これでは、「この1年間、何もしていなかったことと同義、いや、むしろやらない方がマシだった」と言わざるを得ません。
特に、秋からの過去問演習では、1問の計算ミスが「大問丸ごとの失点」に直結し、合格最低点との距離を正確に測ることすら不可能になります。インフラのバグのせいで、志望校対策という最も重要な戦略フェーズがすべて機能不全に陥るのです。
入試での計算ミスは許されない。なぜなら、それがそのまま「不合格」に直結するからです。あとから部分的に直すやり直しなど、時間の無駄であり、悪いフォームを強化するだけ。
だからこそ、合格する「頭のいい家庭」は、夏休みの計算練習において『最初から1本の狂いもなく全問正解のクリーンランを叩き出すこと』、つまり一発で合わせる「正しいフォームの完遂」だけを徹底させているのです。
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迫田 学(さこだ・まなぶ)
中学受験講師
1971年大阪生まれ。洛星中学・高等学校、京都大学教育学部卒業。関西の大手進学塾にて、正社員として19年間、主に高校受験を担当。その後、近畿大学生物理工学部、大阪大谷大学教育学部、ホスピタリティツーリズム大阪専門学校、駿台中学部数学科での非常勤講師を経て、現在は中学受験専門のプロ個別指導教室SS-1算数・理科講師。2025年度入試における担当生徒の合格実績は東大寺学園、大阪星光学院、洛星、清風南海、高槻、白陵、開明、同志社、大阪桐蔭、奈良学園、帝塚山など。3年以上にわたり、SS-1大阪谷町教室にて毎月の担当授業コマ数NO.1。2025年春より、京都大学大学院教育学研究科修士課程(比較教育学専攻)に入学。大学院での研究テーマは「韓国の受験、私教育」。本書が初の著書となる。
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(中学受験講師 迫田 学)
