W杯中に39歳の誕生日を迎えたメッシ。今なお、世界最高級のプレーで見る者を魅了する。(C)Getty Images

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 リオネル・メッシが、またW杯の歴史を書き換えた。

 アルゼンチンがオーストリアを2−0で下したグループステージ第2節。この試合で、メッシは2得点を決めた。これでW杯通算18ゴール。長く頂点に立っていたミロスラフ・クローゼ(16点)をかわし、単独で大会史上最多得点者となった。

 しかも第3節のヨルダン戦では、途中出場から1ゴールを記録。通算得点を19ゴールに伸ばした。この結果、W杯7試合連続得点という新記録を樹立するなど、メッシは現在進行形でW杯の歴史を塗り替えている。

 英BBC放送は、ヨルダン戦のゴールについてこう伝えた。「メッシが敵陣でボールを持つたびに、スタジアム全体が期待感に包まれる。そしてファンが待ち望んでいた瞬間は訪れた。また一つ歴史を塗り替えるゴールが生まれた」と。

 この記録の驚きは、数字そのものだけではないだろう。6度目のW杯に出場している男が、6月24日に39歳の誕生日を迎えながら、なお得点王争いでキリアン・エムバペと共に先頭を走っていることにある。

 メッシは今大会、初戦のアルジェリア戦でハットトリックを決め、続くオーストリア戦でも2ゴールを追加した。そしてヨルダン戦で直接FKから1ゴールを奪った。アルゼンチンの今大会8得点のうち、6得点はこの背番号10から生まれている。

 W杯通算29試合で19得点。しかも、そのうち13点は35歳を過ぎてから決めたものである。多くの選手が肉体の衰えと折り合いをつけながら舞台を去っていく年齢で、メッシはW杯でむしろ得点ペースを上げている。

 もちろん、若い頃と同じメッシではない。歩く時間は長くなった。試合の中で姿を消す時間も増えた。かつてのように、90分間ずっとボールを受け、ドリブルで相手を引きずり回しているわけではない。だが、それを衰えとだけ見るのは早計だろう。メッシのプレーを見ていると、走らなくてもよい時間とタイミングをよく知っていることが分かる。

 メッシは歩きながら、試合を読んでいるように見える。相手DFの立ち位置、ボランチの視線、味方の走り出し。今のメッシはボールが来る前に、次の一手を的確に読んでいる。だから、決定的な瞬間になると、そこにメッシがいる。
 
 オーストリア戦の先制点は、まさにその流れだった。前半、メッシはPKを外していた。W杯通算三度目のPK失敗。あのメッシにも、人間らしいミスがあるのかと気付かされた。

 だがその後、左からの低いクロスをティアゴ・アルマダが見送ると、メッシはすでに最も危険な場所にいた。力任せではなく、慌てることもなく、左足で静かにゴール左隅へ流し込む。メッシらしいゴールだった。

 そして後半アディショナルタイム、彼は18点目を決めた。この時、アルゼンチンはリードしており、勝利は近づいていた。普通なら時間を使う場面だ。

 だがメッシは仕掛けた。混戦の中で最初のシュートを阻まれても、もう一度、左足を振った。狭い角度の隙間を抜けてボールは、ネットへ届いた。
 
 この新記録には、2016年の影も重なる。

 あの年、メッシはアルゼンチン代表からの引退を口にした。コパ・アメリカ決勝でチリに敗れ、自らもPK戦で失敗した。アルゼンチンは9年間で四度目の主要大会での決勝敗退。メッシは「代表は終わった」と語った。バルセロナでは神のように称えられながら、代表では最後の一歩に届かない。そんな残酷な評価が、彼のキャリアに貼りつこうとしていた。

 だが、物語は終わらなかった。メッシはアルゼンチン代表に戻り、代表での運命を変えた。コパ・アメリカを制し、2022年にはW杯をついに掲げた。決勝では2得点。アルゼンチンを1986年以来の世界一へ導いたのである。そして2026年、今度はW杯史上最多得点者になった。一度は代表の重みに押しつぶされかけた男が、代表のユニホームを着て、サッカー史の頂に立っているのである。